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2012年05月27日
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5月19日に行われたチャンピオンズリーグ決勝戦は、PK戦のすえ、チェルシーが見事初の栄冠を獲得した。試合内容は大方の予想通りの進行で、個人的には勝つことを最大の目的としている以上、チェルシーの戦法を批判するつもりは全くないが、とはいえ決勝戦にふさわしい見応えのある試合内容だったかと問われると少々疑問が残る。が、後半戦から延長戦へともつれ込み、最後はPK戦になってくると、やはり手に汗を握る熱戦になり引きずり込まれたのも事実。なかでも二人の素晴らしいプレイヤーの、まさにこれが決勝戦という最高の舞台で見せてくれた神業レベルのプレイに驚き、記録に残しておかなければならないなと思った。

●チェルシー、バイエルンを下してCL初優勝

もしチェルシーのキーパーがチェフでなければ・・・と誰しもが思ったことだろう。チェフは延長戦93分のロッベンのPKを止めたのを始めに、PK戦では5人全員のボールが飛ぶ方向を予測し、うち3人はPK失敗にさせているのだ。つまり確率的に言えば2の6乗だから1/64となる。チャンピオンズリーグ決勝戦というまさにこれ以上の舞台演出は望めない大一番において、最後の最後のまさに雌雄を決するPK戦でペナルティキッカー5人全員のボールが飛ぶ方向を予測し見極め、そのうち3人はPK失敗にさせるとは、これを神業と呼ばずしてなんと呼ぶのだろう?

一般的にはPK戦は運そのものだと言われる。その見方を否定するわけではないが、運の占有する比率を少しでも下げるために、つまり人間の努力と経験による比重を少しでも高めるために、日頃から対戦相手のPKを分析するものだ。この選手はこちらに蹴る比率が高い、何回に一回はど真ん中に蹴り込む・・等々。もちろん蹴る側はどちらに蹴るのかを決めてPK戦に臨むわけだから、それを悟られぬよう、絶対にゴールキーパーと視線を交わさない、ゴールキーパーにわずかな情報ですら与えないなど細心の注意を持ってPK戦に臨むのだ。

権謀術数、知略を巡らす、その駆け引きが面白いのだが、それにしてもチャンピオンズリーグ決勝戦のPK戦で64回やってもたった1回しか成功しないはずの、6人全員のボールが飛ぶ方向を予測するとは、そのあまりにも冷静すぎるチェフの神経構造を賞賛するしかないのだ。事前情報・選手分析・試合の流れ、そして運。様々な要因を一瞬のうちに凝縮してチェフは飛ぶ方向を決定するわけだが、そのあまりも神がかりすぎたプレイは数字としては記録されることはないものの、決して忘れることはないだろう。

そしてドログバだ。プレミアリーグのチェルシーの試合はそれほど熱心に見ていないのだが、時折見るドログバのプレイは明らかに全盛期を過ぎており、従来では考えられぬほど当たり負けが多くなっていた。ちょっと前までだったらここで相手方を振り切って、閃光一撃の同点弾、逆転弾が見られたのにと思うこともしばしばだ。それがどうだろう、チャンピオンズリーグがトーナメントに入ってからはまさに獅子奮迅の大活躍。守備的な戦術を基本方針としているだけに、90分の戦いの中で必ず2,3度は訪れるわずかなチャンスをものにする、カウンター戦術に切り替えているのだ。ほんの一瞬の隙を絶対に見逃さない、90分通してその集中力の高さを維持し続ける不屈の精神は崇高さすら感じさせるものだ。

それにしても5人目のキッカーとして登場したPK戦でのキックが、チェルシーCL初制覇、チェルシーにおけるラストキックになるとは、どんなに想像豊かな脚本家でさえ書きえない結末だと思う。プレイ中はまさに狙った獲物は絶対逃さない猛禽類の表情を常に伺わせ、近寄りがたい雰囲気すら漂わせるドログバが、PKを決めた後に一瞬だけ見せた歓喜溢れる表情はまさに達成感そのもの。サッカーの歴史の残る偉大なストライカーの一人だと思う。

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Last updated  2012年05月27日 11時27分01秒
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