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凍えたココロ

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2007.03.06
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カテゴリ:想い
青く澄みきった、

晴れ渡った空があった。

彼女を見送る日に

雨は似合わない。

寒いけれど、

彼女の笑顔を想わせる

綺麗な空であった。







葬儀場に着いたら

駐車場に泣き腫らした瞳で

妹はもう1人の友達と

佇んでいた。

2人は芳醇な香りを称えた

カサブランカの花束を

抱えていた。

本当は真紅の薔薇が好きな彼女

であったらしいが、

大きなカサブランカの白色は

彼女の心を映している様であった。







会場の中に入ったらもう、

駄目だった。

香典を供える前に

笑顔の彼女が目に飛び込んできた。

記帳する手が震えた。

そして一般参列者席の一番前に

座ってじっと遺影を見つめた。







妹は、席に着いた時から

泣いていた。

私も唯、泣く事しか出来なかった。







12時、司会の男性が説明をした後、

僧侶による読経が始まった。

彼女の魂に、新しき名前が

・・・戒名が名付けられた。

色とりどりの花に囲まれている

彼女の遺影を見つめる度に

嗚咽が漏れる。

ハンカチが1枚では足りない位、

お経の中、涙が流れた。

けれども、まだどこか

非現実的であった。







やがてご焼香をあげさせて頂き、

合掌をして席に戻り、

流れるように次々と一般参列者が

彼女の友達や知り合いが

ご焼香をしている時、

突然、彼女と同い年位の

男性が声を上げて泣いた。

弾かれた様に泣き声が連鎖していった。







彼女の死を悼み、嘆き、哀しむ人は

沢山、沢山居た。

それだけ彼女はこの世に

温かいものを遺してくれた。

その事を噛み締めるとまた

ぽたぽたと涙が溢れた。







やがて読経が終わり、

彼女の躯が入った

棺桶が左右に分かれた

親族席の真ん中に

運び出された。

葬儀屋の方達が

祭壇にあった沢山の花々を

摘み取り、それを

彼女の棺桶へ入れるという

時間になった。

今まで少し冷静であった親族達も

彼女の顔を見ると次々に泣き始めた。

先ずは親族の方々が彼女を花で埋め、

そして一般参列者の番になった。

妹が一番に駆けつけて

彼女の顔を見た途端

名前を呼び、泣き叫んだ。

カサブランカを彼女の胸に置き、

「嫌だ!嫌だあ!」

と泣き喚いた。

私の傍に居た母も

ぼたぼたと涙を落としながら

「○○ちゃん、○○ちゃん、起きて。」

と囁き彼女の頬を撫でていた。

私は必死に綺麗な花々を

次から次へと彼女の傍に

泣きながら敷き詰めていった。

白い小さな菊は、彼女には似合わないから

顔の周りは色彩豊かな花々で

一杯にした。

そして私も堪らず声を漏らして

泣き崩れてしまった。

頬を撫でれば今にも瞬くのではないか

と言う閉じた瞼や、息を吹き返しそうな

グロスで潤んだ唇。

非現実が現実として突きつけられたのは、

本当に沢山の花で一杯になった

棺桶の扉が閉じられた瞬間であった。

もう、これから彼女の肉体を、

愛らしい顔を見られない。

写真の中でしか、彼女の姿を

見られないと悟った刹那であった。

妹たちは閉じられた棺桶に縋り

泣き崩れた。私は呆然と只管

涙を流れ出るままにして置く事しか

出来なかった。

もう、彼女が妹を

「ひーちゃん」

と呼ぶ事は無い。

もう、彼女が私を

「お姉さん」

と呼ぶ事も無い。

一睡もせず飲まず食わずで

参加した告別式。

頭の中は真っ白で、

遺影の中で彼女の笑顔だけが

真実を物語っていた。







憔悴しきったお父様が

遺影と位牌を手に

彼女と共に車に乗り込み

長い長いクラクションの音を

響かせて火葬場へと向かった。

そして、葬儀が終わった。

妹達は親族達の後について

車で火葬場へ向かった。

私は今日、診察があった為、

行く事は出来なかった。

私が彼女の死を知らされた夜、

主治医の携帯に電話をして

話を聴いて頂いた。

その時も私は酷く取り乱していたので

今回は数分だけでも主治医の顔を見て

お話をしたいと想ったのである。

1人が恐かった。

主治医の慰みの言葉は、

在り来たりでは無くて

優しかった。

これから辛いのは妹だと言う事、

それをしっかりと考えていかねば

ならない。







23歳で亡くなった彼女が

最後に思い浮かべたのは絶対に

妹の事であろう。既遂の前に

妹に携帯のTV電話で話したのであるから。

若くして死を選んだ彼女が

最後に見た風景は何だったのであろうか。

何を感じ取り、こんなにも早く

死を迎えねばならなかったのか。

そして私はどうして彼女の

辛苦に気付けなかったのか。

後悔の念に溺れてしまう。

近い内に姪と一緒にお墓参りをしよう。

ここに○○ちゃんは眠っているんだよと

妹と母と共に教えよう。

最後に・・・彼女の冥福を願い

黙祷を捧げ、私の心の中に住んでいる

彼女に合掌しよう。





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Last updated  2007.03.06 23:17:27
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