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2007.03.10
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カテゴリ:虚無
午後は雨が降ったようである。

久し振りに懐かしい雨の匂いが

ふうわりと漂っていた。

まだまだ冷たい雨雫は

そっと頬を撫でて落ち、

水溜りを作る。

昨日泣き腫らした私のように

一緒に空も泣いてくれたような

気もする。







雨が降れば花々は喜ぶ。

ろくにお手入れをしていないから、

ここぞとばかりに雨水を

飲んでいるのであろう。

そしてまた瑞々しい姿を

凛と見せてくれる。

ぐんぐんと育つ桃の木も

やがて蕾を開かせるであろう。







電話診察のあった昨日は

睡眠時間が短かった為、

こころがそわそわして落ち着かず

ブログを綴り終わった後、

無意識の内に食べ始めてしまっていた。

1日2回の食事

今の私にとってかなりきつい。

でもこころは食べ物を欲していた。

『食べる』という行為で

ざわつく、哀しみばかりの胸の内を

どうにかしたかったのかも知れない。

普通の人であれば、そこで素直に

気分転換を図るか、泣いて落ち着くかという

行動をとるのであろうが、

その時の私には泣く気力もなく、

只管食べ物を詰め込んだ。







全て事を終え、落ち着いた頃

シャワーを浴びた。

身体を綺麗にする事で、幾分

すっきりした心持ちになる。

熱いシャワーを浴びた後、

ぼんやりしていたら

自然に涙が溢れてきた。

亡くなった彼女の笑顔が頭を

過ぎったのである。

「気付けなくて・・・何も出来なくてごめんね。」

と呟きながら思う存分泣いた。

妹のアパートに居場所を求め

そこにいるのも哀しくなった時、

最後の居場所は携帯のTV電話の中になった。

あの小さな画面に映る彼女が

最後だった。哀しくて堪らない。







私はありがたい事に、家では

母と2人支え合いながら暮らしていけている。

幾ら病気が苦しくても辛くても、

温かい母のこころに触れると

凍えたこころも融解する。

母とうまくいく様になってから、

過食と嘔吐の回数も減少した。

勿論今に至るまで紆余曲折があった。

病症に対して罵られたり厭味を言われたり

していたので、

「こんなに苦しいのに、一生私の気持ちなんて解ってもらえない!」

と失望して逸脱行為を

繰り返していた。

ウォッカをロックで何杯も飲んだり

その勢いで深く手首を切ったり、

兎に角足掻けるだけ足掻いていた。

それでも落ち着かないこころは

過食と嘔吐の繰り返し

どうにか均衡を図ろうとしていた。

しかしその頃、誰にも甘えられず

頼る事もできず、『孤独感』ばかりが

募っていった。

孤独であると、楽になる道は

『死ぬ事』

しかないと想い込んでしまう。

だから23歳の誕生日、私はお薬を多目に服用して

県病院のHCUに運ばれたのである。







その頃から、少しずつ母との関係に

変化が生まれ始めた。

5日間のHCU、その後総合病棟に移った

7日間。毎日母はお見舞いに来てくれた。

母の顔を見るだけで安心できた。

でも私は毎晩泣いた。

どうして死ねなかったのであろうと・・・。

無論、あんな薬の量では死ぬ事など

出来ないと解っていた。

低体重であった事、お薬の飲み併せで

まずい状態に陥った訳である。

入院中に春一番が吹き荒れ、

点滴を流されながら点滴台と共に

ロビーの大きな窓から見える

真っ青な空を見詰めていると

無性に虚しく哀しかった。







私がHCUで昏々と眠り続けていた間、

今回亡くなった彼女を見た時の様に

母は生きた心地がしなかったであろう。

今更になって物凄い心配を掛けていた事に

気付けた。

だからもう、私は『自死』を望まない。

これ以上、母に心配をかけないように

気を付けたい。







過食と嘔吐を終えた後は、

酷く消耗している。

時々、そんな私を目にした母は、

優しく背中を撫でてくれる。

私の行為を責める事無く、

「しんどいね。苦しかったね。」

と温かい手で触れてくれる。

後ろめたい気持ちは無きにしも非ずであるが、

この病症を受け容れてくれる事が

こうして苦しい私を慰めてくれる事が

凍った胸の内を温めてくれる。

自分の居場所があるという事、

それも温かい母の元にいられる事は

凄く幸せな事なのではないかと感じている。







摂食障害特に過食と嘔吐

繰り返す方々は、きっと自分を責めてしまうであろう。

でも、これは

病症であって、仕方の無い事なのである。

だから、必要以上に自分を責めたり

卑下したり、醜いと想ったりしないで頂きたい。

普通の人から見たら、異常な食行動かも知れないが

病気なのだから受容せねばならない事なのである。

自分を貶めても、解決にはならない。

それよりも、自分のこころの声に耳を傾け、

何故食べたいのか、何故哀しいのか、何故虚しいのか

という事を考えて頂きたい。

そして過食になったとしても

そんな自分を拒絶せず、

『しんどかったね。疲れたね。』

と自分で自分のこころを

よしよしと労わって欲しいと願う。

病気だから悪いなんて事はない。

ただ、逃げ道に『死』だけは選ばないで

欲しいと願う。







ぐっすり眠った今日は、大分体調も良くなって

きている事を感じる。

母は、いつまでも眠っている私を少し心配しているが、

主治医には「沢山眠りなさい」と言われているので

ゆっくりたっぷり眠る事にしている。

そうすると、自然に心身が楽になっているのである。

ふと気を抜けば彼女との楽しかった想い出が溢れ、

涙がはらはら落ちていくが、

それを悪い事だとは想わない。

いつまでも泣くなと言う厳しい人も居ないから、

1人、部屋でゆっくりと泣いている。

多分、来週火曜日のカウンセリングでも

私は堪えきれず泣いてしまうであろう。

20歳の頃からお世話になっているカウンセラーの前では

素の自分が自然に出てくる。

虚無感に縛られて身動きをとるのも

辛いが、私はゆっくりと歩いていくのを

止めたくは無い。でも時々

大きな木の木陰で休みながら、

雨宿りもしながら、

病気と共に生き、無茶な事は避けるように

過ごしたい。





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Last updated  2007.03.10 23:44:58
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