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沖縄県八重山福祉保健所の中山と申します。
地方財政学会、お疲れさまでした。台風襲来をものともせず、全日程を予定どおり終えられたとのこと、本当にすごいですね。 私は、2日目(5月29日)の企画セッション3「地方財政の新しい手法」のスタッフとして参加させていただきました。また、シンポジウム「転換期の沖縄振興と自治体財政」を拝聴しました。このような大きなイベントのお手伝ができ、とても貴重な経験が得られました。小西先生、いちゃりばの皆さん、ありがとうございました。 参加した感想としては、企画セッション3について述べさせていただきます(簡単なものをという話でしたが、だいぶ長くなってしまいました。すみません)。 このセッションでは、「新しい手法」というテーマで、対象へのアプローチの仕方(方法論)や、分析の道具・テクニックに関する新たな試みについて提題と議論が行われました。個別発表のタイトルは以下のとおりです。 1高橋朋一「バイオマスタウンの現状について-再生可能エネルギーの可能性-」 2矢吹初「テキストマイニングによる市町村合併の分析」 3川崎一泰「新都市交通は地方財政に貢献したか?」 4木博文ほか3名「地方交付税制度と実験経済学」 4は、「新古典派経済学が前提とする『合理的経済人』という仮定によっては、現実を説明することはできないのではないか?」という、行動経済学と同様の問題意識から、従来実験に向かないと言われてきた経済学に実験的方法を導入して、理論の妥当性を検証するという試みで、好奇心を刺激されました(もっとも、実験過程における操作はとても技術的だったので、理解できませんでしたが)。 2のテキストマイニングは、日本都市センター『平成の大合併 都市要覧』(2009)の「市町村合併に関するアンケート調査」中の自由記載欄に出てくる語句の使用回数を解析し、分析軸を操作して布地図を作ることにより、選択肢では拾い上げることが難しい市町村合併に関する「質」的な情報を抽出しようするもので、個人的には最も面白かったです。 文献学に似てるなと感じたのですが、元々この手法は、「シェークスピアとベーコンが同一人物かどうか?」という問題について、語の使用回数や言い回しの回数などを数え上げたのがはじまりとのこと。 昔は数え上げるだけで1つの業績だったものの、今はコンピュータの進歩により、大量のデータ処理が可能になったのでそうはいかないそうです(それでも、テキストデータの抽出にも解析にも膨大な計算処理が必要)。 また、解析ソフトはアカデミック版でも相当高額らしく、研究費が潤沢かどうかが大きな意味を持つ部分もあるそうで、学問の成果が研究費の多寡より大きな影響を受け得るということに気づかされました。 このほかにも、3は、GPSと市町村の統計データを繋げて、交通施策がもたらす財政効果を把握しようとする試みであり、一般的に行われている費用便益分析とは異なる効果測定手法を提言している点において、興味深かったです。 発表を伺っていて、「その値に信頼性があるのか」「指標の設定が適切なのか」「前提とする仮説の根拠が弱いのではないか」など、いろいろ疑問が湧いてきたのですが(素人が生意気をいってすみません)、「新しい手法」という以上、突っ込みどころがあるということは折り込み済みのようで、得られた結果そのものよりも、切れ味や切り方を検討することに主眼が置かれていました。 これらの知見は、地方財政の実務に直結する訳ではないと思われますが、今後、上記の方法論が深化すれば、合理的・効率的な政策判断を行う際や、実施された施策の効果を測定・検証する際の有益なツールになる可能性があるように思います。 先端分野において、新たな地平が切り開かれていく現場に立ち会うことができ、とても有意義でした。ありがとうございました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年06月03日 22時46分14秒
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