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カテゴリ:診察・カウンセリング
ハインリッヒ・ハイネの言葉に、
『眠りはいい、死はもっといい、一番いいのは生まれ来ぬこと』 という言葉がある。正しく“虚無”を 表している言葉である。 そして私は、この“虚無”についていつも考えながら 生きている。だから『生きる意味』を必要以上に 考えてしまうのであろう。 この世の中にある生命の中で、人間だけが 『生きる意味』について考えて苦しんでいる。 これは皮肉な事であろう。 『生きる意味』を求め、病の自分に落胆して、辛く苦しくなる事が ある。それは、人生を流れとして考えているからである。 しかし私は、時を積み重ねているのだと考えたい。 生きている事を流れとして考えてしまうと、この先一体 どうなってしまうのかと不安になり、その不安が強ければ 強い程、確実な答えを求めたがってしまう・・・。 その様な不安を感じない人は、ケセラセラと 人生を謳歌できるのである。『ケセラセラ』・・・ 私にもその様な考え方を持ちたい。 電話診察の中で上記の様な事を話し、そして私は 「病に雁字搦めになっていて、身動きが 取れない状態だと思います。」 と言った。しかし、主治医は否定した。 「病に雁字搦めになってるんじゃなくて “虚無”に縛られているんだよ。“病む”という事は、 もう既に“虚無”からの足掻きであり、排除しようとする 反応でプロセスが始まっていると言う事だ。」 と仰ったのである。確かにその通りだと感じた。 今まで病気の所為で動けないし、苦しく辛い事を繰り返し、 どうしようもなかったが、これは虚無から脱出したいが為の 足掻き出会ったのだなと感じられた。すっと胸に入ってくる 言葉であった。 その点では、摂食障害(特に過食嘔吐)は “虚無”を体現しているのではないであろうか。 食べ物を詰め込んで、詰め込んで・・・・・・そして嘔吐する。 その嘔吐後、物凄い虚無感に襲われるであろう。 「自分は何をやっているんだ。苦しい事は解っているのに。」と。 だから摂食障害を患っている人は、同時に虚無を感じ 体現していると言えるのであろう。 “虚無”ほど大きく、手強いものはないであろう。 常にそこにある悪魔のようである。若しくは落とし穴であり、 また、縛り付けられる鎖でもある。 それから脱出したいが為に、摂食障害の症状が出ていると言っても 過言ではないかも知れない。 虚無と向き合う事は悪い事ではないが、直ぐ飲み込まれるので 危険である。しかし私は、いつも虚無と向き合って生きている。 過去の事から辿っていても、これは至極当然である。 主治医の、今日の痛かった言葉は、 「普通は愛し合っている夫婦が 子どもを作るけど、あなたの場合は違う。愛し合ってもいない 夫婦が子どもを作ることは、生まれた子どもが不幸だ。 けれども、祝福して生まれた訳では無くても、 あなたは望まれて生まれた子どもなんだよ。」 と言うものであった。救いは祝福されて無くとも、 母から望まれて生まれてきたのだと思えば、少しは心が 楽になる。けれど痛かった。 この痛みも、過去のものではあれども現在進行形の 問題であり、傷である。 過去の事を掘り起こす事には、様々な物議を醸しだすものである。 しかし私は、きちんと自分を見据えたい。 例えフラッシュバックが起きたとしても、自分の問題で あるのだから、逃げずに受け止めたいと思うのである。 勿論苦しく哀しい作業である。けれども新たな道が開けることが あるかも知れない。私はその可能性に賭けている。 閑話休題。 先日の飲み会で、幹事の方にシェイカーを頂いたのであるが、 まだ活用していない。今はまだネットで色々なカクテルを 検索して、味わってみたいと思うものを模索している。 偶にTVを見ていて紹介される、女性のバーテンダーが シェイカーを振っているのを格好良いと感じる。 私はまだ振った事が無いので、全く様にならないであろう。 でも好きなフルーツのカクテルを、創作してみたいと思っている。 このシェイカーは今の所、宝箱の様で開けるまでが楽しみ と言った感じであろうか。兎に角使う事にドキドキしている。 これは、カルーアとミルクと氷を入れてシェイクするだけで、 単にステアしたカルーアミルクとはまた一味違った深さが 出てくるのである。使いたいが、使うまでが楽しみなのである。 近所の酒屋はリキュール、スピリッツ等、カクテルを作るのに 事足りるほどのお酒の種類が揃っている。 ちょっとした密かな楽しみである。 陽が落ちるのが早くなり、ツクツク法師が啼き始めた。 秋が近まっているのを感じる。 私は四季の中で、秋と冬が大好きである。 涼しい風が吹き始める頃・・・稲穂が黄金に染まる頃、 私は少しでも前を向けているであろうか。 歩みを一歩でも進められているであろうか。 高い高い空に、偶には“虚無”を放り投げて ゆっくりと過ごしてみたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.08.22 21:46:08
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