退職田舎医者　異国に住むの巻

ヒゲは、子供のときから夢を持っていました。
いつか、世界の行ったことのない国に住んでみたい。

子供のころから、両親が病弱でした。
いつの間にか、両親を支えるためにと医師を目指しました。

でも、医師になってまもなく、大学病院研修も終わらぬうちに、
両親ともあっけなくこの世を去ってしまったのです。
多忙で死に目にも会えず、大変に深く後悔したヒゲは、
その後長らく田舎医者になって地域の人を支えてきました。

ところが、自分の体力にだんだん峠越して、自信なくなって来たときに、
子供のころの夢がうずきだしたのです。

一回だけ夢をかなえさせて！と。

一人ひとり紹介状書いてあげたものの、田舎の人々に大変迷惑かけたと反省してます。

今から思うと、この決断が正しかったかどうかは、分かりません。
岐路に立ったとき、どの道進んだら良かったのかは、
人生のずーっと終わりのほうまで分かりません。
自分が死ぬときに、
ああ、これでよかったんだと思えるような生き方を今、したい。
どこに住んでいても、
死ぬまで他のために尽くして逝った両親のような生き方をしたい。

今日も懸命に生きています。

豪州の大自然の中の家

ここにやってきたのが７年前。
窮屈な日本からやってきたのだから、何も街場に家を買うこたあない。
自然豊かで、しかも広くて値段も安いヒンターランド（都市部から離れているところ）
に物件を持ちたい、というのが夢でした。

１ヶ月の間、足使って探して歩いて、とうとう見つけたのです。
近所には馬を飼っている家も多く、地上３０メートルはあろうかというユーカリ木立に囲まれた一軒家。
門からはリキッドアンバー（秋には紅葉する）の並木が続き、小鳥さえずる丘の上。

なにより決め手になったのは、緩やかな傾斜の土地の一番下に、
周囲５０メートルはあるか、というため池があって、
野生の鴨が羽休めている光景でした。
水面には赤い睡蓮まで咲いている！
これ全部、私有地？
日本人にとっては信じられない光景でした。

こうやって、何とか住むところを決めて、試行錯誤の豪州生活が始まるのでした。
とりあえず３、４年ほど、異国の暮らし試してみたい。
だめなら、日本に帰るしかない。

そんな軽い気持ちで始まった異国生活。
後々、この選択が、大問題を引き起こしてくるとは露知らず。
財政的に苦しくなってくるとは、夢にも思わず。
ただただ、雄大な自然の中のゆったりした生活の始まりを
神様に感謝して。