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『ミレニアム ドラゴン・タトウーの女』2009年スウェーデン映画
原作スティーグ・ラーソン 監督ニールス・アルデン・オブレヴ 脚本ニコライ・アーセル、ラスマス・ヘイスターバング 出演ミカエル・ニクヴィスト、ノオミ・ラパス、スヴェン・バーティル・トープ スウェーデンで大ベストセラーとなった天才ハッカー・リスペットのミステリーシリーズ第1作の映画化作品です。 映画としても大ヒットとなり残り2作品も映画化されました。 原題の直訳は『女を憎む男』でして、原作シリーズは女性への偏見・軽蔑・暴力をテーマとしているそうです。 しかし私は映画を見た限りではナチズムとアンチクリストが物語の大きな柱ではないかと考えました。 そうでなければデスメタルの影響の強い格好をしているリスペットが受ける暴力の理由が分からなくなります。 1980年代後半のスウェーデンではアンチクリスト的な歌詞、例えば「イエスが死んで万歳だ」のように攻撃的な内容を好む傾向が一部のデスメタルバンドで見られるようになりました。 その中の人気バンドの主要メンバーは、さらに攻撃性を高めて国宝級の教会への放火と他バンドのメンバーの殺害を行ったとして逮捕されました。 この犯行の青少年への社会的影響は大きく、類似犯の増加を見たそうです。 火付け役となった犯人は放火1件と殺人1件を認めて現在はスウェーデンの最高刑の無期懲役となっています。 映画に登場するリスペットの過去は、このような事情を反映している可能性が高いように私は考えます。 謎解きの対象となる「死体無き殺人事件」の背景は、スウェーデンでのナチズムとなります。 しかし犯人は「それではアシが付くから辞めてしまった」と告白します。 「本当に快楽のためだけに殺人をする人々は、その行動に意味付けをする事を厭う」というシリアル・キラーの定義に基づいたお話の展開です。 一方で映画は犯人とミカエルの台詞から彼が哀れな男である事も示唆します。 この映画の中に登場する男性は、主人公ミカエル、調査の依頼者とその弁護士、事件を気にかける刑事の4人以外はストレスで押しつぶされて犯罪行為をしたり、他人を糾弾したり、世の中の要求する役割を演じたりしているようにも見えてくるのが不思議です。 物の見方のバランスの取れた作品なのかもしれません。 『羊たちの沈黙』が代表作のハンニバル・レクターと本作のリスペットは「犯罪者が犯罪者を深く理解する事が出来る」という考えに沿った探偵のようです。 この映画の最後のシーンはそれを示唆しているようです。 作り事ですが、リスペットに仕事を与える警備会社の狙いを考えてみるのも面白いのかもしれません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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