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岡口基一裁判官が,twitter上での発言で懲戒処分となりました。
岡口裁判官は,「要件事実マニュアル」など,法曹実務家や法科大学院生などにとっては非常に助かる書籍を何冊も書かれており,私自身も大変助かっています。 その意味で,今回の結果は残念なのですが… ただ,私個人としては今回の懲戒について,決定文と岡口裁判官の原ツイートを読む限りにおいてはさほど不当なものとは思えないのです。 なお,twitterは3年ほど前にやめてしまい、審理の過程については追っていないので,審理の在り方に問題があったという批判があることは承知していますがその点については本記事ではさておかせていただきます。 裁判官の公正中立については,外見的に見てもキープされていなければならない。 最高裁のこの判断自体は私は至極もっともだと思っています。 国民は「見たくない表現からは目を背ける権利」がありますし,「いやな弁護士には頼まず別の弁護士を探す権利」もありますが,「裁判を受けたくない裁判官から逃げる権利」はないのです。(原告側なら裁判自体を諦めると言う奥の手があり得ますが,裁判は被告側になるケースもある訳です) そんな権利,あったら私にも使わせろ!!と叫びたいです。 そんな中で今回懲戒理由となったのは,訴訟の原告を揶揄するようなツイートでした。 公園に放置されていた犬を保護し育てていたら,3か月くらい経って, ツイートの実物も観てみましたが,私としては,判決そのものどころか,原告の訴訟提起自体を非難・揶揄するものと読みました。 岡口裁判官にそのようなつもりはないのかもしれませんが,そう取られておかしくない表現であると判断します。 少なくとも,私の依頼者が担当裁判官に「ねえ君3か月も犬ほっておいたんだよね。捨てたんでしょ?」なんてことを言われたら,私は裁判官に噛みついたことでしょう(落合弁護士は「一般人の通常の読み方はそうは読めない」と判断するようですが、私はそうは思えませんでした。)。 訴え提起への揶揄は裁判を受ける権利の保障(憲法32条)という視点からも問題があるものです。 私は,弁護士でさえ,例え請求棄却が予想されるような案件であろうと訴訟提起自体を攻撃すると言うのは相応に度胸のいることだと思っています。 まして法的に認められる可能性のある訴訟を攻撃した弁護士に対しては「控えめに言ってドン引き」という評価すら下しています。 この件に関していえば裁判官で,更に現に請求が認められている件ときています。 上記の弁護士の発言に「控えめに言ってドン引き」という感性の私から見れば,この発言は「どう救えと言うのか」という感覚になります。 Yahooのコメント欄等も見てみましたが,岡口裁判官に同情的な意見は決して多くなく,「岡口裁判官に裁いてほしいとは思えない」という意見の方が多数であると見受けました。 (もちろん,Yahooコメント欄の質の低さは承知しています) 結局岡口裁判官の懲戒を認めるかどうかは表現の自由というワイルドカードでもって押し切ることが出来るかどうかになると思います。 ここは,見解が分かれる所でそれより表現の自由が優先されるべき,懲戒すべきでないという見解も十分に理があるとは思います。 私自身,「ペンが剣より強いなら、剣より強いペンを振るって他人を傷つけた者は厳罰にされるべき」という感覚でメディアでの言動などについては白い目を向けることが多い人間なので,こういう価値判断になっているのかもしれません。 弁護士の多くは「ツイートに問題はない」「ツイートには問題があるが処分は行き過ぎ」という見解が多く,私のような見解はむしろ少数意見に見えますし,そういった意見に説得力がないとも思わないのです。 全員一致の判決という点は個人的には意外でした。 最高裁の決定文はその点について 「なお,憲法上の表現の自由の保障は裁判官にも及び,裁判官も一市民としてその自由を有することは当然であるが,被申立人の上記行為は,表現の自由として裁判官に許容される限度を逸脱したものといわざるを得ないものであって,これが懲戒の対象となることは明らかである。」 と規範などを立てるでもなく,あっさりと「限度を逸脱」「懲戒の対象となることは明らか」戸しか書いていません。 何故にもっと手厚く書かないのか,そこは最高裁として悩みを見せるべき所ではないのか,仮に裁判官の間で感覚がずれているなら補足意見でも何でも書けと思います。(もっとも,最高裁は最近こんな風に重大問題についてあっさり結論出したような判決文が多いような気がしますが…) ただ,それを踏まえても私は,今回は「結論としては」裁判所の公正への信頼保護のため,懲戒処分やむなしに一票を投じます。 ちなみにブリーフ一丁になったことについては個人的にはあまり問題とは感じていません。 また,犯罪被害者や遺族を傷つけたと言う書き込みについては「そうなの?」という感が拭えずにいること(もちろん私自身が遺族ではないので、私の感覚など当てにできるものでもありませんが…)も付言しておきます。 なので,最判の共同補足意見についての感想は「?」です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年10月18日 12時29分52秒
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