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テーマ:本のある暮らし(3315)
カテゴリ:本
●読んだ本●
「影」カーリン・アルヴテーゲン著 柳沢由実子=訳 小学館文庫
■あらすじ■ 扉後ろから抜粋 ノーベル賞作家である父アクセル・ラグナーフェルトは、 脳疾患で全身麻痺となり施設に入っている。 息子ヤン=エリックは その威光で尊敬を集めて生活しているが、 家庭は崩壊し 浮気三昧の日々だった。 物語は、 高齢で死んだ老女の身元確認から始まる。 彼女はかつて ラグナーフェルト家で家政婦をしていた。 葬儀のために 探し物をすることになったヤン=エリックは、 事故死と聞かされてきた妹の死因に不審を抱く。 やがて彼は、 高潔なはずの父が 何かをひた隠しにしていることを知る・・・・・。 人は、 ここまで堕ちることができるのか―― 生きることの絶望と希望に迫る問題作。 ■感想■ 実生活で 問題を抱えて生きている私にとって この物語は現実の苦さを 益々刷り込むものだった。 だからどうだ。 何がそんなに問題なのだと どこかに反発心を感じながら読んでいた。 人は普通に付き合っていては 内側はうかがい知れないものだ。 どの登場人物も自分を欺いているから不幸で 行き詰まりの人生が丁寧に書かれている。 何をそんなに苦しんでいるのかと いぶかしく思いながら読んでいると 最後に理由が解るのだ。 自分を欺いている人は いつか他人を巻き込み 苦しみや悲しさを引き込んで 嘘の上塗りの人生が増殖して行く。 ヨーロッパの、北欧の国々に 未だに濃い影を投げかけている ナチスドイツの人種差別と大殺戮の「影」。 苦しい読書だったが、 つまるところ人はいかに自分を欺きつつ生きているのか、を 改めて強く認識したのだった。 5年前の私には理解できない所が 沢山あったのかもしれない。 その点で私は 5年前より自分を知るようになったのだろうと思う。 日本人は自分を欺いている事にさえ 気付きたくないように見える。 自分に騙されて生きていたい国民のように 見える。 だから「かわいい」文化 「幼児性」を重視する文化 になっているのではないのかなと思う。 現在の困窮や閉塞感を無視して 可愛いい楽しいで 誤魔化している文化のように見える。 なんて 私の思考はどんどん広がって行くのだが、 いつもはブログの感想には書かない。 いつもは書かない事を書きたくなる そんな一冊だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 30, 2010 03:16:52 AM
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