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November 3, 2021
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テーマ:読書メモ(89)
カテゴリ:
『嘲笑う闇夜』ビル・プロンジーニ&バリー・N・マルツバーグ著
―THE RUNNING OF BEASTS―
内田昌之=訳 文春文庫 2002年5月10日


嘲笑う闇夜 文藝春秋 ビル・プロンジ-ニ / 文春文庫【中古】afb




■あらすじ
田舎町で凶行を重ねる”切り裂き魔”犯人には
犯行時の記憶がなく、
自分が殺人鬼だと自覚していないという。
恐怖に覆われた町で戦慄する男たちがいた――
切り裂き魔はおれではないのか?
疑心暗鬼と狂喜が爆走する中で展開される、
反則ぎりぎり、極限のフーダニット。
鬼才コンビの伝説的超絶パルプ・サスペンス、登場。
解説・折原一

■感想
これは1976年に発表された、
プロンジーニとマルツバーグの共著を、
26年後の2002年にようやく和訳出版された
サイコ・サスペンス。

2021年の今からみると45年前の作品だ。
45年前にこんな作品があったんだと驚いた。

私は大昔にプロンジーニの初期作品を読んだ気がする。
最近、過去の事すら消えてしまうので
『誘拐』『失踪』『殺意』と言った題名に
記憶がある程度なんだなぁ。
そして当時私は全く反応しなかったので、
以来プロンジーニはスルーしていたのだった。

図書館でたまたま見つけた表紙に興味を惹かれて
読んでみたら、
複数人の視点が次々に出てくる形で、
なかなか面白かった。

小さな田舎町で女性が次々と殺されて行く中で、
ニューヨークからやって来た精神科医が放った
「切り裂き魔は自分が犯人だと知らない」説は
住民に呪いのように浸み込んで、
不安と恐怖を倍増して行く。
その様子が、一人一人の視点に
じわじわと影響を及ぼしていくのが伝わる。

人間は初めて出会った情報が浸透してしまうそうで、
最近のコロナ騒動でも何が真実かに関わらず、
やたらとテレビで取り上げるものしか伝わっていない怖さを実感しているので
人間の危うさを改めて考えた。

45年も前に、情報・報道の危険性を認識していたなんてね。
(いや、私が長年うかつだっただけだけど)
ここに出てくる人たちは不安感に苛まれ
自分を信じられなくなって行く、
もしくは思い込む、
もしくは思い込もうとしている。

最後には畳みかけるような疾走感に煽られて、
何が起きているのかしっかり読み込みもせずに
走り抜けてしまった。

人間の不安定な面を強調してあるためか、
好きな登場人物はいなかったなぁ。
病んでる人ばっかりで、誰もかれもが怪しくて、
思い込みだけが書かれているのか
事実としての情報なのか分からないものだから、
途中からは誰の事も遠い視点で見るようになった。

退屈じゃなかったよ。
途中までは面白かったよ。
後半は不安感が乗り移って怖かったよ。
だから著者の勝ち!って感じですかね。
人間は弱くて脆いから危ないよって、
希望は感じられない読後感だった。
もうプロンジーニはいいかなぁ。

ほとんどの翻訳ミステリは訳者があとがきを書く。
これは作家の折原一氏が解説を書いていて、
編集者の意欲が感じられた。
(多分、折原一の作品は読んだことがない)
表紙も邦題も良かった。



―2021年9月18日読了―





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Last updated  November 3, 2021 03:50:31 PM
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