ちはやふる 感想-その9 恋愛とかるたについて-3
<2023/3/26追記しました>*以下、最終回までの展開を知っている前提で記事を書いてます。最終50巻の内容について、思いっきりネタバレありです。本作品を楽しむ上でかなり重要な部分ですので、未読・未鑑賞の方は読まないでください。*ちはやふる 感想-その9恋愛とかるたについて-その3『ちはやふる』は、ネタばれ回避の意図があってだと思いますが、千早ちゃん&新くん、千早ちゃん&太一くんのツーショットカップルイラストが、びっくりするくらい少ない印象です。その中で単行本22巻・26巻の表紙は、今後の展開を踏まえた見事な対のイラストになっていると思っています。ここからは時系列です。・26巻・太一杯~太一くんの告白~退部26巻の太一杯。ここで、千早ちゃんの「太一くんのかるた」への執着及び束縛心が、行き着いた形で表出されました。このエピソードは、妹とのオタクトークの中でも「こんなの観たことがない、天才的過ぎるエピソード」と幾度となく話題に出て来ます。流石に千早ちゃんも、太一くんが部活をやるのがキツくなっているのは気づいていて、年明け・原田先生の名人戦と、その後の高松宮杯以降は、本当に何とかしなければ…と。かなちゃん提案の、バレンタインまでの方向性は良かったと思うんですけどね…そこで大々的にしくって、その無念も乗せて、周囲の人たちの「太一くん愛」を、『かるた大会』にして伝えようとして来ました。とんでもないかるた脳の女の子の、最上級の愛情表現だったと思います。瑞沢かるた部の子たちも、あれだけ頭のイイ子たちが揃っているんですから、誰か一人でも気づいてくれれば良かったんですが。「これ、たぶん太一くん嬉しくないよ」って。皆、太一くんに元気を出して欲しい気持ちは持っていますし、バレンタインの女子たちの無念を共有していますので、あのような、超・力の入った、悪ノリの産物みたいな悲劇イベントが実行に移されてしまったんでしょうね。「優勝賞品は『太一のキス』」という千早ちゃんの恐ろしい景品設定も、「かるた以外は全く求めてないよ!」という千早ちゃんの強烈なアピール(になってしまったもの)だったんだろうな、と受け取っています。太一くんは、ちゃんと「気持ちは嬉しい」とその場では笑ってくれていましたが、ここまで、千早ちゃんと仲間たちに気を使わせてしまうような状況に対し、「3年次の部長は出来ない」「ここまでだ」という決心がついたのかな、と思います。直後、部室での太一くんの告白シーン。これは告白というより、太一くんが、千早ちゃんとかるた部から離れるための2つの切り札を提示したシーンだと受け取っています。ここで千早ちゃんに言ったのは、太一くんがかるたをやってた理由の列挙かな、と。①小学生のかるた大会で新くんのメガネを隠した。それをずっと悔やんで来た。②苦しい気持ちがありながら、ここまでかるたをやってきたのは、千早ちゃんが好きだからだよ。⇒要約:千早ちゃんが思っているように、「かるた」が楽しくてやってたわけじゃないよ。千早ちゃんは、ここで太一くんの発言の意図が全て汲み取れていたわけではないと思います。ただ、太一くんが「何かを終わらせようとしている」ことは分かる。いきなり太一くんが「恋愛」を持ち出して来たことに関して、その表情も見て、千早ちゃんは、直感的に「一緒に生きて行く」という次元の話だと認識して、やっぱり怖くなって、受け止められずに一旦蓋したな、拒否ったな、と受け取っています。このシーンの漫画表現は…まぁ、いろいろと凄いと思います。これを、新くんの告白「一緒にかるたしよっさ」に被せて魅せて来たのは、まぁ…平たく言うと「(読者への)ひっかけだろうな」と思っています。もちろん告白の連鎖もあったり、千早ちゃんが実際に、「新くんが好きかも!?」と思っていたから、新くんが思い浮かんだんだろうな、とは思うのですが、でもこの先、最終回まで、千早ちゃんは新くんの告白を、「一緒に生きて行こう」と言われたとは、全く認識していませんでしたので。このシーンで突然出て来た「一緒に生きていく」という言葉は、太一くんの「好き」を千早ちゃんが読み替えたものだろうな、と受け取っています。(↑最終回まで読んだ上での感想)。千早ちゃんが、太一くんの意図することを全部理解したのは、退部届を突き付けられた時だと思います。千早ちゃんにとっての、太一くんと繋がれる『かるた』という生命線を切って、千早ちゃんから離れたかったのか…です。その後、我を忘れて太一くんを追いかけて、「いやだ」と泣いてすがりつくという、目も当てられない失態を侵し、太一くんに「おまえはおれが 石でできてるとでも思ってんのか」「かるた 百枚全部真っ黒に見えんだよ」という、千早ちゃんとかるたを突き放しにかかるセリフまで言わせてしまい、関係性破綻を決定的なものにしてしまいました。千早ちゃんにとって、とにかく一番ショックだったのは、太一くんにとって「かるたが楽しくなかった、苦しかった」点だったと思います。高校に入り…というより、基本的には小学生の頃から、ここまで千早ちゃんが、どれだけ太一くんを「自分と一緒にやる『かるた』」に束縛しようとして来たか、太一くんがどれだけそれに一生懸命応えようと頑張ってくれていたか…太一くんにとって「かるたが楽しくなかった、苦しかった」のなら、かるた仲間の作れない自分に付き合わせて、ただただ「無理させてた」ってことなので。小学生時のかるた大会を思い起こせば、そもそも太一くんにとって、「かるたが楽しい」なんて始まりではなかったことは、千早ちゃんには容易に想像がつくはずなんです。思いっきり、当事者ですから。明らかに英才教育を受けた、かるたの天才・新くんが居て、ビデオカメラを持ったお母さんが居て、でも、周囲のクラスメイト・親や先生たちには、競技かるたへの理解はほぼなくて、新くんと太一くんの実力差で、太一くんが1枚も取れないことが当たり前であるとは認識してくれない状況下でした。途中で乱入した自分が勝ち、試合後に太一くんがお母さんに怒られていたのも観ていました。高校生になって再会してからも、当初は太一くんはかるたをやるのを渋っていました。だけど、千早ちゃんは、太一くんはずっと、自分と同じように、「かるたが好きだからやってる」のだと思い込んでいました。自分自身の「かるた」も含めて、足元から崩れるとはこのことで、太一くんのことも、一旦、完全に見失ってしまいました。・26巻の関係性崩壊について・双方の「自信のなさ」千早ちゃん方面、太一くん方面。語り出すと本当に多角的な要素が複雑に絡んでおり、この展開に行き着いていると思います。太一くんについては、新くんに向かうため、個人選手として、自分の『かるた』を探求したくなったのもありますし、もちろん、かるたと新くんに対する負い目と、自己否定のスパイラルが思考回路に大きく影響を及ぼしているとも思っています。ただ、一番根っこにある原因は、お互いに、相手のことを知り過ぎてるが故の「自信のなさ」だろうな、と受け取っています。太一くんの「告白」は、基本的に千早ちゃんから離れるための切り札でした。あれは、千早ちゃんに何かを求めている言い方ではなかった。太一くんは、千早ちゃんに明確に求めたいものがあるんですよ。最初から。でもそれを、直接千早ちゃんに求めようとしたことは一度もありません。これは、最終50巻まで一貫してました。自分には、千早ちゃんの望むような形で、今後も一緒にかるたをやってあげることは出来ない。また、もし自分の望むような未来が叶ったとしても、(簡単に言うと、千早ちゃんが真島家にお嫁さんに来てくれたとしても)おそらく、千早ちゃんを絶対に向いてない、ものすごく頑張らなければならない状況に置くことになってしまう。それでも、こんなデメリットだらけの状況を凌駕するくらい、千早ちゃんが自分のことを大好きになってくれて、「幸せだ」と思ってくれるなら、最高なんですが…とてもそんな自信が持てなかったのだと思います。千早ちゃんのことを大事に思ってくれていて、今後も実直に「かるた」至上主義を貫いていくであろう新くんと一緒に生きていく方が、千早ちゃんは絶対に幸せだ、と考えるのも、まぁ、仕方がないというか…理解が出来ます。千早ちゃんが、あんまり「かるた」ばっかり求め過ぎましたからね。 反面、先にも書いたとおり、千早ちゃんが「太一くんのかるた」に固執していた理由は、「かるた以外のフィールド」で太一くんについて行く、また、自分が太一くんに対して何かしてあげられるような自信が、全くなかったからだろうと受け取っています。千早ちゃんの目線からしたら、そりゃそうだよな、と思います。この2人の意識については、一言。「盛大にすれ違ってるよなぁ…」なんですが、まぁ…まだ高校生ですので。高校生の段階で、「自分は、相手を誰よりも幸せにできる存在です(一生涯レベル)!」みたいな自信満々の奴が居たら、そっちの方が怖いですし。・太一くん退部後、クイーン・名人戦予選までこの先は、感想その4の千早ちゃんについてで、時系列で書いていたので、さらっと行きます。太一くんがかるた部を退部し、千早ちゃんは「かるた嫌いだったんだ…無理させてたんだ…」って、自分も一時かるたが出来なくなったり、大変でした。で、太一くんですが、かるた部を辞めて、結局かるたをやっていました。千早ちゃんがこの事実を知ったのは、32巻・高校選手権で太一くんの伝言メッセージを見た時だと思います。太一が「次」を語る 目の前にばぁっと道が 見えた気がしたとても印象的なモノローグです。千早ちゃんが「太一くんのかるた」の先に、一縷の希望を見出した…というか、この先にまだなんとか、太一くんと『かるた』で繋がることが出来る道があるんじゃないか、と考えたのだと思います。36巻・名人・クイーン戦予選で、須藤さんが太一くんに「勝ったら 競技かるたを一生やる」という条件を被せて来た時。太一くん自身は「うげっ」って表情してるのに、千早ちゃんはめちゃくちゃ嬉しそうでした。「太一くんが競技かるたを一生やる」という言葉だけで幸せになれる…それくらい千早ちゃんにとって、「太一くんのかるた」は大事…というか、執着の対象だったのだろうな、と受け取っています。そして、もう1点。千早ちゃんは、東西線予選で、千早ちゃんの方を(あえて)見ずに、「自分のかるた」に集中して闘う太一くんとか、…もう、大っっっ好きなんですよ。自分で考えて、いろいろ準備して仕掛けてくる太一くんとか、…もう、超応援したくて仕方がないんですよ。でも、太一くんは、千早ちゃんにかるたやってるところを見て欲しくなさそうだし、何もやってあげられることがなさ過ぎて、終いには、太一くんの試合の「ちは」札を、自分のアバター代わりに脳内設定して、「ちは」札で太一くんが試合を決めたときには、「ちは」は太一を助けた? よかった よかったとか思っていました。この、37巻の極限状態でのモノローグ、作中の千早ちゃんのセリフ・モノローグの中で、妹のイチオシです。・東西戦、諦めこの千早ちゃんが、40巻までの東西戦を闘い抜いた太一くんを見て、流石に「太一くんにかるたを求める」ことを諦めざるを得ない、というところまで、思考がたどり着いたんだろうな、と受け取っています。ここにも、複数のベクトルがあると思っています。①もともと、背負っているものが多過ぎる太一くんに、これ以上の負担を課すことをしてはいけない。無理させたくない。太一くん自身が、自分のペースで自由にかるたに向き合うならともかく、「千早ちゃんが、千早ちゃんのために太一くんのかるたを求める」ことは太一くんにとってはただの負担増なので、絶対にしてはいけない。②高校生の段階で、東の代表までのし上って来た「太一くんのかるた」は、新旧名人(周防さん・新くん)を筆頭に、かるた界もその伸び代に期待を寄せており、「(千早ちゃんが)一緒に楽しくやろう!」などと独り占めしていい次元のものではない。②もあるとは思っていますが、基本的には①の方が当然比重が大きくて、太一くんが3戦目まで闘い切る姿を見て、その後の新くんとの会話を聞いて、「太一くんは『かるた』でやるべきことはすべてやり切った」「頑張った」「お疲れ様」と千早ちゃんの中で納得がいった、というか。太一くんがなんで、ここまで「かるた」をやって来たのかも、太一くんにとって「かるた」がどんな存在だったのかも、もっと根本的に、小学生の頃から観て来た「太一くん」とは、どんな子なのか、これまでもこれからも、何を背負って、生きている子なのか、全部繋がって、理解まで落ちて来たんだろうな、と受け取っています。太一くんにとって、瑞沢かるた部で仲間と過ごした日々、競技かるたと向き合った日々が、決して不幸なものではなく、大事にしたいものなんだ、ということがしっかり確認出来た、…その上で、千早ちゃんの中で、冷静にもう、太一くんに「一緒にかるたやろう!」を言いたくない、と…断腸の思い(強い涙)で、「太一くんのかるた」を諦めたんだろうな、と受け取っています。26巻から、コミックにして14冊…東西戦は11月?だと思うので、作中の実期間で半年以上かかりました。繰り返しになりますが、それくらい、千早ちゃんにとって「太一くんのかるた」は自分のかるたの土台の一部であり、心の拠り所であり、簡単には諦められない、太一くんと繋がる唯一の生命線…執着の対象だったのだろうと思っています。・だんだん薄れていくんじゃないかって思うよ40巻。太一くんに、かるた部で布団を届ける回。千早ちゃんは、「かるた」を一旦一区切りして、一気に受験モードに切り替えた太一くん…短髪になって、「かるた」と出逢う前・小学生の頃のような面影の太一くん…とか、…もう、大っっっ好きなんですよ。千早ちゃんも、流石にこの時には全部分かってると思うんですけど、「かるた」やってる・やってないとか関係ないんですよ。ただただ、太一くんが大っっっ好きなんですよ。でも、「かるたしよう!」(←千早ちゃんの唯一のコミュニケーションツール)以外に、何をどう話しかけていいか全く分からなくて、超挙動不審になってたんだろうな、と受け取っています。そんな中で、背後から聞こえて来た、かなちゃんと太一くんの超気になる会話(小声)。真島くんはいまでも 千早ちゃんを好きですか……?もうよくわからん… でも だんだん薄れていくんじゃないかって思うよ(後からはっきり描かれるシーンも出て来ますが、)この会話、耳の良い千早ちゃんにはばっちり聞こえていました。このシーンの、千早ちゃんの心情については、本当にいろんな解釈というか、想像が出来るように描かれていると思います。太一くんの「だんだん薄れていく」という言葉をどう捉えるか、なんですが、もちろん、焦ったり、寂しく感じたり、悲しく感じたり…そういうマイナス方向のベクトルで捉えてもおかしくない言い回しだな、と思います。ただ、私と妹の間では、下記↓のような話になっています。「この時の千早ちゃんにとっては、26巻で太一くんの言ってくれた「好き」が、『まだある』という一縷の望みの提示だろう」千早ちゃんの中で、東西戦で、「太一くんと『かるた』で繋がること」を諦めて、ここに来て初めて、26巻で太一くんの言ってくれた「好き」が、太一くんと一緒に居られる未来を開く「鍵」になったのかな、と受け取っています。・2巻・第八首と最終回千早ちゃんと『かるた』と太一くんの三角関係が、最終的にどこに行き着いたのか、分かりやすく語れるのが、2巻・第八首と最終回との比較かな、と思っています。2巻・第八首…千早ちゃんが大会で優勝して、A級になって、外で観戦していた太一くんに抱きつきに行って、「やろう かるたやろう太一 やろう!」と叫ぶシーン。 私は、このシーンで「ちはやふる」という作品が、「かるたでクイーンになる女の子」と「かるたをやるべきではない男の子」のラブストーリーになったんだろうな、と認識しています。千早ちゃんが「かるた」と言いながら、ガッツリそれ以外のものも求めていますし、また反面、太一くんは想像していたよりずっと「かるたを頑張りたい」と言ってくるので、…これは面白い!となったのかな、と。この、2巻のシーンと、最終回の千早ちゃんの告白シーンは、被せてある…というか、千早ちゃんの中で基本的に同じ思考回路で動いているシーンだと思っています。2巻:「大会で優勝してA級になったら」⇒「一緒にかるた部作ってよ」最終回:「クイーン戦を独りで闘い抜けたら(あるいは「勝ったら」)」⇒「・・・」「・・・」の中身は、やっぱり「一緒に居たいです」かなぁ、と思っています。千早ちゃんは、クイーン戦終了後、太一くんを探して見つけて、階段で一度、2巻同様、勢いのまま告白しようとしてたんじゃないかな、と思っています。ただ、すぐに新くんも来て、太一くんが新くんに宣戦布告(「かるた続ける」宣言)をしたので、なんか「チームちはやふる」のイイ感じのシーンになっちゃって、結局クイーン戦の日には言えず、速攻で受験本番に突入し、ずるずると卒業式まで来て、おそらく千早ちゃんは「受験が終わったら」と思っていたのではないかな、と受け取っています。(ただ、それでもやっぱり怖くなって「大学に入って生活が落ち着いたら」とか言い出してずるずると引きずりかねなかったな、とも思いますが…)結局、卒業式後、太一くんが京都大学を受験していることを知り、本気で離れるための決定打を打たれ、「大丈夫、(千早ちゃんの望むように)かるたがあるからまた会えるよ」と、300%千早ちゃんの為を思った、優し過ぎる別離の言葉を差し出されたところで、観念して告白しました。すべてを「かるた」に集約して求めようとした2巻と、「かるた」を切り離して、「好き」だけを伝えた最終回。比較をするとよく分かりますが、千早ちゃんは2巻で、太一くんに「かるた」を求めるのは、あんなに強引に抱きつきに行けていたのに、最終回では、恐る恐る手を握って、顔を伏せながらの告白でした。最終回で、太一くんの「かるたがあるからまた会えるよ」という言葉に、千早ちゃんが「それではダメ」だから「好き」を被せてきた会話の流れからも、見事にその差が概念的に定義されています。千早ちゃんと太一くんが、ここまで明確に「かるた」をちゃんと切り分けて整理しないと、未来に向かえなかったのは、やっぱり根本的には、「太一くんが『かるたをやるべきじゃない子』だから」だろうな、と受け取っています。少なくとも、太一くんがやる「かるた」は、太一くん自身が、好きで楽しくてやるものであるべきで、千早ちゃんが求めるものではない。 「かるた」を介さなくても、もっと自然な形で、この先を「一緒に生きていく」ことは、出来ます。ただ、それを切り出すには、千早ちゃんに自信と大きな覚悟が必要だったと思います。3年生の太一くんの居ない高校選手権で、瑞沢かるた部の中で、一生懸命、太一君の代わりを務めようと振舞ったり、クイーン戦に向かう中で、人脈を頼りに、所属ホーム(瑞沢かるた部・白波会)とは別団体に独り乗り込んでいったり、元クイーンの方たちとの繋がりを強化して、様々な方の視点を一生懸命吸収したり、また、大人たち・業界全体・それ以上の目線が集まる中でやりたい・やりたくないという感情を超えて、「自分の役割」という観点で、自分にできる最善と考えられうる立ち振る舞いを一生懸命演ったり…。1年間をかけて、千早ちゃんが、慣れない組織体や業界・社会の中で、1個1個「出来る」ことを頑張って増やして、1個1個「自信」を作って、受験勉強と同時並行でクイーン戦まで戦い抜いて、その上でようやくたどり着いた、最終回の「好き だ よ」です。これは本当に、人生レベルの覚悟持って伝えた言葉、…プロポーズの次元の言葉だと受け取っています。告白シーンは、何度読み直しても、本当に概念的で、素晴らしいです。部室・畳の上というシチュエーション。「ここ」で2人で最高のかるた部を始めたんだ、太一くんの居る「ここ」を永遠にしたいんだ、一緒に生きて行きたいんだ、という千早ちゃんの思いも本当によく伝わって来ますし、伝える・伝わると、受け取る・受け取ったことが相手に伝わる が、言葉のみならず、手と目線の演技の全部で見事に表現されていて…漫画表現の神秘性を感じる超名シーンだと思っています。千早ちゃんは本当に怖かったけど、ちゃんと伝えて…そしたら太一くんが、千早ちゃんがそこまでの重みを持って言ってくれた言葉だと、きちんと受け取ってくれました。「好き」という言葉まで洗練しないと、たぶんダメだったろうと思います。 「一緒にかるたしよう」じゃ、もちろんダメだし、「一緒に居たいです」でも受け取ってもらえたか分かりません。「一緒に居られない」時が来るので。太一くんは、そもそも(受験に合格すれば)4月からは京都ですし、今後海外留学も視野に入れているような発言もしていました。「この先、千早ちゃんとかるたを優先してあげられない状況が来る」ことが、太一くんにとっては「越える気のない」大きなハードルで、だから自分から、千早ちゃんに未来を求めることを絶対にしなかったんだと思っています。このハードルを越える方法は次の2つを同時に満たすこと。①千早ちゃんから、「(太一くんが)大好きだから、どんな状況でも頑張れるよ。それが幸せだよ」って、覚悟を持ってちゃんと伝えることと、更に、②太一くんが、(自分と居ても)千早ちゃんがちゃんと幸せになれると信じられることです。自分の助けなく、クイーン戦まで闘い抜いた千早ちゃんが、部室で、あの表情で言ってくれた「好き」だったから、太一くんにもちゃんと伝わったんだろうな、と思います。寸分の狂いなく「これ」が欲しかった!!って、太一くんが喜んでくれたので…千早ちゃん、伝えて良かったねぇ…///って本当に思えるラストシーンでした。・まとめ同じようなことをぐるぐる語り散らかしてきました。本当に沼が深かった…というか、魔窟でした。特に「真島太一」…。完結した今こそ、この作品は本当に是非!頭から完結まで、まじまじと読み直すべき作品だと思います。もちろん、かるた描写、スポ根描写も素晴らしいですし、様々な立場の方が「人生」に向き合っていく姿を、かるたという光で照らしながら立体的に魅せて行く…多角的で、どのキャラクターの描写もとにかく深くて、語っても語っても、語りつくせない作品だな、と思っています。ただ、作品を串刺す軸として、その7~9記事で語りまくった『ラブストーリー』という観点は、絶対に外せない、本作最大の魅力だと思っています。末次先生の本領は、やはりここ、『ラブストーリーテラー』『構成作家』である点だと思います。ひたすら「かるた」の練習・試合描写を延々と描き続け、最後、千早ちゃんの隠していた恋心を一気に鮮やかにすることで、そこまでの描写を一気に「恋」の物語として打ち付ける。情景を詠んでいるように見せて、これは本当は「真っ赤な恋の歌」なんだよ、という「ちはやふる」の和歌の解釈の面白さが、物語の構成として体現されていたんだろうな、と受け取っています。至宝です!!面白かった!by姉