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無味無臭 ~アキの徒然日記~

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2006年09月18日
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カテゴリ:カテゴリ未分類
 さて今回は祖父の話である。

 我が祖父は齢90の大長老である。近頃めっきりボケてきて、背中もほぼ90度に曲がっているが元気で中々死にそうにない。
 
 この祖父は昔からチョイチョイおかしな行動を起こしては、家族を爆笑と混沌の渦に巻き込んできた。

 ある時、いきなり髪型をモヒカンにして食卓に現れた時は父が味噌汁を吹いた。

 ある時、パンツ一丁で食卓に現れた時は母が烈火の如く怒り狂った。「暑かったから」との名言を残し、祖父はそのままの格好で飯を食った。

 ある時、私が便所のドアを開けると、祖父は便座にまたがりうんうんと唸っていた。慌てて出て行こうとする私に一言。

 「ワシのことは気にせず、小便をしたらよい。」
 
 ・・・できるかっ!!

 と、まあ数え上げればキリがないのである。

 しかし、私が祖父と暮らしてきて一番驚いた事がある。

 いつものように、夕食の時間を告げに行こうと祖父の部屋のドアを開けたところ、祖父が難しい顔をして悩んでいた。「どうしたん?」と声をかけると、「いやぁ~、このビデオを見ようと思ったんじゃが、途中で見れんようになってしまうんじゃ。」との事。

 そのビデオテープを受け取って調べてみると、テープがぶち切れていた。セロハンテープで応急処置をし、「ちょっと画像が乱れるかもしれんけど、一応見れるはずだよ。」と私はデッキにテープを入れて再生ボタンをプッシュしたところ・・。

 画面に映し出されたのは、男と女が絡み合う魅惑のパラダイス映像であった。

 俗に言う「エロビデオ」である。

 「ジジイのくせにこんなもの見やがって・・。」と呆れたものの、当時私は思春期真っ只中の純情少年であったため、画面に釘付けになってしまった。

 想像して見て欲しい。

 一心不乱にエロビデオを眺めるジジイとその孫・・。

 しかも祖父は耳が遠かったため、テレビからあふれ出る音は大音量であった。その音を聞きつけた母が慌てて祖父の部屋に飛び込んできて、無言でテレビを消した後、何故か私に鉄拳をふるった。

 あの時の痛みと、祖父と分け合った甘美な空間を決して忘れはしないであろう。

 祖父が死に、弔辞などを披露できるのであれば、この一件を是非とも語り、涙を誘いたいものである。






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最終更新日  2006年09月18日 14時47分56秒
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