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テーマ:本のある暮らし(3312)
カテゴリ:本
●読んだ本●
「心やさしく」 ロバート・コーミア著 真野明裕=訳 徳間書店 ■あらすじ(抜粋) 自分の居場所が見つけられず、 やさしくしてくれる相手を求めて 家出を繰り返していた十五歳の少女ローリは、 ある日、 両親を殺した十八歳の少年エリックが釈放された、 というニュースを見て、 彼に魅了されてしまう。 ローリは子どもの頃、 一度だけエリックに会ったことがあった。 そのときの彼は、 やさしくて頼もしかった。 親を殺したのも、 虐待を受けたせいだというし・・・。 彼に会いたいと、 あとを追い始めるローリ。 エリックもまた、 切実に〈やさしさ〉を求めていた。 だが、 彼の求め方はひどく歪んだものだった。 刑事は彼を「怪物」と呼んだ。 今、 表面上罪をつぐない終えたエリックは、 次の「計画」 に着手しようとしていた・・・。 二人が出会い、 ともに旅していく先に、 待っているのは絶望か、 救いか・・・? アメリカの鬼才コーミアが、 十代が抱く「だれかとつながりたい」という切実な願いと、 心の闇とを描き、 思いがけないラストまで、 圧倒的な迫力で一気に読ませる話題作。 ■感想(ネタバレ有り) コーミアの作品は、 確か「チョコレート・ウォー」「ぼくが死んだ朝」 を読んだ記憶があって、 ロバート・コーミアの名前は ひどく強く心に染み込んでいる。 なぜかと言うと 多分、 作品は優しい言葉で書いてあるのに 内容が真摯で厳しくて 衝撃的な思いが いつまでも残ったからだと思う。 私は普通の小説の読書から10年間離れていて 再び図書館通いを始めた時、 赤ちゃんが 離乳食から固形食に変わって行くように、 まずは児童書の中学年用の 愛や勇気を貰えるものから読み始め、 あらかた読み尽くしてから ヤングアダルトのコーナーに行って 冒険物やファンタジーを読んだ。 そこを沢山読んでから 今度は現実を見据えた内容の ヤングアダルトを読んだ。 シャロン・クリーチの 「めぐりめぐる月」を読んだ時には 作者の優しい視線と切ない思いと 健気な少女サラマンカの気持ちに 心を射抜かれてしまって アメリカやヨーロッパの十代の小説に すっかりはまり込んだのだが、 その最後の時期に読んだのが ロバート・コーミアで 厳しい内容を読み終える事が出来たので、 そこから 大人の小説に移ることが出来た。 コーミアは大人が読んで欲しい ヤングアダルトの作家の一人だと思う。 最近は犯罪を起こす人の 育成環境などを調べて行く マインド中心の小説やアメリカドラマや ドキュメントも読んでいるので 人の心の闇が どうやって作り上げられ行くのか、 犯罪を起こすのは何故なのかを よく考えるようになった。 この小説では 心の大きな穴を埋めるために ローリは 自分だけのこだわりを埋めるために行動し、 エリックは優しい気持ちになるために 人を殺して行くのだが、 エリックがどうして殺人を起こす時に 優しい気持ちになり それを求めずにいられないのか なかなか解らなかった。 ようやくエリックの傷を知った時、 もっとそこを丁寧に書いて欲しいと思った。 犯罪を起こさずにいられない人の その人の傷や心の大きな穴を 拡大して欲しいと思った。 異常な精神状態でいる少年の気持ちを 丁寧に書いたのだから 理由も もっと書けば良かったのにと思った。 そして希望を持ち始めたラストの やはりコーミアらしい厳しい結末。 訳者あとがきを読んでようやく合点が行った あれこれ。 真野明裕さんのあとがきは 素晴らしかった。 エリックは救われたのかもしれないですね、 真野さん。 この本は しばらく前に読んでいたのだが 感想を書けなかった。 この本を読んで 私は何を貰ったのだろうか? 受け取ったのだろうか? 私には解らなくて 感想をずっと書けなかった。 だからもう感想は複雑で 悲しい思いだけです。 と言うもので良いかなと思って ようやく手を付けられた。 みんな、 心に穴があって それを埋めるために 無意識に色んな事をしているんだと思う。 暗くて深くて 濃い闇の穴を持っている人は それだけ大きい重い事で 穴を埋めるために 凄まじい事を 穴に放り込むんだろうなぁと思う。 それでも満たされずに 渇望に悩まされるんだろうなぁ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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