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『ハート・ロッカー』2008年アメリカ映画 監督キャスリン・ビグロー 脚本マーク・ボール
出演 ジェレミー・レナー、アンソニー、マッキー 第82回アカデミー賞で作品・監督・編集他5部門を受賞した作品です。 イラク戦争後の2004年バグダッド郊外で即席爆発弾や人間爆弾などのテロ組織の爆弾処理に当たる米軍部隊を描いた作品です。 私は1970年のロバート・アルトマン監督の『マッシュ MASH』を思い出しました。 こちらは朝鮮戦争時の、負傷した兵士の外科手術をこなしまくる移動米軍外科病院に勤務する医師や看護師、連隊の人々を描いた作品です。 主人公のウィリアム・ジェームズ二等軍曹は爆発物処理のエキスパートで、380発以上の処理をこなして来ました。 彼は遠隔操作ロボットを全く使わず、直接起爆装置のコードを切るなどスピード重視の処理の人です。 冒頭の前任者が死亡するシーンは、遠隔操作ロボット利用の問題点を指摘するものです。 テロ組織が一度に複数の爆弾を仕掛けて、軍が発見出来なかった爆弾を遠隔操作で起爆させてしまいました。 映画の終わり近くに、帰国したウィリアムがスーパーでシリアルの種類の多さに戸惑うシーンがありますが、私は爆薬の種類と方法のバラエティーにとても驚きました。 配線を引っ張ってみたらサツマイモのように6発の爆弾がごろっと出て来るシーンには、作り物とは分かっていてもビビリました。 少年の遺体に爆弾が埋め込まれたり、脅迫して身体に複数の時限爆弾をくくり付けさせられた人が爆発するシーンは見ていて十分気分が悪くなりました。 また気分が悪くなったのは、情報部隊と遭遇した後テロ組織と銃撃戦となりスナイパーを肉眼で確認して狙撃するシーンです。 それだけ撮影や編集が巧みだから、という事です。 遺体埋め込み爆弾に憤ったウィリアムがテロ組織の人間を探しだそう、殺そうとするお話の展開は、まあお話だなという印象です。 集中力の必要な仕事に携わる人はああいう分かりやすい行動はしないだろう、と考える部分があるからです。 そしてあれほどコミュニケーションを取るのが苦手という事は却って問題だろうとも考えます。 イラク・アフガニスタン帰還兵協会会長が「戦争を分かりやすく伝えようとしているが、あまりの不正確さにうんざり」とコメントしたのが分かるような気がします。 そしてテロ組織側の人々は「いつまでも有ると思っている原油とお金」な考えなのではないかと疑りたくなります。 映画の途中で私の頭の中に「爆弾バブル」という言葉が浮かびました。 そしてD・H・ロレンスの「知恵の七柱」の中の、残酷とも取れる族長の行動や対応を思い出しました。 それでなくても砂漠では従者が健康を損ねたり、迷って死んだりしやすかったです。 アメリカでまだ赤ちゃんの息子にウィリアムは「お前は今は好きな物がいっぱいあるね。でもお父さんの年になると大切な物はひとつだけ」と話しかけて再びイラクでの爆発物処理を志願する事を決意します。 マルクス・アウレリウスの「自省録」の「宝石はただの石、真珠はただの貝の中身と思え」を連想させる台詞ですがちょっと格好良すぎです。 ビグロウ・ボールコンビの次回作は、オサマ・ビン・ラディン暗殺作戦の映画で12月に米国公開予定です。 今から楽しみです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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