問題解決しようとしないこと
何もかもうまくいかないときは、試されるときであると同時に、癒しのときでもあります。私たちはとかく、大事なのはテストに合格すること、すなわち問題を克服することだと考えます。しかし、そのようなことでは、ものごとは真の意味では解決されないのです。うまく整理され、また混乱が起きる。それもどうにかおさまったかと思うと、また混乱する。それだけのことです。癒しは、それらが起こるままにしてやる心の空間をもつことから生まれます。悲しみの空間、ほっとする空間、惨めさの空間、歓びの空間です。 たとえ嬉しいことが起こるだろうと期待していても、実際に何が起こるかは誰にも分りません。惨めになるだろうと思うときも、同じです。最も大切なのは、何が起こるか知らないまま、ただ心の空間を持つことです。 何もかもがうまくいかず、お先真っ暗で崖っぷちに立たされたとき、私たちは試されます。その崖っぷちに、何もせず立ち続けることができるかどうかが試されます。精神の旅とは、天国の道でも、あらゆる願いがかなう場所への到達でもありません。それどころか、そういったものの見方が、私たちを惨めな場所にとどめつづけます。 体が震えるほどの激情と共にいる。傷ついた心、ひきつる胃、絶望、復讐を誓う心と共にいる…それが覚醒にいたる道です。見通しのなさと共にいて、パニックに陥ることもなく、その混乱の真っ只中でリラックスするコツを知る…これが精神の道です。(「すべてがうまくいかないとき~チベット密教からのアドバイス」ペマ・チュードウン著)