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『発狂しそうな毎日から逃避するためエグい山行がやりたくなった。8/1頃から山中3~4泊ぐらいで、南アルプス南部(聖、赤石、荒川あたり)を縦走することを企ててる。一緒にやけくそになりたい奴がいたら返事をくれ。』
というメールに答えて、始まったエグイ山行の2日目。
テント場の朝は早い。
午前3時起床。
昨夜の雨はいつの間にかやんだらしい。
テントから出ると星空が見えた。
天気は良さそうだ。
ストーブでお湯を沸かす。
ここは標高2400mの山の上、フリースを着ても少し肌寒い。
昨晩炊いたご飯の残りに雑炊の素をふりかけて、お湯を注ぐ。
下界じゃまず食べないが、山で食べると実にうまい。
余ったお湯でインスタントコーヒーを飲む。
濡れたテントを撤収し、それぞれのザックをパッキング。
学生の頃だと起床がら出発まで1時間もかからなかったが・・・
5:40 高山裏小屋発
樹林帯をつづら折りに高度を稼ぎながら登っていく。
しばらくすると周りの木が少しずつ低くなってきて、ガレ状の岩石帯に入る。
後ろから他の登山者が来ているので落石しないように慎重に登る。
岩場のところどころに咲いている高山植物が目を楽しませてくれる。
腕時計の高度表示が3000mを越えた。あと一息だ。
8:30 荒川前岳(3068m)着
眼前にはこの後向かう盟主赤岳がひときわ大きくかまえている。
振り返れば奴がいる。ヤーーヤヤーヤヤーヤーヤー♪じゃなくて(わかるかな?)
振り返れば荒川中岳、塩見岳や北岳なども望まれる。
3000mの涼風をうけながら、しばし眺望を楽しむ。
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「乾かそう」
突然相棒のHがザックを開け、テントやらシュラフやらを出し始める。
昨晩濡れたものを乾かしている間に荒川中岳(3083m)をピストン(往復)する。
落ちたらさよなら
9:30 荒川前岳出
すっかり乾いたテントやシュラフをもう一度パッキングして出発。
赤岳への分岐の手前で前から来た夫婦の登山者とすれ違う。
「こんちわ~」
挨拶してふと顔をみると・・・
見覚えがある・・・
まさか・・・
「!!! Iさん!?」
夫婦もびっくりしている様子。
サングラスを取って「○○ですよ!」と言うと
「え~っ!○○さん!!」
こんなことがあるだろうか
Iさん夫婦は私が15年前にネパールへヒマラヤトレッキングに行った時に同行したメンバーである。
5年程前に一度我家に遊びに来られたことがある。
兵庫県に住まれているIさん夫婦と十数年ぶりに山へ登った私が南アルプスの荒川岳近くですれ違う確率って計算できるんだろうか?
仮に計算できたとしても限りなくゼロに近い確率だろう。
でも、ゼロではない。
私は心のどこかでIさんと会うかもしれないなと思っていたのかもしれない。
だから、挨拶した時にすぐにIさんだとわかったような気がする。
これは偶然ではなく、必然であったのかもしれない。
繋がっている人とはいつかこんなふうに出会えるような気がする。
可能性がゼロでない限り思いは実現するのかもしれない。
下山後Iさんから来たメールです。
○○さんのお宅におじゃましたのが5年ほど前になりますか。
偶然っていうのがあるんですね。山の中で少しの時間の差で
会えなくても不思議ではないのに本当にびっくりでした。
大きな荷物を背負ってすたすた歩いて聖に向かった○○さんの
後ろ姿はうらやましい限りでした。これからも山に行く限りは
突然どこかの山でまた偶然再会するかもしれませんね。
13:50 赤石岳(3120m)着
赤石岳のピークはガスのなかだった。
午前中晴れていても午後にはガスが上がってくる、3000mの世界とはそういうものである。
17:30 百間洞山の家着
赤岳からの下りで2人ともかなり消耗している。
前を歩く相棒のHは「イタっ!」「エグ~!」「ウグつ!オェアギャ!」などと訳のわからない奇声を発している。
やっとの思いでサイト場に到着する。
行動時間約12時間。
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田舎暮らし応援倶楽部