錨屋

洋上で漂流せざるを得なくなった際、決してしてはならぬ事の一つに、『海水を飲む』という事が挙げられる。
海水を飲むと、一時は渇きを胡麻化す事が出来るが、少し経つと渇きは海水を飲む以前より遥かに強くなる。そして、延々と海水を飲む羽目に陥る。
水の代わりになる飲料は、存在しない。


愛についても、同様の事が言えるのではないか。
孤独感を胡麻化す為に、愛していない者を傍に置く。確かに一時的に孤独感から解放されるかもしれぬ。だがしかし、それは真の癒しでは無い。
愛への渇きは、愛によってしか潤されぬ。

私はそれを散々やってきた。
だが、二度と繰り返さぬ。
もし、それをしようとしている者が居たら、私は可能な限りの強さで警鍾を鳴らす。


泥沼に足を突っ込んではならぬ。

今は苦しくとも、誠の愛を探せ。

本当の解放は、真実の愛によってしか為されぬ。