映画感想『独裁者(The Great Dictator)』
映画感想。『独裁者(The Great Dictator)』(監督・製作・脚本・主演:チャールズ・チャップリン、1940年)第一次世界大戦の前線で味方とはぐれたトメニア(架空の国)の下級兵士・床屋のチャーリー(ユダヤ人)は、負傷した士官・シュルツを助け、飛行機で前線を脱出。飛行機は燃料切れで不時着し、命は助かったものの、そのショックでチャーリーは記憶喪失となり、その後約20年間を病院で過ごすことになる。その間、世界恐慌のパニックの中、トメニアでは政変が起こり、アデノイド・ヒンケルが独裁政権を樹立。選民的な思想を唱え、ユダヤ人の迫害を行っていた。チャーリーは病院を抜け出し床屋に戻ったが、そこで時の流れを実感するとともに、20年前の常識では考えられない警官(兵士?)による「ユダヤ人迫害」を体験し、そのギャップにひどく違和感を覚える。世界の皇帝として君臨することを目論むヒンケルは、隣国・オストリッチへの侵攻を画策しており…。尚、独裁者ヒンケルと床屋のチャーリーの姿形が瓜二つなのは、ただの偶然である。訳あって、アドルフ・ヒトラー関連で何か作品鑑賞をしたいと思い、最初は手塚治先生の『アドルフに告ぐ』を読もうかな、と思っていたのですが、近隣の書店で上手く全巻集められなかったので、こちらの映画作品を鑑賞することにしました。喜劇王・チャップリンの映画!!…お恥ずかしながら、初めて鑑賞しました。いや、小学生くらいの頃に、祖父が「モダン・タイムス」とかをTVで観てたな、って記憶はあるのですが、私自身が「観よう!」思って観るのは、今回が初めてです。映画を鑑賞している途中で、そういえば…この作品について、高校生の頃、世界史の先生が「とても面白い映画だ!」と話しをしてくれてたな、とふと思い出しました。話を聞いて、「それは面白そうな映画だな!」と思った覚えがありました。かなり古い記憶で、すぐに思い出せませんでしたが、今回この映画のDVDが目に入り、購入する際、なんかいい印象があった気がしてすんなり手が出せたんですが、そうだ、この時の印象だったんですね。映画本編をじっくり鑑賞し、まぁ…なんて言うか…アドルフ・ヒトラーが云々というか、ほとんどこの↓印象しか残りませんでした。チャップリン、天才っっっ!!!!すべてのシーンで、思わずクスッと笑ってしまうような、パントマイムが基本となっているコミカルな演技動作が挿入されていますが、基本的に、これらは「鑑賞者へのリップサービス」だと思います。観てもらうための、鑑賞者の視線を引き付ける為の、工夫です。映画の内容、メッセージ性だけを捉えれば、この痛烈な社会風刺・他国の政権批判は、決して「コメディ」という類のものではありませんし、そこの確固たるものがあったうえで、どれだけ興味を持って鑑賞してもらうか、という部分で大規模なセット等を駆使し、延々と戦ってた方なんだな、という印象です。映画を鑑賞し終わり、概要を掴もうとこの映画作品のwikiを見に行って、愕然としました。この映画…「1940年」公開!!?構想は1938年頃から…!!??え、コレ、第二次世界大戦後の作品じゃないの!!?アドルフ・ヒトラーの死、及び第二次世界大戦の終戦は、1945年です。確かに、映画作中に登場する「ユダヤ人の強制収容所」の描写は気になってました。ベットもあり、労働環境がそれなりに整えられているような描写で、私が漠然と抱く「収容所」の印象より、かなり柔らかいというか、そういった描写だったんです。それもそのはずで、1940年って、いわゆる後世で言われる「ホロコースト」が本格的に行われるよりも前の段階のようなんです。また、この映画を作成されたアメリカは、1940年当時まだ大戦に参加しておらず、まだまだ対岸の火事的なのんびり構えている風潮だったようで。そうか、リアルタイム風刺だから、この映画は、明らかに実在国家・人物をもじった架空の国の設定なのか…。そこまでの情報を頭に入れてから、もう一度ラストのスピーチシーンを観ました。すげぇ…。だから、ここでチャーリーが語りかけてるのは、「トメニアの兵士」なんだ…。すげぇ…なんかもう、これが映画作品として、この時期に公開されていたという事実がすげぇ…。娯楽・エンターテイメントという点と、「発信」できる立場に居る方の社会的な影響力への責任感という点を、この上なく、全部やってるんで。ただただ、「チャップリン、すげぇ…!」という感想しかありませんでした。チャップリン…これを機に、ポツポツと有名作から観ていきたいな、と思っています。フェデリコ・フェリー二作品と一緒に、気長に集めていこう…!by姉