「少年の荒野」ジェレマイア・ヒーリイ著 感想メモ
「少年の荒野」ジェレマイヤ・ヒーリイ著中川剛=訳 早川書房 昭和61年10月15日出版(西暦1986年)【中古】HPBミステリ1478 少年の荒野表紙はこれです↑■あらすじ■失踪人捜査に限っていえば、一匹狼の私立探偵より大きな探偵社を使うほうがはるかにいい。あらゆる情報を収集し、組織的に捜索するのが一番の早道だからだ。ボストン郊外の町ミードの名家キニントン家の一人息子であるスティーヴンの場合も、当然一流の探偵社が捜索にあたった。だが失踪から二週間、手がかりは何ひとつ得られなかった。私立探偵ジョン・カディに、業を煮やしたスティーヴンの祖母エリノアから依頼が持ちこまれたのは、そんな時だった。依頼の仲介をしたスティーヴンの担任教師ヴァレリーの話では、少年はきわめて高い知能の持ち主だという。四年前、母親が酔払い運転で川に落ちて死んだ時、精神に異常をきたし一年間を棒にふったが、いまは十四歳という年齢では考えられない知識を持っていた。その彼が、突然アウトドアの装備を携えて姿を消したのだ。不思議なのは、父親のキニントン判事の態度だった。町を牛耳る権力者である判事は、息子の捜索にまるで熱意を示していなかった。それどころか、彼の腹心の部下ブレイキーは、カディに捜査をやめるよう脅しさえした。判事の真意は?少年を駆り立てたものの正体は…?練りに練った緻密なプロット、軽快な筆致、やさしくもタフなヒーロー像―スペンサーに敢然と挑むボストンの新・私立探偵ジョン・カディ、注目のデビュー作!■感想■私立探偵ジョン・カディ第一弾でジェレマイア・ヒーリイのデビュー作。ものすごく久々に推理小説を読んだ。ずっと医学関係の本ばかり読んでいたし、年末と5月に胃腸を悪くして死にそうになり、入院もしたしで読書は遠いものだった。秘策でようやく回復しつつあり、読書が出来るようになったヽ(=´▽`=)ノ昭和51年というと、子育てで全てを切り離して生きていた頃。ジェレマイア・ヒーリイは初めて読んだ。文章はひねりが入りつつも読みやすく、主人公のジョン・カディの人柄も好みだった。カディが兵役後に長年努めていた保険会社の賠償調査室長を辞めて探偵になった理由、独り身の理由がさらりと書いてあって、カディの信念が見えて好感が上がった。殆どヒントのない状態からの少年の探索はとても好みだった。コツコツとほころびを探して行く様子が、私の物事の構築の仕方と似ていて分かりやすかった。ただ、ラストがあまりにも畳み掛けるように進み、共感する力が弱ってしまった。まるで静かな田園風景でのスローライフが急に早回しになった映画みたいで、ラストをもう少し丁寧に書いて欲しかったなあ。そしたら意外な状況を、もっと理解できたかもしれない。ここまで書いて、何が足りなかったのかが分かった気がした。行方不明の少年スティーヴンの具体的な情報が少なかったので、感情移入が薄弱になったのかもしれない。多分。キムとミズ・ムーアの発言でようやくスティーヴンの肉付きが見えて来たので、もう少しスティーヴンが見えたら良かった。カディシリーズ2作目が楽しみになって来た。現代に近づくほど、この社会を反映して悲惨で複雑でむごい内容になって来た推理小説。この時期のものをこれから発掘できる楽しみが見つかった!