2008年08月24日(日曜日) 日本経済新聞 朝刊31頁より引用
南米滞在歴の長い古くからの知人を訪ねるために、ある一人の男が日本を出発したそうだ。
正確な場所は忘れたが、ボリビアかコロンビアだったように記憶している。現地でレンタカーを利用して二泊三日程度の小旅行を楽しんでいた。少し旧式の車だったが、なんらトラブルもなく動いていた。しかし最終日にエアコンが不調となり全く効かない。日本のように街角の修理工場に飛び込むというわけにもいかず、やむを得ずエアコン無しの窓全開で炎天下の旅行を続ける羽目になった。
レンタカーを返却する時に男はこういったそうだ。『せっかくの楽しい旅行がエアコン不調で気分が害されたわけだから、そのレンタカーショップに文句を言って料金を安くさせようよ』
南米滞在歴が長いその知人はこう答えたという。『おい、おい、そんなことは言わなくていいんだよ。かえって逆効果になるんだ』
意味が理解出来ずにさらに尋ねると『料金を安くしろって言うとな、壊したのはオマエ達だろ?って逆にケンカになるんだ。だから下手すると修理代金をこっちが払わなくてはならない』
『だからこういうときはな、エアコンが不調だったよ、だから直しておいてな、とそれだけ伝えればいいんだ。俺もな、南米に住み始めた頃はいろいろと憤慨したこともあったが、なあに、すぐに慣れるさ』
『ここは日本じゃないんだから、日本の常識で物事を判断すると、とんでもないことになるんだ』
この南米に知人を訪ねた男性の言動を星野監督に重ね合わせると、今回の事態は非常に理解しやすい。今回の事態というのは赤線を引いた、惨敗を喫したにも関わらず、ストライクゾーンの差違を敗因の第一理由に挙げたことだ。
星野監督は現役時代、王長嶋両選手に闘争心むき出しで突っかかっていた攻撃的な投手で、個人的には好きなタイプ。特に凡フライを落球した宇野内野手を怒髪天を衝くとばかりにぶん殴った野性味溢れる行動は多くの熱烈なファンを生み出したことだろう。それほどまでに野球に真剣だったのは分かる。
が、今回の敗因分析は失笑ものだろう。私のように欧州南米サッカー好きからすると、国により人によりストライクゾーンが異なるのは当たり前のこと、プロだったら逆にそれにうまく合わせないと。それが環境適応能力というものだ。そんな事すらも知らないとは、前時代的な思考回路が妙に新鮮に感じる。
あくまでも日本のプロ野球しか経験したことのない国内限定の監督だ。ストライクゾーンが審判により異なり、曖昧だったのは多分その通りなのだろう。でも悲しいかな、日本の野球しか知らない彼にはその曖昧さを受け止めるだけの度量はなかった。
前回も引き合いに出したアルゼンチン代表のメッシ。若干21歳ながらもすでに欧州南米の様々な場所でプレイし、環境適応能力も非常に高い。メッシぐらいのレベルになれば、ストライクゾーンが審判によって異なることに右往左往せず、逆手に取ったプレイを心がけたのではないかと思う。
それにしても今回帰国したプロ野球選手に対する対応は、個人的には手ぬるいと感じる。もしこれがイタリアとか英国のプロサッカーだったらどうなるのか?想像しただけでもちょっと怖い。
●ケースA
監督や戦犯には目を付けて、成田到着後の空港ロビーないしは通路で卵やトマトをぶつける。
●ケースB
帰国後、プロ野球の公式戦に復帰した戦犯に対して怒りを露わにする。
↓
守備または打席に立つたびに応援は中止。観客全員が無言でレッドカードを提示する。
↓
観客が一言も発せずレッドカードだけを戦犯の選手に向け、プレッシャーをガンガンにかける。
この二つのケースが想定されるのだ。ケースAにしてもBにしても架空の話ではなくイタリアや英国では実際にあった出来事。そう考えると、G・G・佐藤選手だったかな?アンタ、日本に生まれて良かったね。イタリアだったら多分一便ぐらい遅らせて隠密入国しないと、かなり危険だから。
さて辛口コメントばかり書いてきたが、最後に本当のプロの監督とは、プロ選手とはどのような人を差していうのか?心温まる話を一つ紹介したい。デンマーク・オルセン監督とトマソン選手の実話だ。星野監督と比較するとあまりにも度量が異なるのに気が付くことと思う。特にホテル料理長との会話には私もちょっと驚いてしまった。
郷に入れば郷に従え(When in Rome, do as the Romans do ローマにいるときは、ローマ人がするようにしなさい)という諺があるが、星野さん、もっと世の中勉強しないとWBCでも敗退するかもね。
●デンマークのトマソン選手の話
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