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カテゴリ:感動したこと
しだれ紅葉
世界ではウクライナ、ガザ地区、と同時に2か所で殺し合いの戦争が行われており、国内では殺人放火事件や家族内殺人など、凶悪な事件が後を絶たない。私は医師になって以来、多くの患者さんとその家族を見てきた。娑婆世界では残酷な事件が相次いでおり、心を締め付けられるが、日々の診療の中では夫婦愛がまぶしくて身につまされることもある。 昨年パーキンソン病の60歳代の女性患者さんが重症化して亡くなったがその旦那さんの献身的な看病には頭が下がった。自宅と病院とは車で50分くらいかかるところだがコロナ渦で面会制限あったがご主人の気持ちを考え特別な許可をだしたら、毎日のように面会にきた。ご主人の奥さんを思う熱き気持ちが分かっていたので訪問診療などを利用して奥さんを自宅で看る方法を提案した時、喀痰の吸引などが必要な時があり、ご主人もかなり迷っていたが結局家族などの同意が得られず病院で最後まで診てもらうことを選択した。最後は病院でお亡くなりになったが、息を引き取る最後の時には間に合わなかった。自宅で看るべきだったと後悔していたようだが十分尽くしてやっていたと思う。 2例目は93歳男性患者さんである。前立腺がんがあり、骨折で入院してきたが途中で肺炎になり、抗生物質療法で回復したが嚥下機能が落ちており、食べることができない。それなら胃ろうを作るか鼻管栄養するか奥さんと相談したら、そのような延命処置は希望しないとのことだった。ご主人が胃ろうを作って長生きしても自分もかなり高齢なので、ご主人を残して先に死んでしまうかもしれないので自然のままにしてくださいとのことで点滴のみで、水分と栄養を補っていた。点滴だけになって1か月過ぎたころ自宅につれて帰りたいとのことで訪問診療の医師に手紙を書いて自宅に退院していった。患者さんもそれを希望していたのでお互いの望みが叶えられてよかったと思った。 3例目は70歳代のパーキンソン病に認知症が合併した症例である。当院に入院する前は旦那さんが食事、排便、入浴など全て一人で看病していた。病状が悪化して緊急入院したのを契機に当院に入院して 3年くらいになるが、コロナで全面的面会禁止になった時を契機に毎週手紙を書いてくる。本人は封筒から手紙を取り出すことも読むこともできないが3年間欠かさず手紙を書いてきて病院の引き出しが一杯に なっている。それを見かねて看護師や掃除のおばさん、医師などが読んであげているが、理解できているか分からない。もちろん返信はない。最近は週に1回面会が許可されたが、会話は殆ど成立しない。それでも毎週面会に来ている。面会と手紙を書き続けているご主人には本当に感銘を受けている。 これら夫婦愛の行動が自分がその立場に立たされた時に同じようにできるかと自問してみたがとても無理のように思えた。でも患者さんやその家族から色々なことを学ばせていただいており、少しでもそれに近づくようになりたいと思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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