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凍えたココロ

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2007.03.05
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カテゴリ:想い
お通夜に行ってきた。

彼女の家へ行くのは

初めてである。







夜中の内に妹は

彼女の家へ行って

対面を果たした。

立っている気力すらなく、

今日はずっとお酒を飲み続けて

泣き続けていると言う。

お通夜である今日、

一緒に行かないかと誘ったが

「喋らないし動かないから顔を見ることも

 できんよ・・・。」

と小さな声を絞り出した。







19時に家を出て、15分程で

彼女の家に着いた。

家の周りはお線香の匂いが漂っていて

本当に彼女は死んでしまったのだ

と言う事を痛感させられた。

家へ上がらせて頂くと、

親戚の人々がお寿司などを食べながら

お酒を飲み、ぐだぐだと

彼女とは無関係の話をしていた。

彼女はお父様の傍に眠っていた。

そう・・・本当に眠っているように

横たわっていたのである。

お父様は憔悴しきった顔をしていた。

まず母が末期の水を

大きな綿棒のようなもので

美しくお化粧された

彼女の唇を湿らせた。

そして

「○○ちゃん・・・」

と呼びかけ、頭と頬を優しく撫でた。

母は2~3日前ふざけあってお喋りした

ばかりであった為か、涙が溢れていた。







私は遺影を見た瞬間から

止め処なく涙が流れ始めて

止める術が分からなくなった。

天真爛漫にピースサインをして

明るい笑顔をしている彼女が

そこにはあったが、

視線を落とすと

少し口を開けて、本当に本当に

まるで眠っているかのような彼女が

身じろぎもせず瞼を閉じていた。

そして私も末期の水で

彼女の唇を湿らせた。







こころの中で

「起きて。あんなに笑っていた○○ちゃんだったやろう?」

と叫ぶように呼びかけたが

唇を湿らせても

動く事は無かった。

母と私はその後お線香をあげさせて頂き、

2人で手を合わせた。

私は、そっと前髪を撫でた。

撫でながら頬にもそっと触れた。

冷たかった。

可愛い寝顔と見間違えそうな程

だったけれども、

冷たかった。

そこで

本当に亡くなってしまったのだ

と身体もこころも受け容れて、

でも、まだ涙はぼたぼたと

流れ続けていて拭っても拭っても

溢れて止まらなかった。

隣の部屋では賑やかに

親戚のおじさん、おばさんが

がやがやと飲み食いしていて

仕切りも無かったけれど、

彼女が眠っている部屋は

絶えずお線香が焚かれていて

神聖な空気が漂っていた。







彼女を見詰めていると、

今までの色々な想い出が

蘇ってきた。

姪のおむつを換えていた姿、

家に遊びに来て

妹たちとお酒を飲んでいる中に

私も入れてもらって

家族みんなで一緒に乾杯した風景。

記憶を掘り起こせば

彼女の笑顔ばかりがそこにはあった。

でも、これからの毎日には

彼女が笑ってそこに居てくれる事はない。







その後、ジャ○コで喪服を購入した。

それに合わせて靴と黒のストッキングも

購入しておいた。

時折、彼女の冷たかった頬の

さらさらとした手触りが突然脳裏に

過ぎったが、店で泣く事はなかった。







妹はビールばかりを飲んでいた為に

心配になって何か軽く食べられるものを

食料品売り場で購入して

妹のアパートに向かった。

泣き腫らした為に目は真っ赤になっていた。

姪は託児所に預けていると言う。

父に電話したら、泣きながら怒られたらしい。

父も彼女が亡くなった事を哀しんでいた。

何しろ、妹の家に行けばいつも

彼女が居たのであるから。

「●●(姪の名前)の為にもお前もしっかりしろ」

と言われたらしい。

しかし、妹にとっては家族以上に頼りにしていた

存在が突然、死別という形になったのであるから、

しっかりも何も泣く事しか出来ないであろう・・・。







私も毎日自殺しか考えられない日々があった。

何度か自殺未遂もした。

けれどもその度に、こんなにも沢山の人を

哀しませているのだと言う事を知った。

今、ふと気が抜けると彼女の笑顔が浮かび、

「お姉さん、お姉さん」と慕ってくれた

彼女の姿が脳裏を過ぎる。

そして涙が溢れ出して止まらなくなる。

モニターの字が滲んで見える。

『辛かったんだね・・・。○○ちゃん。

 死を選ばねばならない程の苦しみが

 あった事に気付けなくてごめんね。』

でも、生きていて欲しかった。

まだ、信じられない。

明日はカウンセリングをキャンセルして

お葬式に出席する予定である。

最後まで彼女を見送りたい。





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Last updated  2007.03.05 23:16:27
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