このブログでは都内近郊で見つけた素敵な文字・デザインを積極的に紹介しているので、関心ある方は左欄外の『サイン-館名』をクリックしていただきたいが、いま読み返しても個性豊かな文字やサインがずらりと勢揃いしている。百花繚乱ここに極まりといった風情が感じられ個人的には一人感心している次第だが、本日紹介するのはそのどれにも該当しない、いわゆる斜めカット仕上げの文字だ。
通常文字を製作する時には厚みを全て均一にする。理由は簡単で、一つの文字自体の厚みが左右で異なると費用の面で極端に数字が跳ね上がるからだ。なので多くの小さな文字の場合、経験的には3ミリから5ミリが一般的で、ちょっと厚くしても15ミリから20ミリ程度が限界だ。もちろんビルの外壁面や屋上に設置するような大きな文字にはもっと厚みを持たせるが、正面入り口付近に設置する、人の目の高さの文字の場合はせいぜいその程度。
が、本日掲載した造形物はご覧のようにかなりの厚みを持たせており、しかもその厚みが徐々に変化していくという滅多にお目にかかることのない仕上がりだ。厚い金属の無垢(むく)板から切り出して表面及び側面を研磨し最終的には塗装仕上げとなるのだが、このように1枚板から削り出し金属本来の重厚感を損なう事なく、かつまた質感を高めた文字は驚くほど少ない。都内有数の高級ブランドショップが建ち並ぶ銀座や表参道でも見かけたことがないぐらいで、通常はこのぐらいの厚みになると費用を抑えるために中身は空洞の、いわゆる張りぼて仕様となるのだ。
しかも塗料は指定外国産のものを使用する事になっており、とある塗装工場に持ち込んだときの事だ。その塗装工場では主として自動車の関連部品を専門に塗装しており、大きなものから小さなものまで、さらには極太のものから薄いものまでと多種多様の種々雑多。用途も目的も説明しないでただ単に塗装だけを依頼したのだが、最初見たときにはいわゆる張りぼての中身は空洞の造形物に見えたようで、特に驚きもしなかった。
が、実際手に取って裏返してみると、裏側は空洞どころか表も裏もぎっしりと中身が詰まった金属無垢(むく)板だと分かったらしく、しかも斜めにカットしてあるのを確認してしげしげと聞いてきたものだ。長いこと専門塗装を行っているが、こんな斜めカットの金属無垢板は見た事がない。一体あなた方はどんな仕事をしているのか?そして用途は何なのか?
私でさえこのような注文を受けたのは二度目なので、その塗装業者が驚くのも無理はないが、アクリルの板ならまだしもさすがに金属無垢板となると見かける事はまずない。文字の厚みはどの文字でも同じにするという先入観があるからで、場合によってはこのように傾斜を付けた方が格好良く見える事もあるのだ。全景写真を掲載出来ないのが残念だが、それはそれは第一級の素晴らしい仕上がりだった。
関連記事
●2010年03月02日 Echika fit"エチカフィット"上野のLEDサイン
●2010年02月18日 日新堂銀座並木通り2丁目店のLED文字
●2010年02月16日 ジュエルチェンジズ渋谷店
●2010年01月07日 武蔵浦和カフェトラットリア・アズーリのサイン
●2009年11月26日 渋谷BEAUTY & YOUTH UNITED ARROWS
●2009年11月05日 丸の内仲通りのテナントサイン
●2009年08月19日 吊り下げサインの紹介
●2008年12月11日 ●銀座木村屋總本店の入口-その2●
●2008年11月20日 ●銀座木村屋總本店の入口●
●2008年11月11日 ■LEDを活用したサインが増えてきた■
●2008年10月20日 ■新宿ピカデリーの書体■
●2008年08月25日 ■縦使いと横使いを組み合わせた木製品■
●2008年08月19日 ■書体の妙味を感じるお店のサイン■
●2008年05月29日 ■吉祥寺ダンディゾンの入口■
●2008年04月21日
■表参道テラスの表札■