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2010年05月17日
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カテゴリ:┣ ●海外の散策●

建設途中のモーゼス・マヒダ・スタジアム


完成したモーゼス・マヒダ・スタジアム
(No.18,19,20は完成写真なのかグラフィックイメージなのかが判断しにくい)



ワールドカップ・グループリーグの初戦の戦い方は?と問われた時の答え方でだいたいどの程度サッカーに通じているのかが分かる。正解は勝つことでもなければ負けることでもない。そしてさらに言えば引き分けることでもないのだ。それでは答えが無くなってしまうと言われそうだが、初戦の戦い方の鉄則は『絶対に負けないこと』、これに尽きると言ってもいいだろう。

前回も記述したが、ワールドカップはオリンピック程度のレベルのスポーツとは次元の異なるプロの戦いだ。だからみんな生死を賭けて必死に戦ってくる。いわば食うか食われるかの戦い。その戦いの場において初戦に敗退するとグループリーグの突破がかなり厳しくなる。いくら上位国とは言いながらもその後の二試合のゲームプランが格段に難しくなるのだ。もちろん初戦勝利が一番望ましい結果なのは誰でも理解出来ることだが、死に物狂いで戦ってくる相手に対して勝利を得るのはなかなか難しい。だから最低でも勝点1だけはどんなことがあっても手に入れなければならないのだ。上位国だろうと下位国であろうと勝点1が最低条件、ゆえに『絶対に負けないこと』が鉄則となってくる。

1998年フランス大会グループリーグBでイタリアはチリ相手に苦戦していた。チリのエース・サラスの2得点に対してイタリアはヴィエリの1点だけ。時間は刻一刻と過ぎてゆき、試合終了まであと数分という絶体絶命の大ピンチだ。98年大会は結果としてフランスが優勝したものの、毎回優勝候補の一つに挙げられるイタリアにとってはベスト4が最低条件。従ってグループリーグは突破が当たり前、仮に初戦敗退しようものならどれだけ叩かれるか分からないと言ったところだろう。

日本人にはなかなか理解しにくいだろうが、イタリア人のサッカーに賭ける情熱の凄さは日本のプロ野球やJリーグなど比較の対象にならないぐらいに凄まじく、新聞等での名指しによる徹底的な批判は日常茶飯事の当たり前といったお国柄だ。他国での一例を挙げると、同じく98年ワールドカップにおいてイングランド対アルゼンチン戦で報復行為により退場処分を喰らったデビット・ベッカムは、ワールドカップ終了後に戦犯としてメディアを含め多くの批判を浴び、最終的にはBBC放送を通じて国民に謝罪して事態の沈静化を図ったぐらいだ。

日本で例えればグループリーグ敗退の戦犯をNHKのニュース番組途中で引っ張り出して国民に向かって謝罪させるようなものだろう。サッカー強国ではふがいない敗退をするとそこまでやらされるのだ。当時のイタリア選手の思いは推測するしかないが、2対1の劣勢ならば勝つのは無理にしてもどんなことをしてでも引き分けに持ち込んで勝点1を手にしたい、敗退だけは絶対に避けなければならない、だっただろう。

初戦敗退濃厚の雰囲気が漂う中、試合終了まであと数分。敵陣ゴール付近でイタリアのロベルト・バッジョは味方にセンターリングをあげようとした。が、パスを出したそのボールはチリディフェンダーの右手に当たりPKとなった。最初見たときにはこの時間帯でPKを取るなんてなんてラッキーなんだろうと思ったが、試合終了後に録画再生で見直したときにびっくりした。

なぜなら偶然相手ディフェンダーの手に当たったのではなく、明らかに意図して相手ディフェンダーの手を狙っていることが分かったからだ。敗退すればどれだけ叩かれるか想像も付かないという状況で、このワールドカップという大舞台の土壇場でPKを狙うという精神構造自体に屈強なものを感じてしまうが、私にとって合法的にPKを狙った選手はこのロベルト・バッジョが初めてだ。78年アルゼンチン大会からずっとワールドカップは見ているが、多くの選手が安易にダイビングでPKを獲得しようと考える中で、最後の最後で手を狙ってボールを蹴り出すという高等技術は数々の生死の修羅場をくぐり抜けてきた経験者だけが持ち得るもの、狙って簡単に出来るものではない。

まして1994年ワールドカップ決勝戦はイタリア対ブラジルでロベルト・バッジョがPKを外したためにブラジルが優勝、それ以来のPKをロベルト・バッジョ自身が蹴ることになるのだ。その胸中たるや察するに余りある。結果としてバッジョのPKは決まり、イタリアは辛くも2対2の引き分けに持ち込むことに成功したが、私はここにどんな手を使ってでも勝点1はもぎ取らなければならないという執念を感じ取ることが出来たのだ。サッカー界の歴史に名を残すであろう名ディフェンダー、イタリアACミランのパオロ・パルディーニはこう言った。実力伯仲の両者が激突したときに勝負を決するのは、どちらがより残りたいか、より生きたいか、その気持ちの差であろうと。


ベスト4を目指すという大風呂敷を広げるのは指揮官としては構わないが、現実問題として考えたときにオランダ、デンマーク相手に勝利を得る可能性は限りなく0に近い。と考えると日本にとっては2010年06月14日に行われるカメルーン戦が全てだろう。ここで勝点3を取ることが出来ればあわよくばグループリーグ突破することが出来るかもしれないが、引き分け以下に終わると実質的にグループリーグ敗退が決まることになる。冒頭に記述した『絶対に負けないこと』ではなく勝利をすることが最低条件となるので難しい戦いであることは間違いない。なお写真は日本対オランダ対戦会場となるモーゼス・マヒダ・スタジアムで、No.18,19,20は写真なのかグラフィックイメージなのか判断しにくかった。No.21,22はエレベータ乗降式によるアーチ型の頂上部を撮影したものと思われるが断定は出来ない。

98フランスW杯の予選、イタリア対チリの一戦について。2対1でチリがリードし...


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Last updated  2010年05月17日 09時21分33秒
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