昼休み
昼の休憩時間。とは言うものの、休憩時間は16:00~17:00。そうです、ふしゅるの昼飯は夕方です。いや、それは、どうでもよいのだ。ワンタンスープわかめだっぷりと食パン1枚をぺろりと食し、軽い運動がてら駅の本屋に向かったのだ。駅前には、なにやら、主張の激しい集団が。ほいっと目の前に差し出されたチラシを、何気に条件反射の如く受け取ってしまった。そしたら、ついてくるよ、その人。イラク・サマワの自衛隊派遣延長について反対の署名と、明日開かれるシンポジウムのお誘いだった。『自衛隊の人道派遣についてどう考えますか?』『このままアメリカの言いなりになっている国政をどう思いますか?』『ごく少数の情報公開しかしないで、一方的に延長を決めた小泉政策をどう思いますか?』『虐殺をこのまま見過ごしていてもいいと思いますか?』『自国の被災を放っておいてまで延長をすることについてどう思いますか?』とまぁ、こんな具合に、一方的にしゃべり続けた彼女。このクソ寒い中ご苦労様なことです。自衛隊のイラク人道支援については賛否両論。それは一般的な話ではなく、自分の中で賛否両論なのだ。人道支援は、してしかるべきだとは思う。でも、明らかに外交的意図が見え隠れした、あの形での自衛隊派遣には猛烈反対。どんな言い訳をしたって、アメリカや国連安保理に『ココでやらなきゃ、お前の国が北朝鮮ともめたって助けてやらないからな』と全て外交諸国の言いなりに動いているように見えて仕方がないからだ。自衛隊には高校まで同級の友人がいる。最近結婚したばかりで、このままでは、ヤツもいつ派遣されてもおかしくない。国政を翳された自衛隊の皆さんが、喜んでサマワに赴いているとも考えにくい。当然誇りを持って赴いている人たちばかりだろう。表向きは。だが、残された家族はどうだろうか。友人はどうだろうか。ネットで堂々と公開処刑とかが行われてしまう地域を、政府は何をもって『安全です』と言い切るのかも分からない。思想の違うものを認めない単一神宗教の教えを守っている、ある意味自分達の常識の範疇を超えたモノを相手にしているのに、自分達の常識を押し付けようとするやり方はイカガなもんか。とは言うものの、撤退させて、その後の代案があるのか?と問われてもやはり無いのが現状で。万人に受け入れられる案を画策するのは難しい。アメリカも、日本も、イラクも、テロリストも、もう引くことが出来ないところまできてしまっていると思う。あちらを立てればこちらがたたず。私に声をかけてきた女性は『ごく少数の情報公開』と言った。まさに、その少しの情報しか持たぬ私には、滅多なことは言えないと答えた。国政を預かる人間が、バカだとは思わない。国民に公開されていない莫大な情報を有し、いろいろな意見を聞き、吟味し、この政策が最良案だと思い採択したと思うからだ。いや、そうであって欲しい。何が正しいかは、結果が出て初めて分かること。私は、現段階でそのどちらか一方に加担することが恐い。だが、同時に、問題から逃げているとも思う。あのように、自分の意見を信念を持って街頭で呼びかけることの出来る人々を尊敬すると共に、一方的な意見に対し怒りにも似つかぬ苦い感情に駆られる。早い話が、私はどっちつかずなんだ。結局、署名は遠慮させて頂いた。良い・悪いで、一言ではとてもじゃないが言い尽くせない、それほど重い問題に、自分の浅はかな考えで安易にYES・NOを言うことができなかった。署名をしなかったのは、自衛隊派遣延長に賛成したからではない。ただ、反対と自信を持って言えるほどの判断材料と信念を、あなた達ほど強く持っていないのです、ということを彼女は分かってくれただろうか。