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カテゴリ:本
『苦い林檎酒』ピーター・ラヴゼイ著 「Rough Cider」1987年9月30日発行 山本やよい=訳 早川書房 【中古】 苦い林檎酒 / ピーター・ラヴゼイ, 山本 やよい / 早川書房 [文庫]【メール便送料無料】【あす楽対応】 ■あらすじ アメリカ娘のアリスがはるばるイギリスへやってきたのは、 このわたしが目当てだった。 昔、戦時下のリンゴ園で起こったおぞましい殺人事件をめぐる裁判で、 少年だったわたしは目撃者として被告に不利な証言をした。 それもあって一人の米軍兵士が死刑となったのだが、 アリスはその犯人が残した実の娘だったのだ。 当時を覚えているわたしから詳細を聞き出し、 今は亡き父の無実を証明する気なのだった。 リンゴ園の美しい娘にかかわる摩訶不思議な殺人…… 本格派の鬼才が第二次大戦下の殺人とその20年後の結末を描く 芳醇なヴィンテージ・ミステリ! ■感想 主人公はセオ(セオドア)・シンクレア、男性、大学講師、31歳。 セオの一人称で書かれている。 物語りはイギリス、1940年代と20年後の1960年代が舞台となっている。 9歳だったセオは、1943年9月にサマセットに疎開して クリスチャン・ギフォードという小村の ギフォード農場に引き取られた。 そして農園に出入りしていた米兵たちと親しくなり、 デューク・ドノヴァン二等兵とは特に交流が多かった。 当時、農場の娘バーバラをしつこく付け回していた と思われるクリフ・モートンの頭蓋骨が 農場で作られていたリンゴ酒の中から発見され、 農場で働く人たちと交流していた米兵デューク・ドノヴァンが捕まり、 絞首刑となった。 1945年のドノヴァン殺人事件の公判当時11歳だったセオは 証人として裁判に臨み、デュークに不利な証言をした。 ドノヴァンと親しかったセオにとって おぞましくも辛い思い出だった。 アメリカで暮らしていたアリス・アッシェンフェルターは 母を交通事故で亡くし、書類で実の父の存在を初めて知り、 父に何があったのか知るためにイギリスにやって来た。 大人になったセオの元にやって来たアリスに振り回され、 記憶を繋ぎ合わせ、農場に戻って二人で調べて行く。 農場の娘バーバラは43年当時、 モートンに襲われた11月30日の二日後自殺を遂げていた。 セオは美しくて明るいバーバラとデュークが好きだった。 沢山の人達がリンゴ酒造りをしている様子が描かれ、 街中で育ったセオに鮮明な記憶をとどめた事がうかがわれる。 リンゴの収穫から圧搾機で絞る様子など、 イギリスの田舎の農場の暮らしぶりと楽しいやり取りが続く。 子ども時代の鮮明な記憶。 アリスの強引さとセオの消極性ばかりが気になって、 どちらも好きになれなかった。 ドタバタがコメディっぽくて 大事な心情をごまかしているような感触がした。 セオの視点でしか書かれていないので、 分かりやすい反面、狭い理解と視覚が面白味を消している感じ。 ラヴゼイの仕掛けは納得の内容で 人間の思い込みや視界の狭さなどを使った、 いつの時代でもどんな人にも有り得るだろう問題だと思った。 面白い内容だったけど、登場人物が好きじゃないと 読み進めるのが遅くて遅くて時間がかかった。 最初アリスの義父アッシェンフィルターはひどい男だと思っていたが 最後の方で意外にも情に深い男性なんだと分かり、 少し肩入れして読めたのが良かったかな。 と言っても本編ではクズ男扱いのままだけど、 いや、実際にデュークの妻と結婚した後に逃げ出し、 結局サリーの元に帰ったのだよね。 セオもアリスも最後まで興味が湧かなかった。 ――2022年7月2日読了―― お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 17, 2023 01:43:20 PM
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