我々の業界ではアドビのクリエイティブスイート、いわゆるCSシリーズがスタンダード。業務上なくてはならぬソフトだけにその動向についての関心は高いが、つい先日アップグレード対象の変更通知が届いたので、早速読んでみた。
●Adobe、アップグレード対象を「直近1バージョン前まで」に変更
アドビシステムズは11月10日、PhotoshopなどAdobe主要製品のアップグレードポリシーを次期バージョンから変更すると発表した。現行ではCreative Suiteの各製品は基本的に3バージョン前までがアップグレードの対象だったが、次期バージョンからは「直近1つ前の主要バージョンまで」になる。「主要バージョン」とはCSの整数の数字を差し、CS5.5はCS5と同じ扱いになる。InDesignを例にすると、次期バージョンは現行のCS5.5とCS5のみがアップグレード対象となり、CS4とCS3は対象外となる。
米Adobe Systemsは11月9日(現地時間)、「Creative Cloud」を発表。同社のクリエイティブ製品を全て利用できるサブスクリプション制サービスで、日本では年間契約で月額5000円(税別)で提供する。同サービスでは常に最新のCreative Suite製品を利用でき、アップグレードポリシーの変更は同サービスへの移行を促す目的があるとみられる。
ちなみに過去のCSシリーズの発表日を調べてみると以下の通りで、おおよそ18か月前後で新版が登場しているのが分かる。代替ソフトがないこと、製作データを他ソフトで読み込むことが難しいこともあり、事実上の一社独占状態。業界ではモリサワフォント税と並びアドビ税と揶揄されているゆえんである。
ソフトそのものの出来は素晴らしいものの、競合ソフトがないためにCSシリーズの価格は今時のPCソフトの価格としては考えられぬほどの高止まりを続けており、しかも購入後のアフターサービス(ソフトのバグ改善を含む)もお世辞にも素晴らしいとは言えないために利用者の不満は募る一方だ。
●Adob Creative Suite 発売日一覧
Creative Suite 1 2003年10月27日(米国発売日)
Creative Suite 2 2005年5月(米国発売日)
Creative Suite 3 2007年4月16日(米国発売日)
Creative Suite 4 2008年10月15日(米国発売日)
Creative Suite 5 2010年4月30日(米国発売日)
Creative Suite 5.5 2011年5月20日(日本発売日)
日本では2011年5月20日発売。本バージョンより月額単位で製品を利用することが可能なサブスクリプション制度が導入され、SoundBoothがAuditionに変更された。ライセンスについても若干の変更があり、CS5まではCS から独立したライセンスが与えられていたAcrobatもCSシリーズのライセンスに統合される形で一本化された。これまでは約1年半周期でメジャーバージョンアップが行われていたが、CS5.5以降は12ヶ月周期で「.5」を挟んだ24ヶ月周期でアップデートされることになる。
ITmediaの記事を素直に読めば、年額6万円(税別)一括払い、2年使用で12万円の支払いになる可能性が高いが、多くの会社で実質上の負担増になりそうな気がする。というのも毎回毎回18か月ごとにソフトのバージョンアップをしている会社よりもCS2→CS4→CS6のように一つ飛ばしてバージョンアップしている会社の方が多いのだろう。でなければ、「直近1バージョン前まで」に変更する理由がないからだ。
モリサワフォント並みに年間契約となるのであろうが、近年のアドビに動きを見ている限り、ユーザ層拡大、高コスト体質改善の可能性は限りなく0に近い感じがしないでもない。グーグルかマイクロソフトに買収されることを切に望みたいが、そういえば以前マイクロソフトによる買収の噂話があったが、一体どうなったのだろう。
このブログでは以前から書いているが、現状文書管理のベストは汎用性を考えると、PDFにならざるを得ない。しかも今後ますますモバイル機器が進化すると、より一層PDFは脚光を浴びることになる。Windows8に標準でPDF管理・作成・編集アプリを組み込み、クラウド環境で課税するなどすればマイクロソフトにとってもアドビ買収をするメリットはかなりあると思うのだが・・・
●MicrosoftがAdobeを買収? 対Appleで大胆戦略の報道