それほど公職選挙法の規定に関しては詳しくないので、どこかで紹介してくれないのかなと思っていたら、タイミングよろしく日経新聞に『選挙期間にネットでできることとできないこと』が掲載されていた。
この図を見ても分かるように腑に落ちない規制ばかりで、時代にそぐわないのは誰にでも分かることだが、いつまで経っても重い腰を上げないのも困ったものだ。迷惑メールの跋扈(ばっこ)は放置しても電子メールを通じた選挙活動は不可には笑ってしまうが、米国大統領選にような長期戦ならいざ知らず、日本のように一月程度で片付くのであればもう少し緩やかな規制にして欲しいもの。その意味で、橋下徹代表代行のTwitterを通した発言はネット選挙解禁に向けて一石を投じており、実に興味深い。
●ネット制限、候補者不満
16日投開票の衆院選に向け、各候補者はインターネット上のホームページ(HP)やブログ、ツイッターなどを更新できない「窮屈な選挙戦」を強いられている。与野党対立のあおりで、ネットを使った選挙運動の解禁が見送られたためだ。有権者も候補者の考えを探る手段を失っている形で、「ネット解禁」は衆院選後に発足する新政権の課題の一つになる。
橋下維新代表代行のツイッターは人気を集めている(8日、名古屋市)ネット選挙の議論に一石を投じたのは日本維新の会の橋下徹代表代行だ。4日の衆院選公示後もツイッターでの発信を継続。8日も「今、津に向かっています。その後岐阜、名古屋、長野の予定です」などと複数のコメントを書き込んだ。
◆「バカげたルール」 藤村修官房長官は5日の記者会見で「公職選挙法の規定に抵触する恐れが強い」と警告したが、橋下氏は「バカげたルール」と反発。「総務省の見解を踏まえている」と今後もネットでの発信を続ける考えを示した。
公選法は「選挙運動のために使用する文書図画」をはがきと法定のビラに限っている。資金力の有無が選挙結果を左右しないようにするのが本来の趣旨だ。しかし、公選法を所管する総務省はパソコンに表示された文字や画像も「文書図画」にあたると解釈。お金がかからないツイッターやフェイスブックでの情報発信も「文書図画を配る行為」とみなし、選挙違反になる可能性があるとの見解を示している。
「摘発するかどうかは捜査当局の判断」(総務省選挙課)だが、各候補は衆院選公示の4日以降、選挙違反を恐れてネットの利用を控えている。公示前まで自由だったネットの使用が制限されることに候補者の不満は強い。「時代に合っていない」「ネットは一番お金がかからないのにおかしい」との声が上がる。
有権者からも「各候補者の主張を探るツールを失っている」(ネット選挙解禁を目指す民間の運動「One Voice Campaign」の原田謙介発起人)との批判が出ている。
もともと各党はネット選挙の解禁に前向きだ。民主党は2009年衆院選の「政策集」で「ネット選挙の解禁を進める」と明記。自民党は10年に解禁のための公選法改正案を議員立法で提出した。だが、与野党は衆院の定数削減や「1票の格差」是正などに集中し、公選法改正案は一度も議論されないまま衆院解散で廃案となった。
ネット選挙の実現は民主、自民、公明3党と、みんなの党が今回の政権公約に盛り込んだ。来年1月召集の通常国会で公選法改正案が成立すれば、来夏の参院選から実現する可能性がある。
◆新規ビジネスに期待 ネットでビジネスを展開する企業も解禁に期待を寄せる。候補者が自由に意見を発信できるようになれば、選挙情報サイトなどへのアクセス数が増え、広告収入の拡大が見込めるからだ。
ただ、与野党の一部では「候補者を装って情報発信する『なりすまし』などをどうやって防ぐのか」との慎重論も根強い。公選法の改正が再び先送りになる懸念は残る。
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