読書感想・『ボトルネック』(米澤穂信先生)
読書感想。たまには活字も読まねば。です。『ボトルネック』(米澤穂信先生・2006年)崖から落ちた・・・はずだったのに、気づいたら地元の公園に居た主人公・リョウ。とりあえず自宅に帰ったところ、出迎えたのは「サキ」と名乗る見知らぬ女性。どうやらここは、「彼女ー死産だった姉」が生きていて、「僕」が生まれなかったパラレルワールドのようだ。アニメ『氷菓』を鑑賞しまして・・・これはっ・・・もう・・・原作絶対に好き!というか、この作家様の小説、絶対に好き!・・・という確信の元、米澤穂信先生の著作品に手を出し始めました。実は、アニメ原作はライトノベル!という思いこみで、米澤先生もライトノベル作家さまだと思い込んでいたのですが・・・ライトノベル色が強いのは古典部シリーズのみで、こんな新潮文庫(お堅いイメージ;)から本を出されるような作家様だったんですね;本屋でこの方の著作品がみつけられなくって苦労しました;とりあえず完結モノで読みやすそうなこの作品から。*以下、ミステリー要素のある作品のネタばれアリ感想です。お気を付け下さい!* とにかく・・・読んでよかった!おもしろかった><この方の作品は・・・まだ古典部シリーズと、この「ボトルネック」しか知りませんが、基本、「地味目のミステリー」+「何か(作品の主題・主人公軸)」って感じ・・・なのかな?主人公のタイプは、あだち充先生の作品のように、基本は「同じ子」・・・って感じ何でしょうか?で、作品の主題に沿って、微妙~に個性が違うんです。(あだち先生の作品も、よく「キャラ同じ」と言われますが、熱烈ファンとして主張しますと、全然違います。お話に必要な要素がきちんとキャラクターに反映されてます!)ボトルネックのリョウくんは、古典部の奉太郎くんととても似ている、基本的には自分から多くのことに関わろうとせず、何もかもに寛容的というか、無関心というか・・・そういう子でした。でも、超ネガティブ。その子の一人称単数の語り口調で、物事を説明する感じでしょうか。特に、美しい詩的な言い回しだ!とかそういう文章の印象ではないんです。ただ、主人公の目線での語りはとにかく読みやすいですし、要素出しと、要素の「程度」が上手なんだと思います。主人公・リョウくんのテンションで 謎を追っかけられるんです。この「謎」が、この子にとってどれだけ大事なことか・・・それが分かるんです。シチュエーションが分かりやすいので、リアクションの大きくないリョウくんですが、その心情をきちんと「間違わず」追っかけることが出来ます。だからこその・・・ラストシーンのインパクト。絶望しかなかった世界に、自分の存在の否定を焼き付けた状態で・・・「好きだった女の子が亡くなった崖」に戻って来るという・・・このシチュエーション。凄いコレ・・・;崖下も地獄。家に帰るも地獄。でも、パラレルワールドで「好きだった女の子の死の真相」が分かったことで、彼女の本当の本当の心の内が見える気がして。自分との日々が虚構めいていたという絶望と一緒に分かったのが、彼女が「自殺ではなかった」という事実と、 きっとあるであろう彼女の「生への嫉妬」で、加えて、本当は生まれなかったお姉さんの強烈な思いがあって・・・どっちに行くんだ?!!・・・の答えは、読者各々が、ここまで読んできたテンションで描き切れ!という;凄いコレ・・・;;また読み直したら違う「ラスト以後」を思い描くのかもしれませんが、これは・・・生ある地獄の方でしょう。「そんなに主人公の気を滅入らせて楽しいか!」・・・という、本編全体が主人公いじめみたいなお話で、元々の世界に本当にまったく光がなくって、それどころか大切にしたかった彼女との想い出まで崩れ去って、最後のダメ押し・母親からのメールで読者と主人公がアクセス不可になるラスト。・・・それでもこう思わせる!!!が、この作品の一番面白いところ・・・なんだと思います。こんな微妙な・・・本人にしか絶対に分からないはずの感情が、明確ですもん・・・。おもしろ~~い><!!!私はこんな感想ですが、多分全然ちがう感想な方も大勢いらっしゃると思います。私には「明確」な感情だったんですけど;え・・・そういうお話だと思ったんですけど・・・;だってここまでリョウくんに感情移入して読んできて、死のうと思いませんもん;・・・作者に踊らされてます;;ああぁ><面白かったぁ!!とにかく読みやすくって、数時間で一気読みしちゃいました。次はどれ読もうかな。by姉