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2006.08.31
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カテゴリ:虚無
曇り空広がる昼下がり、夕方から雨が降り始めた。

涼しく過ごせるので嬉しい事である。

優しく地面を打つ雨が、植え込みにある桃の木を

潤している。また桃の木も雨水を飲み渇きを

癒しているのであろう。







枯れ枯れとした私は、雨ではもう癒せない。

心も身体も干上がっている。

生き生きと何かをする事から、随分遠退いている。

死んだ眼をしてぼんやりと紫煙を燻らせたり、

小説や詩集を読んだりする。

夜になればぼんやりと、食べ物を胃に詰め込む。

そして嘔吐する。哀しくもないのに涙を流しながら。

私の半径1mは全て虚無感が漂っているのでは

無いであろうかと感じる程である。







母の背中を見て思う。

訪問介護の仕事は物凄く体力を使う。

その中でガイドヘルパーの資格を取り、

次は介護福祉士の免許を取ろうとしている。



もしも平凡な主婦であれば、朝ゆっくりと朝食を摂り

10時にはティータイムを設け、偶には奥様友達とランチに

出かけるであろうか。15時にはお洒落なカフェでおやつの時間。

夫や子ども達が仕事から帰ってくる頃には、夕飯の支度をするであろう。




けれども母は、離婚をして私達兄弟3人を

1人で育てると決めた時から、その平凡な道を

切り捨てたのであろう。







しかし寄る年波には勝てない。

母の背中から哀愁が漂う。

この雨空の下、淡い空気に背中が染みている。



母の背中が一層小さく見える。



こんなに苦労を背負っているのは、殆どが

私の所為であろう。10年以上摂食障害を

患った子どもを持つ母の気持を考えると、

申し訳ないと言う気持ちで溢れる。

そして毎日挫けそうになる。



『こんな酷い摂食障害が治る訳ない』



と・・・・・・。







しかし、そこで主治医の言葉を思い出す。



「誰にでも可能性があるんだよ。」

そして

「可能性がある事は虚無じゃないと言う事だよ。」



どうしても頭の中から『虚無』は離れず、寧ろ

飲み込まれそうになっていたのであるが、

こうして誰にでも可能性を見出せる旨を聴いたら、

自分にもせめて万分の1は、光差す可能性が

あるのではないであろうかと希望が持てる。

そしてその希望さえあれば、



『もしかしたら病気が寛解に向かうのでは・・・』



との薄い願望もふわりと浮かび来る。







子どもの頃、あんなに大きく見えた母の背中が

今日は小さく感じられた。

毎日頑張ってお仕事をしている母に、いつか恩返しが

出来るよう、自分の中にある僅かな可能性を信じたい。

見えないからと焦ってはならない。心の奥深く深くに

眠っている可能性を、起こしてやれるのは自分なのであるから。

無理をしないよう、ゆっくりと次へ進む1歩を踏み出してみたい。





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Last updated  2006.08.31 20:39:10
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