暁のヨナ 高華国内の要素バランスについての徒然
暁のヨナ 高華国内の要素バランスについての徒然花とゆめ本誌では、そろそろここの要素を整理した方がいいのかな・・・という展開になって来ている気がするので、私の勝手な解釈をつらつら語ります。*本当に一読者が好き勝手考察しているだけですので、ご注意ください;;*暁のヨナという少女漫画作品は、とにかく読み解くのが難解な作品です。というのも、極端な相反する二つの観点で出来上がってるから・・・なんだと思います。一つ目。とにかくこの作品は、第一に少女漫画である点。少女の狂気にも近い激情・恋心・・・この感情が起爆剤なんです。ヨナちゃんの、ハクさんに向かう感情ですね。ヨナちゃんというキャラクターは、たった一人、ハクさんに向かうこの感情だけで、「世界」相手に喧嘩を売り続けているわけです。一番繋がらないところなんです。社会的地位の低い「少女の恋心」と「世界」って。すごい話なんです。普通、やらないです、こんな話作り。難し過ぎるとっかかりなんですよ。暁のヨナとは、出来るはずのないことをやろうとしている、そんな作品なのだと思っています。・・・で、このヨナちゃんの「激情」、これ自体をしっかり認識するためには、まずもって、「ハクさんが今、何をやっているのか」・・・これを間違いなく理解しないといけないんです。これが、難しい。作中で明確に、読者向けの説明は、まだなされていません。二つ目の観点。「ハクさんが今、何をやっているのか」これを捕らえるには、おそらく男性的な、と言いますか・・・「社会的・組織的な観点」が必要です。ハクさんは、2巻の風の部族を出る段階から、・・・いや、むしろ1巻の、ヨナ姫を連れた逃亡の最中から、一体何をやっているのか。私にはこう見えます。基本的に彼はずっと「自分の存在を殺し続けてる」んです。何故か?自分の存在によって、高華国の約1/5を構成する「風の部族」と、中枢政権である「空の部族・スウォン新王」との間に、決定的な亀裂が生じるから です。国の1/5は、決して、一方的に押さえ付けられるマイノリティという規模感ではありません。数千年続いてきた高華国という体制それ自体が崩れうる、そして本格的な戦闘ともなれば、甚大な犠牲・被害は避けられない、大事なんです。風の部族が怒るのは、当然です。ハクさんが、彼らにとってどれほどの憧れ・希望・誇りであったか。風の部族の描写のいたるところで、それはしっかり描かれています。ハクさんより部族長を引き継いだテウくんも、最近の花ゆめ本誌で、「ハク様の心次第で、王(スウォン)に歯向かうことは一切厭わない。」と言った趣旨の言葉を、はっきりと明言しています。3巻以降、四龍探し~!とかやっている間においても、ハクさんはその気になれば、風の部族に戻り、新政権に対して強行な独立戦争を仕掛けることも出来る、そんなとんでもない存在なんです。↑それだけは絶対にさせたくない!!ハクさんは、2巻の出だし時点で、風の部族内の怒りをなだめ、「俺の存在は忘れてくれ!」と、光の速さで「自分の存在」を捨て去ろうとしました。そして、「自分自身」を、何もかも失くしてしまったヨナ姫に全部あげちゃいました。(自分自身を捨て去ろうとした、まさにそのタイミングで、ヨナちゃんが「私にハクをちょうだい!」って言うから、思わずまるっとあげちゃった感じですね。)いろんな言い方が出来るとは思いますが、ハクさんが自身の「存在」を主張した瞬間に、おそらく今の高華国は崩壊します。スウォン新政権下における高華国のバランス維持。ハクさんはずっと、「自分を殺す」ことによって、高華国のバランス破綻をぎりぎりで食い止め、風の部族をそして「スウォンさんを」護っているんです。↑これが、ハクさんが2巻からず~~~っとやって来ていることです。まぁ名言はされてないので・・・私にはそうにしか見えません、って話なのですが;「高華国」を構成するバランスについてしっかり捉えると、ハクヨナの関係性は、「主従」とは全く違ったものに見えると思います。ハク様は、「ヨナ姫命の従者ですよ」「四龍の一人みたいなもんですよ」という存在に身を隠し、なんとかヨナちゃんだけは幸せに過ごせる場所まで守り抜こうとしていますが、その実は、自分の存在をずっと押し殺しながら、自身を不条理に失脚させた新政権のバランス維持に徹する「この世界」の、影のスーパーバランサーなんです。ヨナちゃんは、この状況を良しとしません。ヨナちゃんは2巻からずっと、ハクさんがこの↑状況にあることに対して、怒っているんです。ヨナちゃんは、ハクさんの生きがいのために、「姫」である自分を作り、「ハクさんが、自分自身を抹殺しなければならない」この世界に怒り、この世界からハクさんを守るため、剣を持ち、仲間を集め、この世界に対して喧嘩を売り続けているんです。で、話は変わりますが・・・この観点↑で、特に11巻以降の各エピソードは読み込む必要があると思っています。13巻の、火の部族の反乱。あれは高華国内のバランスという点で、一体どういうことなのか。火の部族の反乱で、ハクさんはかなり精神的ダメージをくらっています。この火の反乱以降、明らかにハクさんの表情がなくなりましたし、次の水の部族編でのブチ切れに繋がっています。この出来事が、ハクさんにとって一体どういう出来事なのか。本編中で、はっきりとした説明はありません。ただもう普通に、「高華国のバランス」という観点で、提供されている情報から、普通に全体像を考えるんです。そうすると割と見えてくるというか・・・イル王の前段階は分かりませんが、少なくともイル王時代においては、王権・空の部族を、風の部族が無条件で絶対支持し、それを対外的にもアピールすることによって五部族間のバランスをとっていた・・・と解釈できます。五部族間には、(おそらく)大きな力の優劣はないと思われる中で、残りの3部族(火・土・水)間での結託・同盟関係はない。そうすると、2対1対1対1ですから、イル王が他部族長たちに軽んじられているとはいえ、空の部族は、風の部族のおかげで、王族の面目を保てている状態だった・・・と解釈することができます。ここのバランスが、スウォンさんの謀反劇によって、(対外的にはなんとか体裁を取り繕った形ですが)実質崩壊しています。この謀反劇の際、スウォンさん(空)は、火の部族と結託して、風の部族を攻撃しました。風の部族の支持を切り離しても、今度は火の部族が空を支える形となり、バランスは、いびつにはなりますが、保てます。↑ハクさんは、謀反劇後の高華国のバランスをこう認識していたんじゃないかと思います。その認識が、火の部族の反乱によって、崩壊します。火の部族は、もともと王権奪取に熱心であり、空の部族と結託して風牙の都を攻撃したこと自体、空と風の分裂を後押しし、孤立状態になった空の部族を攻撃したい意図があった、と解釈できます。そしてこの火の部族の企みに関して、スウォンさんは完全に織り込み済みで動いていました。・・・ショックですよね。ハクさん。元々、「今回のような、反乱を起こさせない為に」、風の部族は空の部族を全面的に立てて来ていたんですから。この火の部族の反乱は、謀反劇前、風の部族が空の部族を立てている状態では、絶対とは言えませんが、簡単には実行できない状態だったはずです。スウォンさんは、火の部族の反乱が起こることを想定した上で、風の部族を攻撃してるんです。・・・意味が分かりませんよね。なんなんだ、他部族の反乱を誘発したいのか、って話ですよね。火の部族の反乱により、ハクさん目線での高華国のバランスはどうなっているか。空→王権。前王・イルを殺害の上、スウォン新王を立てている火→弱体化した空から王権を奪わんと反乱を起こす風→空を恨んでいるが、ハクさんの意を汲んで体裁上は従っている地→武力第一。将軍の気質的に、スウォンさんを軽視している可能性が高い水→事なかれ主義。王権を積極的に立てようとはおそらくしない。反乱勃発までに、スウォンさんは地の部族・グンテ将軍の協力を取り付けていたのでなんとかこの場を凌いでいるわけですが、正直、新政権は、基盤の安定した中にある状態とはとても言えない。スウォンさんは、「高華国を強国にするために」王になったと言っていますが、イル王権下の時の方が、少なくとも国内のバランスはとれており、五部族内で反乱を誘発するような状態ではありませんでした。スウォン新政権は、各部族(地や水)に恩を売る目的もあり、国内がこんな綱渡りのグラグラバランス状態をおして、近隣諸国に喧嘩を売っているわけです。ただ、風の部族の信頼・支持を得ることは、どうしたってもう無理でしょう。これ↑が、本当に高華国を「強国」にしたい人がやることなんですか、って話です。ハクさんは、謀反劇後も、スウォンさんのことを信じています。ヨナちゃんの手前、「怒り」の感情を表に出してはいますが、実際は、「スウォンは、何かやりたいことがあっての行動だろう」と、自身を抹殺するという形でもって、新政権のバランス維持を支え続けているわけです。・・・それが、火の部族の反乱以降、分からなくなってしまったんだと思います。南戒侵攻の時にはもう、スウォンさんが分からな過ぎて、やることなすことがスウォンさんらしくなさ過ぎて、「もうやだもう見たくない見たくない・・・」・・・ってなってます。もっと他の要素を拾う観点も多々あるとは思いますが、とにかくハクさんに関しては、国内政治バランスの要素をきちんと拾い、整理して、その上で、ハクさんにはこの状態がどう見えているのか、何を考えているのか、一生懸命考えて、読み取る必要があります。↑ヨナちゃんは、このハクさんをずっと見ています。ハクさんを守るために行動しています。ハクさんを理解しないと、ヨナちゃんの行動が理解できなくなります。暁のヨナは、「少女マンガ」です。・・・が、国内・組織バランスに関して、登場する情報から全体像を一生懸命組み立てないと、ヒーローが分からなくなる、ヒーローが分からないと、ヒロインのテンションも理解できない、そういう少女マンガだと思っています。本当に、信じられないくらい難解な作品です。ですが、興味のある方は是非!この観点で、ここまでの話筋を読み直してみていただきたいです。本編はそろそろ、この観点↑を捉えなおす必要のある、そういう展開になっていると思います。好き勝手すぎる語りでした;;本当は他にも言いたいことはもっといっぱいあるのですが、とりあえず今回はこの辺で。by姉