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カテゴリ:本
『栗色の髪の保安官』P・M・カールスン著 ―GRAVESTONE― 1994年3月31日発行 延原泰子=訳 ハヤカワミステリ 【中古】 栗色の髪の保安官 / P.M. カールスン, P.M. Carlson, 延原 泰子 / 早川書房 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】 ■あらすじ 保安官助手になって五年も経つというのに、 いまだにマーティが任されるのは小さな事件ばかり。 今回もそうだった。 郊外の丘陵で男性の惨殺体を発見したのはマーティだというのに、 彼女が命じられたのは 八年も前に家出した名家の娘を捜しだすことだった。 が、やがてその娘の白骨死体が丘陵近くの洞窟で見つかり、 二つの事件は意外な結びつきを見せはじめる。 持ち前の勇気と正義感で事件に挑む保安官マーティ、 さっそうと登場。 ■感想 (まとまりのない感想) 読みやすくて面白かった。 『栗色の髪の保安官』とは ずいぶん甘い感覚の題名だなと思って手に取ると、 爽やかなカバーに吹き渡る風と伸びやかな自然と 緊張感と孤独感が伝わって来たので借りてみた。 (原題の「GRAVESTONE」は墓石もしくは墓碑) 主人公のマーティ・ホプキンズは 栗色の髪の女性の保安官であり、 9歳の女の子のママで、 夢と憧れを追い求める夫の妻でもある。 堅実で真面目で、観察力と洞察力の優れたマーティは 生活のために保安官をしているが、とても有能。 生活と夫と娘と仕事と自分の間で 頑張って働いている様がとても好感が持てた。 すぐにマーティが好きになって応援を始めたため、 地道な捜査活動も私生活のドタバタも面白く読めた。 久々のヒット作品に大喜びしながら読んだ。 登場人物もそれぞれに癖があって面白く、 人間と生き様が垣間見れて、 初P・M・カールスンを大いに楽しんだ。 インディアナ州の片田舎の女性保安官ものは 初めてだと思う。 田舎のものでも、おおよそ刑事が主人公なので 保安官ものは珍しい。 だから女性保安官は初めてだと思う。 マーティの夫ブラッドはニューヨークの放送業界で名を成したくて 現実よりも夢の力で突き進むため、 マーティがそれに合わせて生きて来た。 しかもブラッドは魅力的でカリスマ性があり、 マーティはとても愛しているのだった。 女性としての気持ちと、 保安官としての強い根っこのような生きがいがせめぎ合う所も 自然な感情として書いてある。 むごたらしい殺人事件や昔の失踪事件に心を砕いて、 コツコツと事実を積み上げて行くマーティの様子が良かった。 ただ色んな人が怪しくて、 なぜ証言を曖昧にしたまま捜査が進むのか ちょっと納得が行かなかったけれど。 一番謎だったウルフ教授は、 魚のエサを撒くように遠いヒントを小出しにするのが、 このままこの扱いで宜しいのか?と思ったり、 教授の人間性が分かるにつれてニヤリと笑ってしまったり、 最後まで振り回されて不思議な人物だった。 そしてとても魅力的な人物だった。 まるでヨーダや仙人などの達観した人物との 謎の掛け合いみたいなやり取りが物語に深みを加えていて、 人間を描いている感じがした。 ミステリとしても、残忍な死体の背景や 北部アメリカの人種差別や家庭内暴力などが浮上して、 少しずつ少しずつ事件の糸がほどかれて行くので とても面白い読み物だった。 KKK団についてはある程度知っていると思っていたが、 改めて色々知ることが出来て良かった。 アメリカは広い国土に様々な人種や人々が暮らすため 文化と言っても様々な事を尚知った。 29年前の発行だったので、ネットや携帯電話のない世界で すれ違いや情報入手の遅れなどの中、 自分の足で歩き廻って人々に会い、 走り回って事実を繋いで行く所が面白かった。 分厚い本だったけれど文章も分かりやすくサクサク読めたので、 続編などを読みたいと思った。 P・M・カールスンは女性のミステリ作家で、 シスターズ・イン・クライムの会長をつとめた事もあり、 アンソニー賞・マカヴィティ賞・アメリカ探偵作家クラブ賞・ アガサ賞の候補に幾度も上がった事がある、 優秀なミステリ作家だそうだ。 だけど翻訳ミステリで出ているのは本書と 『真夏日の殺人』だけらしい。 充実した作家なのに残念。 ―2023年7月8日頃読了― お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 9, 2023 12:38:01 AM
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