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動物たちが語りかけてくるオーストラリアから
--生き物たちの詩--
手作りの巣箱を作ったその夕方、子供と一緒に出来たてのその作品を地面から2メートルくらいの位置に取り付けた。 暗くなる前には済ませておかなくてはならない。 だって一体何時になったらお母さんポッサムが現れるのかまったく見当がつかないのだ。
ポッサムの四足にはするどい爪が生えていることを知ったら、いろんなことが良く見えてきた。 ポッサムは夜行性の有袋類だ。
だから昼間いくら自分が林の中を歩いてみても姿が見えるはずがないではないか。昼間はじっとどこかの巣穴の中で眠っているに違いない。 太陽が出ている間、何も生き物が見えないからといって、この土地の中に獣らしきものが住んでいないということではないようだ。
今回のことで、子供も自分もいろんなことを学んだ。 そこには、野生の王国のわくわくするような秘密がいっぱい隠されていたのだ
何もみる目が無い者にとっては、この荒れた土地はただの乾燥大地である。 しかしポッサムを夕刻見かけた、リキッドアンバーや緑の幹のガムトリーをもう一度良く見たら驚くべきことが見えてきたのだ。
何気ない幹の無数の傷あと、それはすべてポッサムの爪痕である。 ポッサムの足の形から分かるのである。
なんと、たくさんの生き物たちが夜の間に活躍しているのだ!
小さいの大きいの、まるで雪の上に残された野うさぎの足跡から、何匹のウサギが新雪のあと通過したのかわかるように、ポッサムの木の登り方が手に取るようにわかるのだ。
それに今まで、何の糞だろう?と思っていた地面の落し物の正体までが見えてきた。 雨に晒された糞からは、木の種子や樹皮残渣が多様に見つかり、決してそれは猫や犬のものではないことが推測できた。 ポッサムはどうも庭にあるある特定の木の実を好んで食べに来ているらしいのだ。
今夜もきっとやってくるに違いない。
取り付けた巣箱にそっと元気になった子供のポッサムを、ぼろきれと一緒に残して静かにそこを後にしたのだった。
「お母さんに会えるようにね、元気でね」 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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