(2031) ジャンピン・ジャック・フラッシュ! 「浜松町でいいんですね」 運転手は不安そうにアクセルを踏み込む。 「何か大変なことになっちゃって」 フロントガラスの前方には白い霧が広がって 時々ドスッ!って狙撃手たちがぶつかるんだけど 運転手は気が付いていない。 「ああ、こうやって訳の分からないモヤの中を走ってると 私ね、タクシーの運転手なんかじゃなくって 本当は潜水艦の艦長じゃないのか?って思ってしまいます」 ♪But it's alright, now in fact it's a gas! 僕はラジオから流れる曲が気になってるのに 運転手はしゃべり続ける。 ♪But it's alright, 「私ね、さっきふと思ったんですけど。 生まれ変わったら女になりたいなぁ…って。 あ、お客さんのお連れさんみたいな美人になって ミニスカートとかはいたりしたら、 どんなに素敵な気分になれるんだろうかって」 運転手は、多分、狙撃手に撃たれたんだと思う。 ローズさんは僕らの話なんか聞こえないらしくて さっきからずっと、窓の外を眺めている。 先月号のミュージック・ライフの写真で見た ミックの恋人のマリアンヌ・フェイスフルみたい。 見知らぬ植物みたいな不思議な横顔のラインが 荒っぽいタクシーの運転にシンクロして揺れる。 マリアンヌってさ「As Tears Go By」とか歌いながら ドラッグ漬けで全裸なって警察につかまったり…。 ロンドンでも飛行船が炎上してヘンな雲が広がってるらしい。 「運転手さん、多分ね。あ、僕も経験がないから 良く分からないんだけど、女に生まれ変わったら、 セカイって全然違う生き物に見えるんじゃないかって 思いますよ」 あ、ローズさん。次の信号、曲がるからから気を付けて! ♪I'm Jumping Jack Flash, It's a gas,gas,gas! ♪まじヤバいよ。冷や汗みたいに、良い気分。 夜もオイラも、スカスカで。 運転手はでたらめな日本語にしてフンフン鼻歌。 手袋の下からのぞくゴツゴツした手首が、 ピクピクとリズムを刻んで、赤信号も無視するから 僕は 「あ、ここらでいいです」 運転席の左にプレートに 「乗務員氏名:ワニグチ」って書いてある。 「どうもアリゲーターさん」 「又のご利用を!」 ワニグチさんはシッポをバタバタさせて 大きな口開けて笑うもんだから ローズさんのこと食っちゃう! …て、僕はちょっとあせった。 浜松町の駅が見えている。 ローズさん、行くよ。 --------------------------- 第2章・1969 --------------------------- << 第2章の1つ前へ (2030)遅すぎるよ!もうワレちまった。 *このページは第2章 (2031)ジャンピン・ジャック・フラッシュ! 第2章の1つ次へ >> (2032)電気ナイフの夜 << 第2章の始まりへ --------------------------- 第5章・2010 --------------------------- *この第2章とパラレルに第5章を連載中です。 << 第5章の1つ前へ (5060)空っぽの、穴っぽこ ~ はやぶさ ラストショット-2 第5章の1つ次へ >>未 -------------------------------------------------------------------------------- ★総目次★はホーム(トップページ)に ---------------------------------Information-------------------------------- 村上春樹~1Q84 BOOK3 公式サイトに、池田モノリスのイラスト掲載中 左 ≫新潮社公式サイト・1Q84~Qの世界-4月2日分「Q3」 右 ≫新潮社公式サイト・1Q84~Qの世界-6月11日分「迷Q」 ↓ツイッターも始めました ブログランキング。それぞれワンクリックで投票&順位確認できます。 ファンタジーから、よしっロック!ジャンルに引っ越し。よろしく。 もしかして絵本?ジャンル…でも、こちらは苦戦。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2010年07月30日 15時08分36秒
コメント(0) | コメントを書く
[第2章-1968~スカスカでおセンチな三日月] カテゴリの最新記事
|
|