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テーマ:本のある暮らし(3309)
カテゴリ:Other topics
この半年は,人生で一番本を読んでいるかもしれない。 へたをすると5,6冊を同時並行で読んでいる。 新しい世界を知るのは面白い。 しかし幼児の時からの知識の蓄積がちゃんと生きていて, かつて頭の隅っこに引っ掛かっていた言葉や作者や概念が, 今になって鮮やかに立体的に見えるようになってきた,そんな感じ。ビバ読書。 ひとつはフィクション,それも数年前まで敬遠してきたSF。 しかも神林長平や円城塔のような思弁的なものにまで手を伸ばしている。 好きな小説家が紹介したというだけで読み始め, 以前なら絶対読む気が起きなかったような,しかも分厚い物語をざくざく読んだ。 いまはちょっとペースが落ちてるけれど, 「ハイぺリオン」シリーズ4連作の最後の一冊にまで到達した。感慨深い。 フィクションを読むペースが落ちている理由は, その分ノンフィクションをたくさん読んでいるからだ。 特に,岩下明裕「北方領土」を読んでから, 近年の中露の関係改善がユーラシアの安定化に大きく貢献していることを知り, するとリアルタイムの国際政治が今までと全然違って見えてきた。 最近の興味の中心は中央アジアと中東,とくにイランとシリアとトルコ。 日本のメディアでは「厄介事」「悲劇」としてしか扱われていない中東の出来事は, 実に豊かな歴史の産物であり,私たちが望みさえすれば, そこ(歴史)はあたかも深い深い井戸のように, とめどなく知恵と洞察を汲み上げることができる気がしてくるのです。 ここ数日は地図帳と昔の「世界現勢」を持ち歩いて, バスや列車に乗っている間,あるいはその待ち時間で, どの国とどの国が国境を接しているのか,戦後の政権交代の推移なんかを確認しつつ, これからどうなるのだろうと予測したり, ニュースをチェックしては予測と合ってる部分,合わなかった部分を確認したりしている。 そんなことして楽しいかって? もちろん楽しいのです。どんなふうにかって言うと例えば, 今朝は宮田律「中東イスラーム民族史」を読みながら, 札幌駅周辺を目的地へ向かって歩く道すがら, イランとイラクの国境問題が起きたチグリス・ユーフラテス川河口域の地図を頭の中に描きつつ, オスマン帝国末期から第一次イラク戦争あたりまでの経緯を思い出したりして, そのうちに,その河の色はどんなかなあ,石狩川みたいに濁っているのか,もっと熱気と匂いがきついのだろうな, そしてぼんやりと,春だなあと感じながら,埃っぽい風を受けていたのでした。 つまり,こうです。 見慣れた歩道を歩きながら,私の頭の中では二百年前,一万キロ西方の船頭の日焼けた顔とか, どぶの臭いとか汗のにおい,ぶつぶつ文句を言う男の奇妙なイントネーションとか, 彼が思い浮かべる家族の顔や,死んだ兄弟たちの顔を思い浮かべる様なんかを,想像しているのです。 そしたらきっと次にニュースで戦争の写真を見たときに, そこに映ってることだけが本当じゃないよって思えるんです。 それよりももっと悲しいことがあって,それよりもっと幸せなことがあって, きっと私たちの知らないことが山ほどあるに違いない, 私たちの信じたくないようなことも山ほどあるに違いない, 私たちはきっと何も知らない, だからもっと知りたい, ニュースを見たときにいつもいつも,そう思うようになれたらいいなって,そう思うんです。 それが私の望み。 今日も明日も本を読むよ。 誰に頼まれなくても本を読むよ。 読むなって言われても読むよ。 フィクションもノンフィクションも大してかわらないよ。 この世界に生まれて死ぬ運命の,私らと同じような脳味噌の中で作られたものなんだから。 これから外で本を読める季節だ。 どんどん読むよ。 これから読む予定の本(フィクションのみ)。 虐殺機関, アンナ・カレーニナ, 夏への扉, タウ・ゼロ, ターミナル・エクスペリメント, 膚の下, 晴子情歌, キャッチャー・イン・ザ・ライ, 羊をめぐる冒険, ダンス・ダンス・ダンス, 天体の回転について, 失われた時を求めて(第2巻) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.04.17 02:14:19
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