RF「LINK 02」
お待たせしました。リクエストフィクションです。今回のお題は、[姉妹][ガーベラ][不信感][ゴミ箱][喧嘩]です。この中から3つと言うことですが、またもや全部使ってます。前回の続きで刑事モノなんですが、ほとんど刑事は出てきません。ま、そういうときもありますよ。タイトル「LINK 02」 新井の取調べが始まった。 新井は国立の理系の四年制大学を卒業後、将来正社員になれるという触れ込みである一流企業の工場に工員として勤めるが、3年が過ぎても一向に正社員の話も昇進の話もなく、常に会社に対し不信感を抱いていた。 逆に周囲ではリストラの話が降って湧いたかのように出始め、以前、先輩の工員の江波雅彦(38)と、作業中にもめたことがあり、マイナスポイントのある新井は自分もリストラ候補に挙がっていると思い込み、それならいっそ、辞めてしまおうかと思い始めていた。 しかし、ただ辞めるのも癪なのでその前に工場長の裏金を盗んでやろうと企てていた。 この金は事務用品などを購入したという名目で計上されていた金だったが、領収書が回っているだけで実際に事務用品などは購入されておらず、レクリエーション費として工場長が密かにプールしていたものの、レクリエーションなどは、年に一度、忘年会が開かれるくらいしか行われることもなく、ほとんど消化されずに増え続けていた公にできない金であった。 理系と言うだけで、毎年忘年会の会計係をやらされていた新井は、ほとんどの工員が存在すら知らないその金の存在を知っていたのだ。 ある日、新井は誰にも見られないように工場長室に忍び込みこっそりと裏金を持ち出すことに成功する。 金は百万近くあった。 急に大金を手にしても使い道など思いつかず、とりあえず、寿司屋でたらふく食べ、前から気になっていた、汚れたスニーカーを買い替え、たまたま店員が好みの顔だった花屋でガーベラを一輪買った。そんなもんだ。 あのボロアパートに帰り、花を生けてみたが、虚しさがこみ上げるだけで、残りの金はやっぱり明日返そうと思った。 使ってしまった分もすぐに返そうと思った。だけど、急に金を作るにはどうすればいい?ギャンブルなんてやったことないぞ。増やすどころか使い切ってしまっては元も子もない。かと言って金を貸してくれそうな知人もいない。 ・・・知人! そういえば、江波と以前にもめた時のことを思い出した。 江波と言う男は愛読書が裏モノジャパンというだけあって、妙な事に詳しかった。そんな江波がネットで一儲けできないかということばかり考えている時期があった。そのときに理系と言うだけの理由で新井も江波の企みの片棒を担がせられそうになったのだ。 それが、殺人請負サイトと、会員制殺人生中継サイトという、姉妹サイトの作成であった。新井は先輩の頼みなのでしょうがなく本を見ながらそれらのサイトを作りかけたのだが、実際に依頼が来ても殺人なんてできるわけもなく、「抜けたい」と言ったら喧嘩になった。という事があったのだ。 今はそんなキレイゴトを言ってる暇なんてない。上手いこと騙してでもなんでもいいから金を造ればなんとか会社には残れるかもしれない。 「・・・そうして坂東明の殺害を依頼してきたのが千葉健(26)という男だった。と言うわけか」 病院に寄ってきた為に捜査会議に遅刻した八洲刑事が近田刑事の報告を聞いていた。 「ええ。新たな人物が関わってきましたね」 近田は難しそうな顔でそう言ってみた。 「さぁて、それでは、千葉ってやつをしょっ引きに行きましょうか」 そう言うと、八洲は食べていたバナナの皮をゴミ箱に放り込んだ。 「この前のバナナ、まだ食べてたんですか」 「だって、お前が一房も買って来るからだろ」つづくはい。続きます。お題の消化は上手かったと思います。てか、登場人物、覚えてる?