音楽語りーその278・♪Breaking Dawn bySmap<SMAP楽曲についてーその53>
<SMAP楽曲についてーその53>音楽語りーその278↓♪Breaking Dawn bySmap<SMAPシングル・アルバム年表>★:サウンドに影響がありそうな事項◆:アルバム●:ベストアルバム▲:リミックスアルバムなど□:ソロ関連55 2015年9月9日 Otherside/愛が止まるまでは★2016年1月13日SMAP解散報道この後に、ファン向けのショップ展開用の楽曲があるようですが、基本的には、SMAPとしてのラスト音楽ワークスが、こちらのシングルです。9月9日という、デビュー記念日に発売された55枚目のシングル♪Otherside/愛が止まるまでは個々の楽曲については後ほど語りますが、シングル全体として、楽曲の練り込みはかなり粗い…というか、前作・2月発売の♪華麗なる逆襲 の練り込み・完成度に比べたら、天地の差を感じるワークスです。このシングルは、ただただ「この時のSMAP」の姿を形にしようとした、超突貫工事作品だと思っています。この段階で、コンテンツを練り込む猶予さえないほど、本当に いつ、どんなことが起こってもおかしくない状態だったのかな、と。悲惨すぎて、他にない。あくまで、起こったであろう出来事を「楽曲を聴いて」想像しようとすると、ですが、おそらくこの2~9月の間に、準備していた独立劇の筋立てが崩壊したんじゃないか、と受け取ることが出来ます。まぁ、たぶん、キムタクが「事務所を出られない」という話になったと。たぶんですよ。こんな悲惨な状態を、「楽曲コンテンツ」にして提供してくる主体なんて、SMAPくらいだと思います。本シングルに収録されている3楽曲の悲壮感の凄まじさは、是非、実際に楽曲を鑑賞して体感していただきたい…。めちゃくちゃ苦しいです。ここにしかないです。♪Otherside作詞:Leo Imai, 作曲・編曲:MIYAVI, 編曲:鈴木Daichi秀行「こみ上げるCrazy」をただただ叫ぶ曲…でしょうか。分け合う夢 引き上げろ またやろうぜOthersideへ HighSpeedで まだ行こうぜSMAP本人たちに、「叫ばせてあげる」曲というか。サウンドや言い回しに関しては、練り込みを感じませんし、全然、出来のいい楽曲だと思わないんですが、存在自体が、ここにしかない楽曲だと思います。PVの映像も、「狂気」を感じさせるサーカス調の人々の中で、SMAP達がスタンドマイクでひたすら叫ぶ…というシンプルなものです。このPVの中居くんが…もう見てられないんですよね。「立てなくなってる」んですよ。(実際には立ってますが、なんかもう雰囲気が…。)あえてそういう姿として演じてるのだと思いますが。「こうやって観るんだよ」って。♪愛が止まるまでは作詞・作曲:川谷絵音, 編曲:鈴木Daichi秀行デビューシングル♪Can't Stop!! -LOVING- のアンサー(?)のようなタイトルの楽曲です。アンサーというか、「♪Can't Stop!! -LOVING-」に対し、「『♪愛が止まるまでは』、延々と愛を叫ぶ」楽曲です。1楽曲中に、28回も「I love you」という言葉が出てきます。ひたすら、コアなファンの方に向けた言葉なのかな、と思って聴きました。この楽曲が、ラスト楽曲になること(もしくは、ラストになりうる可能性があること)を織り込んで製作したのだと思います。鈴木Daichi秀行さんの、焦燥感を煽り立てるピアノサウンドも聴きごたえがあります。…が!この楽曲は、とにかくPV映像です!!この壮絶なPV映像なくして、この楽曲について語ることはできません!!!赤黒基調の映像で、赤いハートはトゲトゲの▼として表現されていて、周囲で不気味に黒子調の人々が楽器を演奏する小さなステージでSMAPが歌っています。この辺の抽象的なイメージ像は、実際に鑑賞していただかないとなかなか伝えられませんが、下記↓のような印象的な描写があります。◆ステージ上から何かを伝えようとしているSMAPのメンバーたちを「無表情の人々」が遮り、 それをかいくぐってなんとか表情をみせようとする描写。◆何かに追われ、逃げ続けるSMAPのメンバーたちを照らしていた照明がだんだん暗くなり、 最後は表情も読み取れなくなる。それでも、まだ走り続けている描写。「この先、自由に発言・発信が出来なくなる」「全く表情を見せることが出来なくなる」という概念が、見事に表現されているのだと思います。マスメディア…特にテレビという文化を知り尽くした主体が、「ラストSMAP(になるかもしれない)」という意識で出してきた作品。そのPV映像の最後のカットは、逆光でもう表情が見えなくなっている中で、それでも必死に走り続けている5人…その背景に、真っ赤な大きな文字で『SMAP』と刻印されるというものでした。これがっ…「SMAP」の焼き付けたい姿か、と。こんな状態を、楽曲コンテンツにして表現しようとすること自体、普通はやりません。っていうか、できません。形になりません。こんな「悲惨な状態」を形にして、アイドルコンテンツとして興味深く鑑賞できるように提供するなんて、思いつきもしません。「だから、SMAP楽曲は他と全然違うんだ!」と声を大にして言いたくなるコンテンツです。こちらのPV映像は、2016年末に発売された「Clip! Smap! コンプリートシングルス」のラストに収録されていますので、興味がある方は、是非!!!「アイドルコンテンツ」とは何たるか、「形にする」とは何たるか、更には、「エンタメ」とは、「芸術」とは何たるか…私の一番求めるものの答えは、ここにその形があると思っています。あくまで、私は。♪Breaking Dawn ※通常盤のみ収録作詞・作曲:MiNE, 作曲:Susumu Kawaguchi,作曲・編曲:Atsushi Shimada追い立てられるサイバーサウンドの楽曲。「(収録順番的には)SMAP楽曲のラストワークス」と言われても、最初は嘘かと思うような曲調です。めちゃくちゃ苦しい中で、「暗闇を抜けて、光はすぐそこだ!」と願うように叫ぶ楽曲です。特に、概念・サウンドの観点では、「練り込めなかったんだな」という印象が残る、普段の私の観点的には、どちらかと言えば残念な楽曲です。ですが、この楽曲はもう何と言っても、ボーカル!あまりに悲壮感・切迫感を感じるボーカルが凄い!!ボーカルに関しては、この曲は本当に全員良いんですが…特に、出だしの吾郎くんの力強さのあるボーカルと、クライマックス付近の、慎吾くんの切々とした独唱部分!現実の投影があって、初めて出てくる歌唱だと思うのですが、この2人の歌唱部分は、特筆したくなる出来映えです。ここに来て、「新しい」。ここまでSMAP楽曲を初期からずっと漁って来て、吾郎くんの歌唱部分で、「この力強さが凄い!」と感じたことはなかったし、慎吾くんの歌唱部分で、「この切迫感が凄い!」と感じたことはありませんでした。恐ろしいことに、このお2人と、草彅くんも含め、2017年『新しい地図』の活動開始以降も、ボーカルに関してはどんどんどんどん良くなっていきます。本人たちにしたら、やってることは何も変わっていないのかもしれませんが、鑑賞している方からしたら、「こんなんだったっけ?」と思うくらい、歌詞の内容の叩きつけられ感が違ってきてます。『表現モンスター』みたいになってるんです。SMAP自体、もともと表現モンスター集団だったんですけど…それにしても…だって…こんなんじゃなかった…。このあたりはまた、新しい地図楽曲についてで語り明かしたいと思うのですが、とにかく、40代に入って、ボーカルが格段に良くなる恐ろしきSMAP。ボーカルの伸びも含め、新しい地図が始まってからの、キレッキレのコンテンツ群、そして更にさかのぼっては、特に2014~2015年にかけての、ここにしかない切迫さを持ったSMAP楽曲ワークス群。これらは、独立&崩壊劇がなければ、存在し得なかったコンテンツたちだと思います。2000年代後半~2010年代前半のSMAP楽曲ワークスに関しては、個々に素晴らしい楽曲はたくさんありますが、90年代の、先鋭サウンドの試行錯誤と比較するなら「つまらない」、基本的には保守的で大人しい、イイ子ちゃんな印象です。独立&崩壊劇が、実際にはどのようなものだったのか、独立しようとしたことが良かったか悪かったか、なんて私には全く分かりませんが、少なくとも、この出来事を経る過程で生み出されたコンテンツ群は、「独立しようとしなかった」時のコンテンツ群より、はるかに熱と毒を帯びた、断然「オモシロいもの」だと思っています。2016年から5年以上、五十数記事に渡り書き続けてきました、SMAP音楽語り。ひとまず、ここで終了です。とにかく自分の価値観のため、私が「信じたいエンタメ」とは何なのかをはっきりさせるためにやりました。時間も気力もかかりましたし、感想記事についても、人様に自信を持ってお見せできるような代物ではありませんが、自分の中でやりたかったことは、ちゃんと出来たと思っています。この、SMAPコンテンツについて必死にかみ砕こうとした時間と感想記事群は、自分を形成する価値観に目いっぱい向き合った、一生ものの財産!・・・にしていけたらいいな、と思います。最後に。私は、コンテンツにしか、興味がありません。アイドルコンテンツなのであれば、サウンドを聴き分ける間違いのない「耳」を持ち、「メンバーを魅力的に見せてあげたい」という愛情を原動力にして、作り手側の挑戦心と、求められる社会的責任の両方に意識を向けながら、適格で練り込んだコンセプトをもとに、メンバー含め、関わる人々全員が意欲的に、コンテンツ・パフォーマンスに向き合い、形作っていくことが出来る主体であるかどうか。これが、私が受け取ることができる「魅力」のすべてです。他の観点が無数にあることは承知の上で、自分の着眼点がどこにあるのか、よく分かりました。私の観点で観て、SMAPほど面白いアイドル主体はありません。これ以上面白いものが、あるわけがありません。引き続き、新しい地図の動向、および楽曲ワークスを、目いっぱい楽しんでいきたいと思います。by姉