「殺人者の顔」ヘニング・マンケル著 読書メモ
「殺人者の顔」ヘニング・マンケル著柳沢由実子=訳 創元推理文庫 20010126【中古】 殺人者の顔 創元推理文庫/ヘニング・マンケル(著者),柳沢由実子(訳者) 【中古】afb■あらすじ雪の予感がする一月八日の早朝、小さな村から異変を告げる急報がもたらされた。駆けつけた刑事たちを待っていたのは、凄惨な光景だった。被害者のうち、無残な傷を負って男は死亡、女も「外国の」と言い残して息を引き取る。片隅で静かに暮らしていた老夫婦を、誰がかくも残虐に殺害したのか。ヴァランダー刑事を始め、人間味豊かなイースタ署の面々が必死の捜査を展開する。曙光が見えるのは果たしていつ・・・・・・?マルティン・ベック・シリーズの開始から四半世紀――スウェーデン警察小説に新たな歴史を刻む名シリーズの幕があがる!■感想初めてクルト・ヴァランダーのTVドラマシリーズを見たのは、7~8年ほど前だろうか。スウェーデンで創られた1話2時間もので、だぶだぶの体で常に感情に揺さぶられているクルト・ヴァランダーだった。3作品ほど観た記憶があり、糖尿病に苦しみ、女性への欲望に苦しみ父親・離婚した妻・娘との交流に苦しむ刑事の話しで、事件を解決する事より私生活が中心になっているドラマだった。推理モノが好きな私は25点の感想だった。その次の年だったか、今度は英国BBC放送で創られた「殺人者の顔」を観た。そこには私生活で窮地に陥り苦しみもがきながらも、事件を緻密に調べあげて真実を絞り出して行く誠実な刑事ヴァランダーがいた。真っ直ぐに向かうあまりにいつも怪我だらけで痛みにうめきながらも事件解決だけに集中する所が非常に好感が持て、100点だった。正直、スウェーデンのヴァランダーとは別人のようだった。その後、BBCで観た続編はどれも秀逸だった。少しずつ事実をつなぎ合わせ、私生活での苦しみの中、命がけで事件に向かう。いつも満身創痍。苦しみながら、だけど諦めない。ヴァランダーを応援せずにはいられないのだった。それで今頃になって原作のヴァランダーはどんな人かと思い、今年の3月に読んだのが「目くらましの道」上下だった。(「目くらましの道」上・下)今回はクルト・ヴァランダーシリーズ始まりの「殺人者の顔」が塩釜図書館になかったので、取り寄せで読ませていただいた。実はこの少し前に違う人の推理モノを読んでいたのだが、面白そうなのに全然進まなくて進まなくて困っていた。もう私は推理小説は読めないのかな?と思うほど、一日1ページしか進まないのだった。所がリクエストを忘れた頃に届いたヘニング・マンケルの「殺人者の顔」は、ちょっと覗いたとたんに惹き込まれ、どんどんどんどん読んでしまった!それはそれは分かりやすい文章と流れで、ヴァランダーの持つ情報が何と何で、それを繋いでこう行動してこう思い、それからこのように推理して行き、間違いを認めて立ち返り、また真実を探るために書類を漁り・・・。畳み掛けるような展開に、自分も一緒に事件を解いている状態になるんである!他の刑事達の頑張りもすごく解るし、家庭の事や健康の心配も自分の事のように感じるんである!そのように、時間軸に沿って書いてあるから分かりやすいのかもしれないし、ほぼ、ヴァランダーの視点だけで書いてあるから情報も感情もヴァランダーに沿って考え集中して読めるから面白いのかもしれない。登場人物が沢山いて、その一人一人の視点で書いてある小説は多角的に読み取る事が出来て広がりがあるし深く読み解く事も出来るけれど、転換転換が続くと誰が何をしていたっけ?と状況把握に時間が掛かるので集中して読むのには辛いんだなと、今頃気付いた次第。ヘニング・マンケルの小説は私にとってとても読みやすい!一緒に推理出来て脳が喜ぶ!これだな( ̄ー ̄)VBBCで創られた「殺人者の顔」は数回観たのでストーリーは知っているのに、ヴァランダーの細かい視点や考えが分かって小説は小説で非常に理解が深まって面白かった。ドラマでは読み取れていない所が沢山あったんだなと事情がよ~く理解できた。太ってしまった不健康な理由も、孤独に苦しむ理由も、非常に個性的で頑固な父親との交流も、ようやく今頃腑に落ちた。でも私の中の、誠実でデリケートで優しくて不器用で真摯で、惑いの中で生きている刑事なのは変わらない。とても素晴らしい一作目だった。↓こちらはBBCのドラマ刑事ヴァランダー シーズン2 第1話 殺人者の顔【動画配信】