漫画感想・『石の花1~3巻』(坂口尚先生)
重たいもんが読みたい!というわけで、パッと観、いかにも重そうだったこちらの作品を読み始めました。『石の花 1~3巻』(坂口尚先生、文庫全5巻、1983~86年)1941年、ナチスドイツがユーゴスラビアに侵攻。スロベニアの片田舎で平穏な暮らしをしていた少年・クリロと少女・フィーは、諸外国の侵攻と、それに伴い起こる内戦に巻き込まれていく。ユーゴスラビアを題材にした戦争もの・・・ということで、最初は1990年代のユーゴスラビア紛争のお話だと思ったんです。その辺りのうっすらとした知識しかなかったので・・・。ただ、読み始めたら舞台は第二次世界大戦下のお話でした。この作品の連載自体が1983~86年ということで、ユーゴスラビア紛争以前のものですので当然と言えば当然なんですが;とにかく、この「第二次世界大戦下のユーゴスラビア」に関して全く知識がありませんでしたので、最初はどうしてこの題材を選んだのかなぁ・・・?と思いながら読んでいましたが、なるほどです。諸外国の侵攻の中で、共産主義を謳い、初期はゲリラ戦で対抗した自国民の武装勢力「パルチザン」が、自国内部からの力で独立を勝ち取った・・・というユーゴスラビアはそういう位置づけの国だったわけですね・・・。この「パルチザン」に、主役のクリロくんは属するわけですが、ユーゴスラビア紛争以前は、エンタメ題材として非常に人気のあるモチーフだったようです。もちろん、日本においては第二次世界大戦というともっと別のイメージでしょうし、あんまり取り上げられることはなかったと思いますが、特に欧米では・・・映画もたくさんあるそうです。・・・全然知りませんでした。私自身が物心ついたころには・・・ユーゴスラビアというと紛争のイメージでしたし、なるほど・・・時勢が違うと、エンタメの題材の印象もこうも違うのか・・・と。まずは、そんな感じで題材自体が衝撃的でした。重い作品に手を出す醍醐味です。 次にマンガ作品としての感想です。・・・なんじゃこりゃ!!!!です。上手いとか上手くないとか・・・なんかそういう次元じゃない上手さというか;もう、何が上手いのかよくわからないんですが、凄いことは分かる!という作品でした。少し検索してみましたら、作者の坂口尚先生は、手塚治の後継者として期待された、アニメーター出身の天才マンガ家さまだそうで・・・!なるほどです。これは・・・熱狂的なファンの居るマンガ作品だと思います。私も連載当時読んでたら、心酔してただろうなぁ・・・と。残念ながら95年に若くしてお亡くなりになったそうですが、これは他作品も是非是非読んでみなくては!「アニメーター」と聴いて、すごく納得。キャラクターの一つ一つの動きが、躍動的で、観ていたくなる・・・っていうか・・・いちいち面白いんです。それでいて、主観がぶれない。だからマンガ作品としてとにかく面白い><丁寧で繊細な描写が、主役の二人(クリロとフィー)にのっかて来ます。結局人物配置も、この二人の主観から考えたバランスで出来ている・・・と思います。朦朧とする意識の中で、突如幻想的な、詩的なシーンが挿入されたりするのですが、これが・・・効くんですよ><ズシっと来るんです。フェンベルバルディンク先生・・・一体何者???クリロくんとフィーちゃんはどうなるのかな?これ。・・・あぁ!続きが読みたい!!アマゾンで続き買わなきゃ!・・・ちょっと高いけど、しょうがない><by姉