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(2012,フラワーコミックスアルファ,小学館)
このひとはこういう型どおりの世界を描いた方がいいと前から思ってました。 「マンゴーの涙」は現代の話だけれど,ちょうど「アポロン」のように半世紀前の日本みたいな人間関係が描かれてて,そこがまた良かった。小玉さんが今どきの社会を描く必要はあまりないと思う。 (「マンゴーの涙」の記事はこちら) 当たり前のシナリオで,どこかで見たような紋切り型の善人がいて,悪人になれない凡人がいて,どこにでもいる子供たちを描かせてみたら,こんなに綺麗な世界が現れてしまうんだから。これはもう誰も敵わない。 どこかでそういう世界を疑ってしまう漫画家も,どこかでそんな世界を小馬鹿にしている読者たちも,みんなまとめてぽろぽろ泣かせてしまうようなお話にしてしまうんだから,小玉さんはずるい。 * とくに,好きな人を失ってしまったことに気づく場面などは,乾坤一擲の描写力を見せてくれる。「羽衣ミシン」は私の好きな作品じゃないけれど,冬が終わってしまったことに主人公が気付いた瞬間の,河川敷に咲くいちめんの花,あの2頁だけで泣けてしまったくらいだ。 本作でも,千太郎が「俺にはもう誰もいない」と絶望する場面が何度か描かれた。最終巻でも,薫が自分は失恋したのだと観念した場面があった。 俺はもうだめだ。あいつはいないんだ。と気付いたときの,すうっと全ての力が抜けきってしまうような気分。小玉さんはそれを,とてもうまく描いてくれる。そしてそれが救われる瞬間も。 NHKの朝のドラマなら5年くらい任せてもいいんじゃないかと思えるような,ぼくらのありきたりの人生の,ありきたりの痛みと,何かに祈らずにいられない寄る辺ない気持ちを,こんなに優しく描いてくれてありがとう。そう思える最終巻でした。 * では,そんな本作でとびきりの名場面を一つだけ選べ,といわれたら。。。うーん やっぱ,りっちゃんの水着姿だな! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2012.05.17 00:15:48
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