Netflixオリジナルドラマ『御手洗家、炎上する』感想
鑑賞しました!Netflixオリジナルドラマ『御手洗家、炎上する』(2023年、全8話、平川雄一朗・神徳幸治監督)今でも覚えている 燃えさかる炎の前で土下座する 母の姿を代々病院を経営する名家・御手洗家(みたらいけ)。この家の長女・杏子(あんず)は、12歳の時に両親の離婚により御手洗家を離れた。彼女の母親による火の不始末が原因で、家が全焼するという不幸な出来事があったからだ。しかし彼女は、外部の人間による放火の可能性を疑っていた。火事から13年後、杏子は偽名を名乗り、再建された御手洗家の門をたたいた。家事代行として。出迎えた御手洗家の後妻・御手洗真希子(まきこ)は、杏子の母のかつてのママ友だった。杏子の目的はひとつ。この女によって奪われた母の人生を、全て取り戻すため-・・・!嫉妬・羨望・野心・憎悪・・・・・・全てが絡まり、もつれ合う、本格ホームサスペンス!連載時より追いかけていた講談社Kissの漫画作品・『御手洗家、炎上する』がNetflixでドラマ化されました!予告編→こちら。*以下、結末についてまでのネタバレあり感想です。未鑑賞の方はお気をつけください!*原作に関しては、妹が3巻発売時に電子の立ち読みで見つけて、一気に既刊コミックを買い揃えました。私&妹の間では、絶妙な人物配置と生命力のあるキャラクター描写、漫画作品離れした話回し(脚本力)、力強い漫画画面と、読み応えという点で絶大な信頼感の置ける作品として、大人気だったのですが、世間的には…最新刊の単行本が、発売日に田舎の本屋では買えないかもしれない、と毎回心配する…くらいの知名度でした。(もちろん、コアなファンの方は大勢ついていたと思いますが。)こちらが、Netflix…世界市場を念頭に置いている、巨大配信サービス主体のオリジナルドラマとして実写化されるとのことで、素直に「嬉しいなぁ!」と思っています。スタッフ様・キャスト様や、公開される予告映像を見ると非常に誠意を持って、関係者たちがノリノリで製作されたことが伝わって来まして、これは面白そうだな!と、初めてNetflixを契約して鑑賞しました。鑑賞してみて、なんていうか…ちゃんとした作りで…「ちゃんとした」…って、ものすごく普通に、「原作の良さ」に惚れこんだ方(プロデューサーの方とか)が、きちんとその良さを形に出来るキャスティングが出来て、監督・演出家さまやスタッフ様たちや、キャスト様達が、「良いもの作ってる!」と思いながら作れてる…という、ものすごく普通のことを言っているだけなんですけど…。日本のTV局製作の地上波ドラマとか…もう、なんていうか…企画とキャスティング観るだけで、ひしひしと伝わる…隠す気もない、業界内・外パワーバランスへの妥協と忖度と、作り手の「言われた通りやったよ、これでいいんでしょ」というへし折った心の残骸の寄せ集めみたいな…見てるだけでこっちの心が折れるから勘弁してくれ、と思うというか…。今回のドラマ作品からは、そういった負のオーラみたいなのを感じないので、とても嬉しいというか…。(もちろん、地上波TVもそんなのばっかりじゃないのは分かってるんですが…ちょっと私にはもう、今の日本の民放TVを観れるほどの鋼のメンタルはありません。)以下、諸々&各キャラクター&俳優様の印象深かったところについて、簡単に。■脚本基本的には、かなり原作準拠な作りでした。全8冊のコミックスが、全8話にコンパクトにまとめられていました。各話の区切りも、しっくりくるところで見やすく区切られていたと思います。特に最終話の辺りは、原作もスピーディに畳むことを意識した作りになっていましたが、それよりも更にコンパクトさを感じました。かなり意識的にだと思いますが、13年前の真紀子さんたち3人親子の生活感を推し量る描写…真紀子さんのパートの描写、希一さんが部活を諦めたり、あまりものを突っ込んだひじきのカレーだったり…あとは、御手洗家が盗難を疑って、警察に届け出ようとしているかもしれないと噂話を聞くシーンですね。そのあたりの描写は省かれていました。個人的には、13年前の火事が起こるに至る背景として説得力が増す、とても好きな描写たちだったのですが、この辺りは、コンパクトさ重視によるものなのか、世界配信を意識しており、シングルマザー描写が日本国内でしか通じづらい点への配慮なのかもしれないな、と感じました。(ただそういった「裕福な豊かさ・貧困の苦しさ」は、実写ドラマでは舞台や画面に散りばめられた小道具によって、多くを語らずも説得力が出るようになっていたと思います。)■村田 杏子(永野芽郁さん)可愛らしい杏子ちゃんでした…!こんな娘が、家の中でメイドさんみたいなエプロン付けてぴょんぴょんしてたら、長年の引き籠りも、そりゃふらふらと部屋から出て来るわ!と思いました。(↑希一さん目線)とにかく可愛いし、原作より泣くシーンが印象的でした。だからこそ、7話冒頭、逃げる真紀子さんを追いかけるシーンの迫力が、ギャップがあって最高でした!■御手洗真希子(鈴木京香さん)作品の魅力の中核を担うキャラクターです。…最高でした!この鈴木京香さんを拝み倒せるのであれば、それだけでわざわざNetflix契約したかいがあるってもんです!本作、基本的に釣り文句としては「復讐劇」となっていますが、その対象者が鈴木京香さんの時点で、単なるめちゃくちゃなスカッとするような復讐劇なわけないので。真希子さんの、虚栄の奥にある愛情と不安定さ、必死さが常に伝わってきました。原作ファンとして、大満足でした!■御手洗希一(工藤阿須加さん)本作、皆さんナイスキャスティングではあるのですが、特にこの希一さんは、原作からそのまま飛び出て来たかのような素晴らしさでした。元々、非常に爽やかな役どころの多い俳優様なのでしょうか?実写作品をほとんど見ない人間なので、存じ上げなかったのですが…だとしたらもう、工藤阿須加さんご本人の演技力としか言いようがないと思います。10年部屋に引き籠り、人を窺うギョロっとした目つきと、最終話の劇的ビフォーアフターっぷり(←もともと社交的な優等生)が凄かったです。■御手洗真二(中川大志さん)元々原作ファンなので、出て来る度にじっと見てしまいました。原作よりも「強い子・しっかり者」のイメージです。最終回を迎える以前より、この子なりに贖罪に向けた確固たる信念があって医師を目指して、ここまで努力しているんだ、ということがとても伝わって来ていましたので。真二くんの一環した態度に、その説得力があるからこそ、最終話のコンパクトな締めだったと思いますし、真二くんの向かう先に、御手洗家の未来への希望を見出せるような、憎悪を希望に転換させるようなパワーがあったと思います。■村田柚子(恒松祐里さん)お名前をどこかで見たことがあるな~と思っていましたが、映画『凪待ち』の娘さん役の女優さんだったんですね!印象が違うので、気づかなかった。原作を読んでいた時から、とにかくこの柚子ちゃんの設定が素晴らしいと思っていました。すごく好きなキャラクターです。「復讐劇」という謳い文句からは想像も出来ないような、隙だらけで、基本的に人を信じていたい「良い子」です。作中では、お父さんに裏切られたり、真希子さんに出し抜かれて追い詰められたり…可哀そうなシーンも多いのですが、ただやっぱり、この子が居るから、この作品が「憎悪だけの復讐劇」にならない。この子が居なかったら、杏子ちゃんもお母さんが病気になってしまった時点で折れてしまっていたと思いますし、もっと憎悪の感情で動く主人公になっていたと思います。またラストの帰結についても、この子があまりにも「憎悪・復讐」と相入れない存在だからこそ、今後御手洗の家に戻れるとしたら、この子だけだな、と感じさせられるのだと思います。(この人物配置・話回しで、それをきちんと感じさせられるのは、凄いことだと思っています。)■御手洗治(及川光博)及川光博さんのキャスティングが素晴らしかったです!作中一貫して、家族がどうなったとしても、そこに責任は持ちたくないクズでしたが、ただ、病院の仕事は命がけでやってる方なんだろうな、というのは、今回のドラマで凄く伝わって来ました。御手洗の病院は、この方の命ですから。他の家族は全員、誰一人残らなかったとしても、最後、「病院運営」に必死にしがみつこうとしてくれる真二くんだけは、「家族」という枠を超え、この人と繋がっていけるんじゃないかな、と感じられました。■村田皐月 (吉瀬美智子さん)なんか…お母さん、かなり「強かった」ですね…!全然、真希子さんと素で渡り合えそうでしたよ…。いやぁ~、俳優様お一人お一人の力強い演技!大変見応えがありました!!こちらのドラマ、7/13から公開されておりますが、本当に好評のようで、Netflixの国内・外ランキングもまだかなり上位に居るみたいです。原作大好き民としては、作品の羽ばたきっぷりが嬉しい限りです。興味のある方は、是非!by姉