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カテゴリ:診察・カウンセリング
寒いが、とても綺麗に晴れた
空の下、病院へと向かった。 河川敷には菜の花が咲き乱れ まるで黄色の絨毯が 敷き詰められているように 美しかった。 傍の桜並木はまだまだ 花開かせる様子は無い。 ずっと起きていたので 支度するのに倦怠感が 付き纏っていた。 しかし、カウンセラーに 話さねばならない事がある。 だから私は必死に、外に出られるよう 自分を鼓舞した。 久し振りのカウンセリングルームに 招き入れられ、椅子に座り、 小さな品の良いテーブルを挟んだ 向こうにカウンセラーが座った。 窓から差し込んでくる光が 柔らかかった。 深呼吸をして、私は 先週の日曜日からの事を 話し始めた。 最初の内は落ち着いて 淡々と起こった出来事を話していたが、 彼女の遺影や葬儀・告別式の情景を 想い出すと、涙が止まらなくなった。 カウンセラーは落ち着いて 且つ優しい目をして耳を傾けて 下さっていた。 まさか、自分が身近な人を 自殺という形で亡くすという事は 思いもよらない出来事だったので、 まだ混乱した気持ちは残っていた。 話している内に、少しずつ バラバラになったこころの破片が くっつき始めているように感じた。 カウンセラーの声を聴き 質問に答え、想いを語る事により、 ゆっくりとゆっくりと 落ち着きを取り戻せた。 日毎に覆い被さっていく 薄い薄いヴェールが取り外され、 正直なこころの内を 打ち明けられたように想う。 辛い記憶を思い出し話すという事は 辛さや苦しさを伴うが、 それを繰り返す事により 段々事実を事実として認め、 次の1歩を踏み出せるのではないであろうか。 唯、身近な人の死は 物凄くショッキングな事であるので まだこの事については カウンセラーと話していく事に なるであろう。 12時にカウンセリングが終わり、 次は主治医による診察がある為 1階に下りて待合室のヒーターの前で 暖を取った。 先に来ていた患者さんから名前を呼ばれ 私は病院がお昼休みである14時まで じっくり対話出来るよう 主治医は考慮して下さっている。 診察の内容は後日、記したい。 とても印象的な事があったのである。 私は最近、起床時間が遅くなる事で 豆乳を飲む機会が減り、 スープで栄養を補う事も 半ば放棄していた。 それを危惧した主治医が、 提案して下さった事がある。 「お母さんが作ってくれたものを 口にして、栄養を摂る事が今一番 大切な事だと想う。」 と仰り、先ずはスープから・・・それも栄養たっぷりの スープを母の手によって作ってもらい、 その上澄みの透明なスープを飲むようにしてみたらと 『ミネストローネ』 の作り方を紙に書いていった。 主治医が仰るには自身も料理を作る事が 好きであるらしく、諳んじて レシピを書いていっていた。 使用するお野菜にも沢山の意味があり 説明して下さった。 先ずは上のほうに実を付ける トマト。地上にそのまま生るキャベツ。 そして地に埋まっている玉葱。 土の中に実を付けるじゃが芋。 地下茎として生る人参。 地上に頭を垂れる米。 これらをベースに、米以外全てを みじん切りに近い賽の目切りにして 水からごくごく弱火からコトコト 煮詰めていく事が大切だと仰っていた。 14時になり、母が迎えに来てくれたので 母も診察室の中に入り、 同じ説明を主治医は母に話した。 「今の○○さんは、固形物を食べる事が 困難だから、先ずはお母さんの手がかかった スープで栄養を摂る事を勧めたい。 お母さんが作った料理を口に出来るという所から 少しずつ少しずつ色んな事が 融解していくと想うから・・・。」 とレシピを書いた紙を母に渡した。 基礎的な野菜の他に、余裕が出てきたら セロリやズッキーニ又は胡瓜の切れ端、 南瓜等を賽の目に切り入れても良いと 仰っていた。 確かに、今はまだ柔らかくなった小さなお野菜 でさえ、食べて栄養とする事に 拒絶感を覚える。 しかしこうした機会を持って下さった主治医に 感謝すべきであろう。 診察が終わり、薬を受け取り精算をして 病院を出て、私が自販機で煙草を買っている間に、 隣の八百屋さんで母は早速 トマト・人参・じゃが芋・キャベツを 購入していた。 11時から私は喋り通しだったので、 疲れて家に帰り着いたら メイクを落としてパジャマに着替え、 お蒲団の中でうとうとしていた。 すると、母も眠いであろうと想うのに、 トントントントンと野菜をリズム良く 切っていく音がキッチンから聞こえてきた。 私はとても嬉しかった。 母が私の為に、私の栄養になるもの そして吐かないで済むものを作ってくれている という事実が、物凄い喜びの気持ちを 溢れ出させてくれたのである。 包丁で野菜を切る音を聞きながら 睡眠に吸い込まれていくのは とても心地良かった。 そして目が覚めたのは21時であり、 また眠り過ぎてしまった。 しかし、まだミネストローネを トロトロと煮込んでいる最中で わくわくした。 これで最後に塩胡椒で味を調えたら 出来上がりである。 母と共に、鍋を前にして 笑顔が零れた。 そして一瞬強火にして 少し経ったら出来上がった。 ドキドキしながら 野菜を避け綺麗に澄んだ スープをカップに注いだ。 温かいそれを、ゆっくり口に運び、 味わって飲み下した。 とても優しい、柔らかい味だった。 母が私の為を想って、心を込めて作ってくれた ミネストローネ。 不味い筈が無い。とっても美味しかった。 身体中に温かさと優しさが染み渡り、 ゆっくりゆっくり野菜のエキスが 私の栄養になっていく事を 確実に感じた。栄養となっても 痩せ願望は此処では全く表れず ホッとした気持ちになった。 主治医曰く、このスープは 「“大地のスープ”なんだよ。」 という事である。 確かに、大地ですくすくと育った 沢山の栄養を蓄えた野菜が たくさんのエキスを醸し出した 贅沢なスープである。 主治医の心遣いと 大地の恵み、 母の温かさによって出来上がった ミネストローネ。 いつの日か、お野菜も少しずつ 食べられるようになりたいと 目標を持つ事ができた。 朝、眠る前にもう一度 頂くつもりである。 とても嬉しい1日となった。 大地のスープ“ミネストローネ” 今まで何度か外食で頂いた事はあったが、 今日母が手作りで仕上げてくれたものは 格別に美味しかった。こころにも身体にも 優しさと母の愛が染み渡っていった。 栄養も満点なので、毎日飲むようにしたい。 また、主治医が仰るには、これは母と私が一緒に作るか 母が作るかどちらかで無いといけないと 仰っていた。私1人が作ったのでは 意味が無いという事である。 一層、母との距離が縮まったように感じた。 無理はしないようにゆっくりと こうしたスープによって力を 付けていきたいと想えた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.03.13 23:59:35
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