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2008年09月02日
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カテゴリ:アウトドア

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ずっと以前から心の片隅にあった計画がある。

何人かの友人には、面白半分に話したこともあったが、話している本人でさえ「やれたらいいな」くらいにしか思ってなかった夢のような計画。



『自宅から自転車で中央アルプス最高峰木曽駒ヶ岳(2956m)を日帰りで往復する』


前回からのつづき

2008年8月13日 AM2:50 起床。

遠足前日の子供のようにワクワクしてしまい、1時間おきに目が覚めて時計を確認する始末で殆ど寝ていない。

が、それほど眠くはない。

着替えを済ませて外へ出てみると僅かだが小雨が降っている。

「うそやろ~~」

急いでMacBookを立ち上げて天気予報を見るとAM3:00頃から天気は回復することになっている。

「よっしゃあ、いける、いける」

AM3:30 自転車のタイヤの空気圧を確認し、昨夜荷物を詰めておいた小型ザックを担いで家を出る。

真っ暗な道を小型ライトの明かりを頼りに走る。

5分程走り隣町に入った頃、素手でハンドルを握っていることに気づく。

「あちゃ~、やってもた~~」

このまま行くか、それともグローブを取りに戻るか・・・

少々迷ったが、”急がば回れ”で戻ることにする。

AM3:45 気を取り直して再度出発。

雨は殆ど止んでいるが、濡れた路面からの跳ねが冷たい。

こんな時間に真っ暗な道を走っている自転車を想定しているドライバーは、まずいないので車に轢かれないように慎重に走る。

AM5:30 桂小場着

ここがいわゆる登山口。薄暗い樹林帯の中に道がついている。

無理すれば自転車で走れないこともないが、序盤で脚を使う訳にはいかないので、ここは押して行く。

「昭和50年7月24日 午後1時40分、伊那中学校」

落雷事故現場の石碑がたっていた。合掌。

こんな樹林帯の中でも落雷があるとしたら、どこへ逃げればいいのだろう?

AM7:21 大樽小屋着

ここから道は急登となる。自転車を担いだり、押したりしながら高度を上げて行く。

途中にヒカリゴケの標識がある。

高校2年生の時、学園祭のクラス演劇で武田泰淳の小説『ひかりごけ』をやった。

私は裁判の傍聴人の役で台詞は「え~~っ」くらいしかなかったが思い出深い。

自転車を担いで急な登山道を登るのはかなりきつい。

肩にフレームが食い込んで痛いし、自転車が木の枝や岩に引っかかりストレスが倍増。

AM9:10 胸突八丁の頭着

天候は回復。快晴。夏の日差しが照りつけている。

ここから先は樹林帯ではなく稜線の道となる。

しばらく行くと一気に素晴らしい展望が開ける。

いつもならデジカメを取り出して撮影タイムとなるのだが、今回はそんな余裕もなく、ただひたすら木曽駒ヶ岳を目指す。

AM9:50
西駒山荘着

今回の山行では午前中に木曽駒ヶ岳に着かないと撤退すると自分でルールを決めている。

撤退のタイムリミットまであと約2時間。 ギリギリのところか。

将棊頭山を巻いて裏側へ出ると巨岩があり、「遭難記念碑」という文字が大きく刻まれている。

新田次郎の小説で映画にもなった「聖職の碑」である。

大正2年8月26日、中箕輪尋常高等小学校の教師、同窓生、生徒37名が駒ケ岳への研修登山中に台風に遭遇し、暴風雨の下山途中で校長以下11名が遭難死したものである。

「聖職の碑」を通過してしばらく行くと前方に登山者が見えた。

今朝、登り始めて以来初めて見る登山者だ。

「お~~い、○○○!」

私の名を呼ぶ声がする。

中央アルプスを南から縦走して来た友人Hだった。

おいおい、木曽駒の頂上で再会した方がドラマチックやのに・・・

H「やるやんけ」

私「まあな。ほんでも、めっちゃキツイで」

ここから先は馬の背と呼ばれる痩せ尾根の登山道になる。

冒頭の写真はこの付近でHに撮ってもらったもの。

後日知ったことだが、この日の翌日(8月14日)に私と同じ年齢の男性がここで滑落されて命を落とされている。

岩場の登りで、それほど怖い感じではなかったが、確かに落ちれば・・・

木曽駒ヶ岳頂上は見えているが、疲れで足が重く思うように進まない。

AM11:50 木曽駒ヶ岳頂上(2956m)着

タイムリミット10分前で滑り込みセーフ。

本来なら泡の出る缶を開けて「ぷは~~っ」っと乾杯したいとこであるが、これから来た道を戻って家まで自転車で帰らなくてはいけないので、Hが持っていたポカリで乾杯。

祠にお参りをしてから早々に下山を開始する。



これから今朝登って来た道をまた戻るのかと考えると本当に嫌になる。

登りの途中から古傷の左膝が痛みだしたが、下りでは右膝までも痛みだす。

「ホンマに下りれるやろか?」少々不安になるが下りるしかない。

Hは軽快な足取りで先にどんどん行ってしまい視界から完全に消えた。

自転車を担いで下りるというのは、登りにも増して辛い。

途中で会った登山者に聞かれる「どこ走るんですか?」

走れるところなんて殆どなかった。

それに疲れと痛みで足に踏ん張りが利かないので走れるところも押している。

阿呆みたいに見えるやろな。

それでも自転車を持って来たことについて後悔はない。

だって、普通に登るよりインパクトあるからね。

自分の中での達成感が断然違うから。

PM4:10 桂小場着

大樽小屋からは自転車に乗って下りて来たがHに追いつけず。

Hは私より10分くらい早く着いたようだ。

Hを桂小場に残し家へ向かう。

PM5:40 へろへろのヨレヨレで帰宅

服も着替えず軽トラに乗ってHのもとへ向かう。

温泉に入って、木曽の山奥の登山口に置いて来たHの車を回収して我が家へ戻ったのはAM0:00頃。

それからAM3:00まで反省会(飲み会)をして爆眠。



今回の山行は目的を達成して終わることができた。

でも、もし途中で敗退していたとしてもそれはそれで良かったと思う。

来年のリベンジを誓っていただけのこと。

成功の反対は敗退(失敗)じゃない。

失敗は成功の元。

成功の反対は何もしないこと。


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最終更新日  2008年09月03日 21時55分52秒
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