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ヘイトブログの扇動が背景 男性敗訴
(毎日新聞10月24日朝刊) 当然の判決と言っていいでしょう。 (他の殺到する懲戒請求との関係をどうとらえているのかは気になりますが,そこはまだ材料不足かと思います) 賠償額は請求額55万円に対して33万円。 3万円は弁護士費用相当分と思われるので(不法行為訴訟で1割くっついた中途半端な額が認容されている場合,それは弁護士費用相当分である可能性が高い),懲戒請求それ自体についての賠償額は30万円ということになります。 今回は被告が訴訟に出席せず欠席判決ということでした。 勝ち目がないから,あるいは九州や北海道のような遠隔地から懲戒請求をしてしまい,東京までの旅費からして高くつくので諦めたということなのかもしれません。(彼らに弁護士がついていなければ,電話会議の利用というような手管があるとは正直思えませんし) とはいえ,懲戒請求の違法性や損害額という違法性については当事者の主張を待たずとも裁判官も「本当に違法なのか?」というのは裁判所に出てきた事実の範囲では判断したはずです。 反対当事者の主張がない分その辺の評価が甘くなる可能性は否定できないものの,請求額から落としていることからすれば(なお,請求額は平成19年4月24日最高裁判例の認容額と弁護士費用を除けば同額です),裁判所も単なる原告の言いなりではなく,被告側に一定の配慮は働かせていると判断するのが穏当でしょう。 橋下氏みたいに法的評価を裁判所が評価していないと理解しているとしか思えないのはもはや論外でしょう。(欠席したから勝ったと言う可能性は一応絶無ではないとは思いますが,違法性は裁判所は別途判断しているはずで,学部生時代の私ですら分かる間違いです) 加えて,この件が社会問題で多数の訴訟が予定されていることは公知の事実なので,30万円という金額が先例として価値を持ちえるでしょう。 他の裁判所に似たような訴訟が係属することが当然想定される場合に,他の裁判官も事実上足並みを揃えようと考える可能性は決して低くないことは裁判官も分かっており,そのことを踏まえて30万円とする判決を出したと思われます。 (他の裁判官が被害額をいくらにしようか迷えば,既に出ている30万円に引っ張られる可能性が高い) 毎日新聞に,こんな記事がありました。 賛同した女性「洗脳状態だった」 (毎日新聞2018年10月23日) 毎日新聞HP記事の映像で,懲戒請求してしまった人物へのインタビューがありました。 洗脳された!!という当人の言い分に対して,他人のせいにしているなどと非難の声もあるようですが,当人は曲がりなりにも弁護団と連絡を取って和解などもしているようなので,内省が十分かはともかくとしても責任を取っています。 今なお請求を正当化したり,中にはスラップ訴訟などと原告への人格攻撃に走る者の話すらある中、そんな連中とは比べる余地もないほどまともです。 洗脳という表現が妥当なのかはともかく,当の女性が請求してしまった原因がブログに流されてしまったことを認めているのですから,原因を知るにあたっては十分な情報と言えそうです。 本当に憂国の士を自認しているなら,例え十分に調べたことが前提で法的な責任を問われないものだとしても,無実の弁護士を巻き込んだことに対しての責任位は自主的に取るものではないでしょうか。 この民事訴訟のように,訴訟提起・法的な責任の追及には本人を更生させる効果もあると思います。 こんなのダメだ!!と多くの弁護士などが呼び掛けても効果がない。中には当の弁護士から和解を呼びかけられてすら当の弁護士への攻撃材料にする。 そんな人も少なくない中,法的責任という形で自身の行動が客観化・明示される。 現に裁判に訴えられると言う形で「自分の行動が法的にどうなのか,真面目に考えたことがあるのか!」と突きつける。 少なくとも,映像の女性は訴えられる可能性を目の前に突きつけられて初めて,自分の行動が法的にどうなのかを顧みて,「まずいことをしちゃった」と気が付いたわけで,法的な責任の追及に責任を自覚させる効果があったことは明らかです。 刑事弁護を長い間やっていれば,「何となく」悪いことだと分かっていても「どれくらいのことだったのか」を体感できないまま止めず,いざ自分が逮捕されて法的責任の重さを突きつけられて初めて自分がとんでもなく悪いことをしていたことに気づいた被疑者・被告人には会ったことがあるはずです。 もしこの多量懲戒請求について,誰一人法的責任を追及せず,啓蒙活動だけを行ったとして効果はあったでしょうか。 「啓蒙活動こそ間違いだ」 と考え始めてしまう可能性は高いと考えます。 金弁護士は映像の中で「教育や啓蒙活動は必要だが,それだけでは足りない」と指摘していますが,私はこの指摘に強い共感を覚えます。 弁護士会など一蹴できるような発信力を持ち,啓蒙活動に尽力している警察。 しかし,警察の啓蒙活動むなしく,未だに飲酒運転はなくなりません。 特殊詐欺の被害もなくなっていません。 啓蒙活動に効果はあると思いますが,効果が出てもこの程度であり,それだけでは足りないものがあることもまた事実です。 法的に責任を取らせると言うことは,単なる見せしめとか叩き潰し,被害者弁護士の救済という問題だけでなく,本人の更生にも役立ちます。 法的責任の追及を「ただの仕返し・ただの見せしめ・ただの叩き潰し」としか捉えていない人は弁護士にもいるようですが,法的責任の追及に至って初めて、中途半端な「何となく悪いことだと思っていた」というレベルでなく、どれくらいまずいことなのかを振り返って,自覚する人もいることは,自信をもって言うことが出来ます。 もちろん既にやってしまって責任を追及される以上手遅れと言えば手遅れですが,それでも加害行為&責任の再生産だけは阻止できるはずです。 そして,一定の責任を負担したからこそ、それならば許そうかという態度も取れるのです。 それが,大量懲戒請求の標的となった佐々木亮弁護士や北周士弁護士の「金額を大幅に抑えた謝罪を前提とする和解案」(通称:ノースライム基準)ではないのでしょうか。 責任追及を殊更に非難するような一部の論調は,この見地から到底支持できません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年10月24日 13時19分49秒
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