少女漫画感想『執事と主は結ばれません』(角野ユウ先生)
少女漫画感想『執事と主は結ばれません 1巻』(角野ユウ先生・白泉社・LaLa)1890年、英国。伯爵令嬢・アメリアの夢は、執事・ノアと結婚し、生涯を添い遂げること。アメリアを「主」として扱うことに徹しているノアに対し、なんとか自分を「恋愛対象の女性」として見て欲しいアメリア。ある日、アメリアの前に婚約者候補の子爵家・ギルバートが現れる。焦りを覚えたアメリアは、ある行動に出て…。電子書籍の試し読み(第1話分)を読み、速攻で「さてと。本屋行って単行本買ってくるかな。」となりました。第1巻には、LaLa掲載のまとまりの良い短期連載3話分と、おまけ漫画が収録されていました。3話連載と言っても、各話40~50P超というボリューム感での掲載だったようなので、かなり読み応えがあります。作品の「ウリ」は、すべて表紙(及びタイトル)に凝縮されており、「見たままの内容」という少女漫画作品です。テーマや設定されているハードルに関して、目新しさは全くないのですが、もう、とにかく『漫画が上手』です。絵柄、コマ割りは、白泉社読者が食いつきやすく構成されており、情報がたいへん頭に収まりやすい。読みやすい。1話毎の展開も、魅せるシーンのメリハリも、少女漫画的に非常に満足度が高く、落ちなく完璧です。モチーフも、少女漫画的に上手く入れ込んであって、「ありきたり」の中に、ちゃんと独自性があります。1巻収録分に関しては、「傷」というモチーフが印象的でした!また、キャラクター(ヒーロー・ヒロイン)の細やかな設定が、価値観・感情づくりという点で、「自然」と感じられるよう、ひねって詰めてあることがよく分かります。↑ココ!!定期購読している花ゆめ本誌に掲載されるルーキー作家様たちの新連載、全然ココを丁寧に詰めようとしてくれないんですもん!!妹に、「このコミック、新しく買ったんだ!」と伝えたところ、「小学館のベツコミに前居た人だよね?」「とにかく『女の子』が可愛く描ける作家さん」と返ってきました。チェック済みだったんかい!!なるほど…小学館のネーム(企画?)千本ノックあがり…しかも、生活感や人物像描写に重点を置くベツコミとな…どおりで、白泉社輩出のルーキー作家様たちにはない、スマートにウケ狙いを織り込める、企画・構成力…と、いろいろと腑に落ちました。この方の、作品の変遷が見てみたいな…!他のコミックスも見てみたいな…!、とネットで検索したところ、驚いたことに、ベツコミの後に、一度ジャンプのWebアプリ版誌?で、少年(青年?)向けラブコメの連載もされていたとのことで…。こちらも、チラ見する限り、雑誌の方向性をよく意識した、非常に妥当な企画で、更に、画面取りやキャラクターの描き分け・強調どころが、少女漫画のそれと、全然変えてありました。…あぁもう全然、作者様の経歴が違ったわ!そりゃ、他の白泉社採用ルーキー作家様たちの、本格連載を遠回しに狙ってるんだか狙ってないんだか分からないような、甘い短期連載や読切企画と、品質や精度が違うはずだわ!非常に納得です。*すみません 花ゆめ漫画をめちゃくちゃディスっちゃってますが…いや、勿論大好きですよ。白泉社少女漫画!私など、花ゆめを15年以上は買い続けてる、生粋の愛読者ですので。型に当てはめない、作家お任せのスタンスだからこその「他にないサラダボウル感」というか。唯一無二の歴代名作たちや暁のヨナだと思ってます。大好きですよ。ただやはり小学館作品と比べると、「何がやりたいのか分かりづらい」というか、商業用企画として、疑問を感じることが多いのは確かなので…。*もちろんこういった、雑誌毎に作風や作り方を変えることが出来る、器用な作家様というのは、他にも数多く居らっしゃるのだと思いますが、一度、本作の画面を見ていただくとよく分かると思うのですが、本当に「白泉社の少女漫画作品」に構成されてるんです。最初、他紙…しかも少年漫画画面を経た作家様だなんて、みじんも思い至らなかったくらい…完璧に「白泉社少女漫画画面」が再現されてます。…凄いな!!!、と思って。そういう目線で読んでみると、なるほど。現在の、複数のLaLa売れっ子作家様たちを、ものすごく研究・分析して、それぞれの要素を器用に取り入れていることが見て取れます。私は、本作を読んで、1話毎の読み応えのある筋立て・プロットづくりは、田中メカ先生、負ベクトルの感情や情報を、可愛くマイルドに画面に収める「つぶれたミニキャラ」は、可歌まと先生、光をもった魅せるトーンワークは、天乃忍先生…っぽいな、と思って読みました。…で、大切なのは、「それだけじゃないとこ」です!妹も言っていたのですが、これ↓がすごい。これほど、「掲載誌」というものの特性に向き合い、それに合わせて企画・作風&画面を構築する中で、きちんと、「自分の描きたいもの」を、作品の根本に据えて来れているところ。妹も真っ先に言っていましたが、本作を読んでひしひしと感じたのは、作者の角野ユウ先生は、おそらくとにかく「カワイイ女の子」が描きたい作家様であるということです。ちゃんとこれが、この作品の魅力になってます。ヒロインのアメリアちゃんが、とにかくカワイイです。というわけで、なんかだらだら語りましたが、単純に、この作品がすごく気に入りました!ってことでした。まだ発表はされていないようですが、今回発売のコミックスに①巻と明記されていますので、おそらく、近いうちにLaLa本誌で、本格連載がスタートする予定なのではないかな…と勝手に思っています。そうだといいなぁ!質の高い、精度の良い、「白泉社少女漫画」、読みたいなぁ!ぶっちゃけ、この先の展開がどうなるか、主役2人の行く末が気になる!とかは全くないですが、お約束な展開が、ものすごく上手に、ヒロインが可愛く描写されていれば、それだけでお腹いっぱいのはずです!続きが読めるのを、楽しみにしてます。by姉