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テーマ:読書(8580)
カテゴリ:生き方
テッポウユリとツバキの蕾
中村元さんが書かれた「ブツダ伝 生涯と思想」を今読み終えた。 お釈迦さんである大偉人、ブツダの生涯と思想について書くのは大変だったと思われるが、サンスクリット語に堪能なのを生かして、当時の文献を出来るだけ紹介して下さり、後は読者の判断に任せるという感じで締めくくっておられた。 ブツダも80歳になり、体力的に衰えてきていたが故郷に帰るつもりで順次各所で説法を続けていたが途中で鍛冶工の子チェンダの供養を受けて赤い血を吐き激しい苦痛の末にお亡くなりになられた。古来ブツダは何を食べて食中毒になったか議論されてきたが、きのこ、野豚の生肉、タケノコ、一種の薬草などが論じられてきたが、色々な理由から毒きのこだったのではないかと推察されている。 チェンダの出してくれた食事で重体になり、死がみえてきた時、お付きのアーナンダに「チェンダは後悔と申し訳なさで狂ってしまうかもしれない。悪意があったわけではないので、苦しめないでもらいたい。チェンダには『チェンダさんのご供養食を食べてブツダは涅槃に入るのだから大いに功徳があるのですよ』とブツダ自身が言っていたと伝えなさい」と指示した。 チェンダのおかげで死ぬことになっても慈悲の心は変わらず、恐らく苦しんでいるであろうチェンダを救ってやりたいというお気持ちだけだったのだと思う。 チェンダのご供養を受ける前のある時、何度も訪れていた懐かしのヴェーサーリー市に托鉢に出かけた時サンスクリット語の文章にによるとアーナンダに、「世界は美しいもので人間の命は甘美なものだ」と讃嘆している。自分の死を何となく予感してこの世の自然風土に美しさと喜びを感じ、有縁の人々に感謝して自分の一生は楽しかったと言って去っていく心境だったのかもしれない。 それより少し前、ビンギャという人がブツダに質問した。「私は年を取ったし力もなく、容貌も衰えています。目もはっきりしませんし、耳もよく聞こえません。迷ったまま途中で死にたくありません。どうしたらこの世において生と老衰とを捨て去ることができるか教えて下さい」と。ブツダは「ビンギャよ人々は妄執に陥って苦悩を生じ、老いに襲われているのを見ているのだから、そなたは怠ることなく励み、妄執を捨てて再び迷いの生存にもどらないようにせよ」と指導している。 人々は我欲にょって様々な妄執にとらわれている。自分さえ満足すればよいと考え、食欲、性欲、名誉欲、権力欲、有名になりたい欲、容貌欲、睡眠欲、金持ちになりたい欲、楽をしたい欲など様々な欲望に振り回されている。ブツダはそれらを修業によって打ち払って安心立命の境地になれば老衰や死なども恐怖ではなくなると指導している。 人類の進化、成長を願って、教えを求めてきた全ての人達を教化、指導してきたブツダも毒キノコであっさり亡くなってしまったが、その教えは何千年たった今でも生き続けている。 でもお釈迦さんは尊い方だと思い、神のように崇め、奉ってもその本当の姿を知らない人が多いと思う。私もその一人だったが、この本を読んでブツダの教えのほんの一部が分かりかけてきたような気がする。もっと勉強していきたいという気持ちを起こさせてくれた好著だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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