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テーマ:本のある暮らし(3312)
カテゴリ:本
●読んだ本●
「暗いところで待ち合わせ」乙一著 幻冬舎文庫 ■あらすじ 視力をなくし、独り静かに暮らすミチル。 職場の人間関係に悩むアキヒロ。 駅のホームで起きた殺人事件が、 寂しい二人を引き合わせた。 犯人として追われるアキヒロは、 ミチルの家へ逃げ込み、 今の隅にうずくまる。 他人の気配に怯えるミチルは、 身を守るため、 知らない振りをしようと決め、 奇妙な同棲生活が始まった――。 書き下ろし小説。 ■感想 事故によって視力を失い 父まで突然失って 独りになったミチルの 孤独と悲しみが じわじわと心に染み込んだ。 傷付く事が恐いので 家に引きこもり 植物のように転がって一日を過ごし、 いつかひっそりと 寿命が尽きるのを待っているミチルの生き方は もしかしたら 私の生き様も似ているかもしれないと思った。 受身で何となく生きて 何となく一日を過ごして 死ぬのを待っているだけの 希望の無いミチルの生き方が、 悲しくて胸を貫いた。 警察に追われるアキヒロもまた 孤独で人と関わる事を拒絶して生きて来た。 じっと座り込んで 密かに生きながらえるアキヒロ。 孤独な二人が居場所を求めて 希望を見出して行く様に 鼻がつんと痛くなり 涙がこみ上げて来た。 ただの有り得ない設定の 不気味な小説かと思って読み始めたのに 二人のやるせない孤独感と 逃げてばかりの弱さと 誠実で真面目な所と 精一杯な生き方が胸にじんと来た。 娘に薦められて読んだのだが 若い人がこのような小説を書き 若い人がこのような小説を読むのは とても大切な出会いだと思った。 若くない私にも 大切な世界だと思った。 娘曰く 「これはね、 優しさの詰まった小説なんだよ」 本当に、 優しさの詰まった小説だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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