武蔵浦和の駅前を歩いていると、思わずハッとして惹かれるテナントサインがあった。それにしてもこれは珍しい配色だ。赤茶色の煉瓦を敷き詰めた壁面中央にまるで絵画を飾るかのように設置された水色のテナント名称表示サイン。タイルの区割りを細かに観察すれば分かるが、あらかじめこの場所にこの大きさで飾ることを想定して作られたデザインで、決して取って付けたように考えられたものではない。
なぜ煉瓦色に水色を組み合わせるのか、それはこのお店の名前に由来する。イタリア語で青を示す"Azzurro(アズーロ)"の複数形が"Azzurri(アズーリ)"。つまりお店の名前そのものを代表するがためにこの配色となるのは必然だったのだ。が、これだけの大きさのテナント表示サインが青色一色ではさすがに視覚的にきついと思ったのだろう、ところどころに意図的にぼかしを入れて柔らかみを演出している。そしてそれは端部の処理にも反映されているのだ。直線を廃し端部には切り込みを入れて煉瓦と同化するように鋭角なイメージを和らげる。至ってシンプルな造りながらもその佇まいはまるで静物画のように落ち着いた作品だ。ひとかどの見識を感じさせる素晴らしいサインだと思う。そしてその左隣にあるのが、ヘアーサロン"STRAWBERRY FIELDS"。歌から店名を取ったのかどうかは分からぬが、これまた味わいのある突き出しサインだ。
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