#415 総譜 60年の時を越えて
管理人から先の囲碁ボケ記念対局では、黒26の手が話題となった(ということにして)。間髪いれずにケイマを打ち返したその瞬間、観戦者は一様に、「気合を通り越した狂気」を感じ取ったとされている。 実はこの「瞬発的ケイマ」が想起される瞬間、管理人の大脳底部の海馬において、ある短期記憶と、深部のある長期記憶とが結びついていたのだ。その伏線は、対局前の雑多なボケの中にあった。ボケの主は、「神米か」のIDを被った「ゆうすけさん」であった。神米か(5段)>「風呂に入ってきました」このボケのネタ元は関西棋院総帥、橋本宇太郎九段である。このボケを見た瞬間、「橋本宇太郎」の名が管理人の脳に記憶されたのだ。「風呂に入ってきました」→「首を洗ってきました」→「橋本宇太郎」・・・(1)その数分後、実戦の黒24を打ったとき、こんどは「ケイマ」が意識された。さらに追い討ちをかけるように白25ケイマ!このときすでに海馬において、次の演算が瞬間的に進んでいたのだ。「橋本宇太郎」*「ケイマ」=「東西対抗大碁戦」・・・(2)昭和25年に打たれた日本棋院と関西棋院の対抗戦、異様な空気のなかでのその初戦は、西の総帥、橋本宇太郎八段と、東のしんがり、山部俊郎五段 の対戦であった。 開始の合図のあと、山部のただならぬ気合を感じていた橋本は身構えた。山部の第一着はなんと天元、これをみた橋本は、間髪いれずに白2の一石を、盤も裂けよと打ち下ろした。天元に対するケイマガカリであった。かつて、観戦記を読みながら棋譜を並べていた管理人は、このシーンのクオリアを強烈な印象とともに記憶していたのだ。(2)→「山部の天元」→「宇太郎のケイマガカリ」=「瞬発的ケイマ!」であるから、 f {(1),(2), 白25} = 黒26 (ほんとかよ)nipp氏から、「天才的」との社交辞令をいただいた冒頭の黒26の狂手は、60年の時を越えて、ある必然によって打たれたものだったのだ。 (あれ、総譜がないじゃないか)