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『獣人』1938年フランス映画 原作エミール・ゾラ 監督・脚本ジャン・ルノワール 撮影クロード・ルノワール
ジャン・ギャバン、シモーヌ・シモン、フルナンド・ルドー、ジュリアン・カレット 『獣人』は、1980年代前半までは評論家の評価が高かった作品です。 主人公が機関士なので、蒸気機関車の先頭にカメラをくくり付けた映像がふんだんに取り入れられているのが見応えがあります。 俳優とストーリーも魅力的です。夫婦の共謀殺人を目撃した男の口を封じるために妻が誘惑します。 男はスターのギャバンですし、シモーヌ・シモンは猫みたいです。 評価が落ちてきたのは、精神医学の進歩の影響が大きいようです。 うつの原因は脳内物質セロトニンの減少によるものである事が解明されて、1990年代からは医療現場で抗うつ薬による本格的な治療がスタートしました。 一方で異常性愛の概念や分類も進められた模様です。 『獣人』の悲劇の原因は、最近ではサディズムとして分類される可能性が高いようです。 原作と映画では発作的に女性を殺したくなる衝動とされていますが。 ジャン・ルノワール監督のトホホなのは、映画の冒頭にゾラの写真と署名を掲げている事です。 主人公のジャック・ランチェは、ルーゴン・マッカールの孫世代に当たる設定ですが、現在の精神医学ではアルコール依存症と異常性愛の遺伝は全く否定しています。 現在医療と行政が最も問題視しているのは、乳幼児の家庭での虐待です。 PTSDという概念が誕生し、その影響が解明されてきた影響が大きいようです。 昨年だか一昨年だか絵画展示を中心としたオーギュスト・ジャンのルノワール親子の展覧会がありましたが、映画の上映は『ピクニック』と『フレンチ・カンカン』に留まりました。 いずれも印象派の影響を受けた映像表現の作品です。 アルフレッド・ヒッチコック監督も同じようにヌーヴェル・バーグの人々から評価されましたが、毀誉褒貶が少ないように私には見えます。 しょうがないな、と考える部分が私の中にあります。 『獣人』はフランス国鉄の資金で製作された作品ですが、機関士は殺人の翌朝に運転した汽車を転覆事故させてしまいます。 宮崎駿監督はJALから資金を得た『紅の豚』で飛行機を墜落させる事は避けました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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